ストックフォトはAIで消える?決算の数字で検証した2026年の現実

「夕暮れのオフィス街を歩く、笑顔のビジネスパーソンの写真が欲しい」

以前なら、ストックフォトのサイトで検索して、似た写真を何十枚も見比べて、気に入ったものにお金を払って使っていました。ところが今は、同じ一文を生成AIに入力して数十秒待つだけで、イメージにぴったりの画像が手に入ります。しかも何度でもやり直せて、追加の料金もほとんどかかりません。

こんな時代に、写真を売る仕組みであるストックフォトは、このまま成り立つのでしょうか。この記事では「ストックフォトはAIで本当に消えるのか」という疑問を、感覚ではなく、各社が公開している決算などの数字を使って確かめていきます。

この記事の結論(先に知りたい方へ)

  • ストックフォトの市場が「ゼロになった」わけではありません。ただし、個人や小さな会社が少額で買う分野は縮んでいて、収益の中心はAI向けのデータ販売や大口契約へ移りつつあります。
  • 世界最大級のShutterstockは、2026年4〜6月期の売上が前年の同じ時期より17%減りました。Getty Imagesでも、広告会社などに向けた「Agency」の売上が13%減っています。日本のPIXTA(ピクスタ)も、売上の減少が続いています。
  • 一方で、報道写真(エディトリアル)や、本物であることが大切な写真は堅調です。置き換わりやすいのは「どこにでもありそうな無難な写真」です。
  • これから売れ続けるのは、実在する・独自である・信頼できるという3つの条件を持つ写真や動画だと考えられます。

なお、数字の出どころはすべて記事の最後にまとめています。2026年10月28日の時点で確認できた最新の決算は、2026年4〜6月期のものです。

目次

はじめに 生成AIの普及で「欲しい写真」が一瞬で手に入る時代になりました

ストックフォトとは何か

ストックフォトとは、写真家やイラストレーターが作った素材を、インターネット上のお店にずらりと並べておき、必要な人がライセンス料(使用許可の料金)を払って使える仕組みです。ブログのアイキャッチ画像、会社の資料、広告、雑誌、チラシなど、私たちが毎日目にする画像の多くが、実はこの仕組みから生まれています。

代表的なサービスには、アメリカのShutterstock(シャッターストック)、Getty Images(ゲッティイメージズ)とその姉妹サービスのiStock、AdobeのAdobe Stock、日本のPIXTA(ピクスタ)などがあります。写真を提供する人は、素材が使われるたびに報酬を受け取れます。「一度撮った写真が、寝ている間にも売れる」という夢のある話が、長く語られてきました。

風向きが変わった2022年

流れが大きく変わったのは2022年です。同じ年の8月には画像生成AIのStable Diffusionが公開され、その後もMidjourneyやDALL·Eなど、文章から画像を作るサービスが一気に広まりました。2022年12月には、Adobe Stockが生成AIで作った画像の受け付けを始めています。

アメリカのセントルイス連邦準備銀行の分析によると、2024年8月の時点で、18〜64歳のアメリカ人の39.5%が生成AIを使った経験がありました。この数字は、パソコンやインターネットが広がり始めたころの普及の速さを上回るとされています。(CEPICに掲載された記事より)

写真を「買う側」から見れば、選択肢が一気に増えました。一方で「作る側」にとっては、自分の写真が売れなくなるのではないか、そもそも自分の写真がAIの学習に使われているのではないかという、二重の不安が生まれました。

この記事の進め方と、数字を読むときの注意

この記事では、次の順番で話を進めます。

  1. 各社の決算などの数字で、AIが広まる前と後を比べます。
  2. 日本の記事ではあまり取り上げられない、海外の訴訟・著作権・消費者調査・データ販売の話を紹介します。
  3. これからのストックフォトで、どんな写真が売れるのかを考えます。

ひとつ、先にお断りしておきます。決算の数字が変わった理由には、AI以外にも、会社の買収、為替の動き、広告の景気、サービスの値段の変更など、たくさんの要素が混ざっています。各社の発表も、売上が減った原因を「AIのせい」とは書いていません。ですから、この記事の数字は「AIが原因だと証明するもの」ではなく、「AIが広まった時期に何が起きたかを確かめるもの」として読んでください。

生成AIの普及でストックフォトはどうなった?売上の数字でAI前後を比べてみた

「AI前」と「AI後」の分け方

この章では、画像生成AIが一般に広まる前の2022年を「AI前」、2023年以降を「AI後」として比べます。とくに、決算を公開している上場企業を中心に見ていきます。上場企業の数字は、誰でも同じものを確認できるので、あとから検証しやすいからです。

Shutterstock(シャッターストック)の数字

Shutterstockは、世界最大級のストックフォト会社のひとつです。年間の売上を並べると、次のようになります。

年売上(百万ドル)うちAI向けデータ販売などの部門(百万ドル)補足
2022年約827.8約38.6AI前。売上は2023年の決算資料から逆算した金額
2023年874.6137.3データ部門が前年の約3.6倍に
2024年935.3175.37月にEnvato(エンバト)を買収
2025年989.9203.3過去最高の売上。ただし第4四半期は12%減

※「AI向けデータ販売などの部門」は、同社の決算での呼び名が「Data, Distribution, and Services」です。2022年の金額は、2023年に256%増えて137.3百万ドルになったという記載からの逆算で、おおよその値です。

この表だけを見ると、「ストックフォトは元気ではないか」と感じるかもしれません。ところが中身を見ると、見え方が変わります。

フェーズ1 2022年から2023年 AI向けのデータ販売が急に伸びた

2023年の売上は前年から約6%増えました。ただし、増えた分の主役は、AIを作る会社に素材やその説明文(メタデータ)を売るデータ部門でした。同社の年次報告書によると、この部門は256%増えて137.3百万ドルになり、そのうちデータ提供による増加分は84.9百万ドルです。

同じ年に、ふだんの写真販売はどうだったでしょうか。同社の説明では、個人や小さな会社が中心になるネット通販型の経路の売上が12%減りました。年次報告書も、写真などのライセンス収入の減少は「新しいお客さまを集める力の弱さ」が原因だと説明しています。有料ダウンロード数も、2022年の1億7,330万件から2023年の1億5,300万件へと、約12%減りました。

つまり、AIが広まった最初の年に、「写真を買う側の新しい小口のお客さま」が増えにくくなり、会社は「AIに素材を売る」ほうで穴を埋めた、という形です。

フェーズ2 2024年から2025年 売上は増えたが、中身は買収の効果が大きい

2024年と2025年の売上は、見かけ上は伸びています。しかし、2024年7月に買収したEnvatoの売上が、2025年には1年分入ったことが大きな理由です。同社自身も、2025年の写真などの売上が4%増えたのは、Envatoの1年分が加わったためだと説明しています。ふだんの写真販売そのものは弱いままで、新規のお客さまの獲得が伸びないという表現も、決算の中で繰り返し出てきます。

フェーズ3 2025年の終わりから2026年 減少がはっきりしてきた

数字がはっきり悪くなったのは、2025年10〜12月期からです。

期間売上前年同期比うち写真などの売上前年同期比
2025年10〜12月期220.2百万ドル12%減189.6百万ドル11%減
2026年1〜3月期199.2百万ドル18%減178.1百万ドル12%減
2026年4〜6月期221.8百万ドル17%減165.7百万ドル17%減

2026年の前半(1〜6月)をまとめると、売上は合計で約421.0百万ドルで、前年の前半より約17%減りました。写真などの売上だけで見ても、約14.6%の減少です(どちらも決算の数字からの筆者の計算です)。

そのほかにも、気になる数字が並んでいます。

  • 月ぎめなどで使う契約者の数は、2025年1〜3月期の107万9千人から、2026年1〜3月期には99万3千人へ、約8%減りました。
  • 有料ダウンロード数は、2026年1〜3月期が1億410万件で、前年の同じ時期の1億2,090万件より減っています。
  • 2026年4〜6月期には、約1億7,370万ドルののれん減損(買収した事業の価値を帳簿上で見直して、損失として計上すること)が出ました。
  • 会社は2026年の業績見通し(ガイダンス)の発表をやめ、暫定のCEO体制で、追加のコスト削減に取り組むと発表しています。

AI向けのデータ販売の部門も、毎期安定して伸びているわけではありません。この部門は、2025年通期では16%増えましたが、2026年1〜3月期は47%減、4〜6月期は16%減でした。同社も、データ販売の売上は、素材を渡すタイミングによって四半期ごとにばらつくと説明しています。

Getty Images(ゲッティイメージズ)の数字

Getty Imagesは、ストックフォトに加えて、スポーツやニュースなどの報道写真に強い会社です。2025年の決算では、売上が9億8,130万ドルで過去最高でした。内訳を見てみましょう。

区分2024年(百万ドル)2025年(百万ドル)増減
Creative(広告や企業向けの一般的な写真・動画)552.8556.90.7%増
Editorial(報道・スポーツ・芸能などの写真)345.9369.66.9%増

ここに、大切なポイントがふたつあります。

ひとつめは、報道写真の伸びと、一般的な写真の横ばいです。報道写真は、その日その場所で撮られたものだけに価値があるので、AIでは作れません。実際に、2026年4〜6月期でも、Editorialは9.2%増えた一方、Creativeは2.6%減っています。

ふたつめは、2025年の売上には「特別な追い風」が入っているという点です。同社は2025年10〜12月期に、2件の大型の複数年ライセンス契約を結びました。そのうちの1件は、同社のデータと写真の利用に関する契約で、売上の一部を早めに計上しています。2025年の数字は、その分だけよく見えているのです。

もうひとつ、深刻に見えるのが、お客さまの数に関する数字です。年ぎめで契約してくれる利用者(直近12か月)は、2025年12月期には278千件で、前年の314千件より11.4%減りました。2026年6月末には240千件になり、前年の同じ時期の321千件から25.2%も減っています。年ぎめ契約の売上を維持できた割合を示す「継続率」も、93.4%から88.4%に下がりました。

CEOのCraig Peters氏は、2026年4〜6月期の決算説明会で、広告会社向けの「Agency」の売上が13%減ったことを挙げ、背景のひとつに、お客さまが「AIを使った社内制作」へ向かいやすい仕組みがあると話しています。ストックフォトを売る側のトップが、AIによる内製化に言及したということです。

さらに、経営は楽ではありません。同社は2026年4〜6月期に約8,580万ドルの純損失を出し、2026年の業績見通しを取り下げました。Shutterstockとの合併も、イギリスの競争当局(CMA)が2026年5月に出した最終報告で、Shutterstockの報道写真部門を売却することが条件になりました。Getty側は6月30日に、その条件をのまないと決め、7月7日に合併契約を終了させています。世界のストックフォト業界の二強が一緒になる計画は、こうして白紙に戻りました。

Adobe Stock(アドビストック)で起きていること

Adobe Stockは、数字を公開していないので売上は分かりません。ただ、「どれくらいAI画像が増えたか」を、外部の調査が示しています。

Adobe Stockは、2022年12月に、生成AIで作った画像の受け付けを始めました。条件は、AIで作ったと分かるようにラベルをつけることです。その後、2023年5月の時点で、AI画像はサイト全体の約2.5%でした。ところが、2025年4月8日の時点では、画像全体のなんと47.85%がAI生成になったと、写真家のRobert Kneschke氏の調査として報じられています(PetaPixelなどが紹介)。

わずか2年足らずで、2.5%から約半分へ増えたことになります。その影響で、写真を投稿している人たちの間では「似た内容の素材がすでにあります」という理由での不採用が急に増えた、という声が広がりました。2026年4月にも、Adobeの公式コミュニティで、同じ内容の不満が投稿されています。あるクリエイターは、お客さまが自分でAI画像を作れるのに、AI画像にお金を払う人がいるのだろうか、と疑問を投げかけています。

一方、Adobeは、AIと投稿者が共存する形も模索しています。たとえば、AIの「Firefly」の学習に素材が使われた投稿者に、ボーナスを支払う仕組みを2024年に始めました。また、ストック素材を参考にして生成された画像がダウンロードされたときも、元の素材の投稿者に報酬が入る仕組みが紹介されています。

日本のPIXTA(ピクスタ)の数字

日本でストックフォトの中心的な存在のPIXTAも見てみましょう。PIXTAは東京証券取引所に上場していて、決算の資料が公開されています。

PIXTAの2025年12月期の売上は、約27億円の規模でした。Simply Wall Stの集計によれば、純利益は92百万円で、前の年より77%減っています。

「PIXTA事業」(素材の販売)の第1四半期の売上を、2023年から4年分並べると、次のようになります。

各年の1〜3月期PIXTA事業の売上(百万円)
2023年602
2024年596
2025年534
2026年453

2023年から2026年までの3年間で、約25%の減少です(筆者の計算)。会社全体でも、2026年1〜3月期の売上は前年の同じ時期より7.6%減りました。さらに、2026年の前半(1〜6月)の売上は12億円で、前年の前半より8.0%減り、営業損益は約2,050万円の赤字になっています(前年は約8,950万円の黒字)。

PIXTAの方針にも、大きな変化がありました。同社は2026年4月20日に、AI生成コンテンツの新しい申請の受け付けをやめ、5月22日にAI生成素材の販売を終えました。その理由として、AIツールの広がりで、短期間に大量のAI生成コンテンツが投稿される一方、買う人の求めるものとの食い違いが目立ってきたことを挙げています。ただし、作り手が自分で撮影・制作した作品を大きく変えない範囲で、補助的にAIを使うことは認めています。

また、PIXTAの事業の構成も変わってきました。出張撮影のサービス(fotowa)などを含む「撮影・クリエイティブ体験事業」が、全体の売上に占める割合は、2025年1〜3月期の18.7%から、2026年1〜3月期には25.3%へ増えています。画像の販売が縮むなかで、「人が現場に行って撮る」という、AIでは代わりにくい事業が育っている、とも読み取れます。

写真を作る側の数字

ここまでは会社側の数字でした。次に、写真を作る人たちの声も確認します。

イギリスの写真家の団体Association of Photographers(AOP)が、2026年1月に会員向けの調査を公表しました。会員は約3,000人で、そのうち約20%(約600人)が回答しています。

  • 58%が、生成AIのサービスに仕事を奪われた経験があると答えました。この割合は、2025年の調査と同じです。
  • 1人あたりの年間の損失額は、平均で約34,900ポンド(約4万8千ドル)でした。前年から142%増えたと報じられています。
  • ライセンスされた写真の数は65%減り、ネットに公開している作品の数も46%減りました。

注意してほしいのは、これは「ストックフォトの投稿者」ではなく、仕事で写真を撮る「プロの写真家」の調査だという点です。回答した会員は、AIに不安を持つ人ほど答えやすいかもしれず、全員の実態とは限りません。それでも、「AIに使われることを恐れて、写真をネットに出さなくなる」という動きは、将来の素材の供給にも関わる大切な変化です。

市場の予測は、見る人によって大きく違う

最後に、市場の大きさの予測も見ておきます。CEPIC(ヨーロッパの画像業界団体)に掲載された記事によると、世界のストックフォト市場は、2024年の46.5億ドルから、2030年には69.7億ドルへ増えると予測する調査会社があります。ところが、画像生成AI市場の予測は、2023年の3億ドルから、2030年に9.17億ドルから608億ドルまで、調査会社によって大きく開いています。

予測は会社によってここまで違います。数字だけで未来を決めつけるのは危険で、「実際の決算で、何が起きているか」を見続けることのほうが大切です。

数字から見えてきた5つのこと

  1. 小口のお客さまが減っている Shutterstockも、Getty Imagesも、個人や小さな会社が中心の経路で、新しいお客さまの獲得が弱くなっています。「自分で作れる」人が増えた時期と重なります。
  2. 売上の柱が入れ替わりつつある 写真の販売から、AI向けのデータ販売や大口の契約に重心が移っています。ただし、データ販売の売上は波があり、安定した収益とは言い切れません。
  3. 報道写真は強い Getty ImagesのEditorialは伸びています。本物の出来事の写真は、AIでは作れないからです。
  4. 素材の数だけが増えている Adobe StockではAI画像が約半分になりました。Getty Imagesの画像ライブラリも、2026年6月末時点で6億2,500万枚と、1年で5.7%増えています。供給が増えるほど、1枚あたりが選ばれる確率は下がります。
  5. 業界の体力が落ちている 二強の合併計画が白紙になり、Shutterstockは減損と追加のコスト削減、Getty Imagesは赤字と資金繰りの見直しを抱えています。投稿者に支払う報酬や、サービスの方針にも、今後影響が出るかもしれません。

日本の記事では語られにくい海外の4つの視点

ここからは、日本語の記事ではあまり取り上げられない、海外の裁判・調査・専門家の意見を紹介します。ストックフォトの未来を考えるうえで、重要な手がかりになります。

視点1 「AIの学習に写真を使うのは違法か」はまだ決着していない

Getty Imagesは、画像生成AI「Stable Diffusion」を作ったイギリスのStability AIを、自社の写真を無断で学習に使ったとして訴えました。イギリスの高等法院は、2025年11月4日に判決を出しました。

結果は、Getty Imagesの大部分の敗訴でした。裁判官は、Stable Diffusionのようなモデルは、著作物をそのまま保存したり再現したりしているわけではないので、「違法なコピー」にはあたらないと判断しました。Getty側が勝ったのは、AIが出した画像にGettyのロゴ(透かし)が写り込んだことに関する、商標の一部だけで、裁判官自身がその範囲を「過去のことで、きわめて限定的」だと述べています。

さらに、Getty側は裁判の途中で、「学習をイギリスで行ったか」に関する主張を取り下げています。学習した場所を示す証拠が足りなかったためと報じられました。弁護士からは「判決は、法律の整理という点では期待外れ」という声も出ています。Getty Imagesは、この判決で認められた事実を、アメリカで続けている別の裁判に生かすと発表しています。

つまり、「AIの学習は許されるのか」という根本の問いは、世界でまだ決着していません。このあいまいさがあるからこそ、「権利をきちんと処理した素材を、AI会社に売る」というビジネスが成り立っている面があります。逆に言えば、裁判や法律の流れ次第で、そのビジネスの前提が変わる可能性もあります。

視点2 AIだけで作った画像は、著作権で守られにくい

アメリカでは、2026年3月2日に、連邦最高裁判所が「Thaler v. Perlmutter」という裁判の上告を受け付けませんでした。この裁判は、AIが自動で作った絵に著作権が認められるかを争ったものです。2025年の控訴裁判所の判断が、そのまま確定した形になり、「著作権には人間の創作が必要で、AIだけで作った作品は対象外」という考え方が、アメリカでは維持されました。

ただし、人間がどのくらい関わればよいのかは、まだ決まっていません。Midjourneyで600回以上の指示を出して作った画像の登録をめぐる別の裁判(Allen v. Perlmutter)が、続いています。

これはストックフォトにとって、重要な意味を持ちます。写真は撮った人に著作権があるので、ライセンスを売る意味があります。一方、AIだけで作った画像は、アメリカでは著作権で守られにくく、他の人に同じように使われても、権利を主張しづらくなるからです。「他社と同じ画像を使いたくない」「使用条件をはっきりさせたい」という会社にとって、実写の写真には、法的な安心という価値が残ります。

なお、日本の著作権法には、AIの学習目的の利用を一定の条件で認める規定(第30条の4)があるなど、国によって事情が違います。この点は、この記事では詳しく調べていないので、仕事で使う場合は、必ず最新の情報や専門家の意見を確認してください。

視点3 消費者は「本物」を求めている ただし条件つき

Getty Imagesが自社の調査プラットフォーム「VisualGPS」で行った、「Building Trust in the Age of AI」という調査があります。2022年から2024年に、日本を含む25か国で、3万人以上の大人が答えたものです。主な結果は次のとおりです。

  • 98%が、「本物」の画像や動画は、信頼を築くうえで重要だと答えました。
  • 約90%が、画像がAIで作られたかどうかを知りたいと答えました。
  • 87%が、画像が本物であることは大切だと答えました。
  • 広告などで、「本物の写真」を好む人は38%で、「AI画像」を好む人の15%の2倍以上でした。

ただし、読むときには注意も必要です。まず、この調査は、写真を売っているGetty Imagesが行ったものなので、立場上、本物の写真に有利な結果になりやすい面があります。また、人の「気持ち」を聞いた調査であって、実際の購入行動を測ったものではありません。

実際、同じGetty Images傘下のiStockの調査では、74%の人が、AIを倫理的に使うなら受け入れられると答え、「AIを使ったと表示される」なら87%が受け入れられると答えています。つまり、消費者はAIそのものを嫌っているのではなく、「だまされること」を嫌っていると読めます。この違いは、広告やブログで画像を選ぶ人にとって、大切なヒントになります。

視点4 AI向けのデータ販売は、いつまで続くのか

Shutterstockは、2023年にAI向けのデータ販売で約1億400万ドルの売上を得て、2027年に2億5,000万ドルへ増やす目標を掲げていました。取引先には、OpenAIやMetaなどの大手が含まれると報じられています。

ところが、ストックフォト業界に長く関わってきたPaul Melcher氏は、この収益には落とし穴があると指摘しています。AIはいったん学習を終えれば、同じ素材を何度も買う必要がなくなるかもしれません。さらに、素材を買った会社は、ストックフォトの競争相手になりうる画像生成AIを作っている会社でもあります。「自分の首を絞める取引」になる危険がある、という見方です。

実際にShutterstockのデータ販売の売上は、2025年は伸びたものの、2026年に入ってからは大きく減りました。もちろん、ばらつきのあるタイミングの問題かもしれませんが、AIデータ販売を「安定した次の柱」と呼ぶには、まだ早いといえそうです。

これからのストックフォト AI時代に写真は売れるのか

2030年に向けた3つのシナリオ

ここからは、これまでの数字や事実を踏まえた、筆者の見立てです。未来は誰にも分かりませんので、3つの道筋として整理します。

シナリオA 二極化して共存する(もっとも起こりやすいと考えます)

AIで十分な「無難な素材」の価格と売上は下がり続けます。一方、報道・ドキュメンタリー・実在の人物や場所・専門性の高い写真は、価値が保たれます。素材の数は増えても、選ばれる写真と選ばれない写真の差が、これまで以上に開きます。

シナリオB AIによる置き換えが一気に進む

AIの画像がさらに自然になり、見分けがつかなくなって、一般的な写真の需要の多くがAI生成に移ります。ストックフォト会社は、AI生成サービスやデータ販売に軸足を移し、写真家への報酬は大きく下がります。

シナリオC 「本物の証明」に価値が戻る

AI画像があふれた反動で、AIか本物かを示す表示や、撮影情報を残す技術が広がります。ルールも整い、「本物である」こと自体が商品になります。

どの道筋になるかは、次のような出来事で見分けられそうです。

  • Shutterstockの「新しいお客さまの獲得」が回復するかどうか
  • Getty Imagesの「Agency」と年ぎめ契約の数が持ち直すかどうか
  • Adobe StockなどでAI画像の割合がどう動くか
  • Getty ImagesとStability AIのアメリカでの裁判や、人間の関与の度合いを問う裁判の行方
  • AI画像の表示を求めるルールが各国で広がるかどうか

売れにくくなる写真と売れ続ける写真

決算や調査の内容から、次のように整理できます(これも筆者の見立てです)。

区分具体例理由
売れにくくなる青空、握手、パソコンを使う人、白背景のコーヒーなど、どこにでもある定番の構図文章で頼めばAIがすぐ作れる。すでに素材が大量にあり、似た内容として不採用になりやすい
売れにくくなる抽象的な背景、質感、イメージカットAIが特に得意とする分野
売れ続けやすいニュース、スポーツ、イベントの報道写真その場に行った人だけが撮れる。Getty ImagesのEditorialは伸びている
売れ続けやすい実在する場所、店、企業、地域の行事、季節の風景現実に存在することが価値になる。AIは細部を間違えやすい
売れ続けやすい権利処理(モデルや建物の使用許可)が済んだ、本物の人物の写真医療・金融・旅行など、信頼が重要な業種で求められる
売れ続けやすい動画、特殊な撮影(空撮、水中、顕微鏡など)撮影そのものに手間と技術が必要で、AIで代わりにくい

写真を売る人が今できる6つの工夫

ストックフォトで売りたい、あるいは今も投稿している方に向けた、具体的な工夫です。

1. 「AIには作れない理由」がある被写体を選ぶ

自分が住んでいる地域の、実在の景色・行事・仕事の現場・暮らしなどは、あなたにしか撮れない強みになります。「どこにでもある写真」ではなく、「ここにしかない写真」を意識します。

2. 似た写真を、たくさん出しすぎない

Adobe Stockでは、似た内容の素材が理由で不採用になる例が増えています。1つの場面から何十枚も出すより、本当に違いのある数枚を厳選するほうが、結果的に採用されやすく、売れやすくなります。

3. 権利処理をていねいに行う

人物が写る場合は、本人の同意書(モデルリリース)、建物や商品が写る場合は、所有者の同意(プロパティリリース)が必要になることがあります。「権利がきれいな実写」は、AI画像にはない強みです。法律や規約は国やサービスで違うので、各サービスのガイドラインを必ず確認してください。

4. 動画や、手間のかかる撮影にも挑戦する

Getty Imagesの動画ライブラリは、2026年6月末で3,900万本と、1年で11.7%増えています。静止画の競争が激しいなら、動画や特殊な撮影に広げるのは、有力な選択肢です。

5. 「素材を売る」以外の収入の道も持つ

PIXTAが出張撮影などの体験型の事業を伸ばしているように、「撮影の依頼を受ける」「自分のサイトや教室で売る」など、ストックフォト以外の道を持っておくと、安心です。

6. AIは「敵」ではなく「道具」として使う

VSCOが2026年4月に行った調査では、83%の写真家が、何らかの形でAIを使っていると答えています。使い道は、写真の整理、キーワードの付け方、予定管理、請求書づくりなどが中心です。作品そのものをAIで作るのではなく、面倒な作業を任せて、撮ることに時間を使うという考え方です。あわせて、自分の素材がAIの学習に使われるかどうかや、その報酬の有無は、各サービスの規約で確認しておきましょう。

写真を使う側(ブログ運営者・担当者)の考え方

写真を「買う側」「使う側」にとっても、選び方は変わってきました。目安をまとめます。

使う場面おすすめの考え方
ブログのアイキャッチ、抽象的な背景、アイデア出しAI画像でも十分な場合があります。ただし、使うAIサービスの商用利用のルールを確認し、他の人と同じ画像になる可能性も理解しておきます
人物、商品、実在する場所、店舗の紹介実写が安心です。AIは細部を間違えることがあり、読者の信頼を損なうおそれがあります
医療、金融、旅行など、信頼が重要な情報実写を基本にします。AIを使う場合は、「AIで作成した画像です」と明記する配慮を
ニュース性のある内容本物の報道写真を使います。AI画像を本物のように見せるのは避けます
他社と差をつけたい、権利を明確にしたい実写のライセンス素材が向いています。AIだけの画像は、著作権で守られにくい国があります

約90%の人が「AIかどうかを知りたい」と答えている調査結果を考えると、AI画像を使うときは、隠すよりも正直に伝えるほうが、読者との信頼につながりそうです。

よくある質問(FAQ)

Q1 ストックフォトはAIで本当になくなりますか?

現時点の数字を見る限り、なくなってはいません。Getty Imagesの2025年の売上は、過去最高の9億8,130万ドルでした。ただし、Shutterstockの2026年4〜6月期の売上は前年より17%減るなど、一般的な写真の販売は弱くなっています。「なくなる」というより、「市場の中身が入れ替わっている」と見るのが正確です。

Q2 AIの影響をいちばん受けているのは、どんな分野ですか?

決算を見る限り、個人や小さな会社が少額で買う分野と、広告会社などが社内で素材を用意する分野です。Shutterstockは新しいお客さまの獲得が弱いと説明し、Getty ImagesはAgencyの売上が13%減ったと報告しています。

Q3 AIが作った画像も、ストックサイトで売れますか?

サービスによって違います。Adobe Stockはラベルをつけたうえで受け付けていて、画像の約半分がAI生成になりました。一方、PIXTAは2026年5月にAI生成素材の販売を終えています。受け付けているサイトでも、投稿が急増して競争は激しく、売れにくくなったという声があります。

Q4 今からストックフォトを始めても、稼げますか?

収入の柱にするのは、以前より難しくなっています。素材の数が増え続けていること、似た内容が不採用になりやすいことが理由です。趣味や副収入として、自分にしか撮れない被写体を丁寧に出していくのであれば、可能性はあります。ただし、あくまで筆者の見立てで、収入を保証するものではありません。

Q5 AIが作った画像に、著作権はありますか?

国によって考え方が違います。アメリカでは、2026年3月に最高裁が上告を受け付けず、「AIだけで作った作品は著作権で守られない」という考え方が維持されました。人間がどこまで関わればよいかは、まだ決まっていません。日本の場合は、仕事で使う前に、最新の公的な情報や専門家の意見を確認してください。

Q6 自分の写真が、AIの学習に使われないか心配です。

多くの写真家が同じ不安を持っています。AOPの調査では、ネットに公開する作品の数が46%減ったと報告されました。投稿先の規約で、AIの学習への提供の有無、報酬の有無、断る方法があるかを確認することをおすすめします。

Q7 Getty ImagesとShutterstockの合併は、どうなりましたか?

2025年1月に発表された合併計画は、白紙になりました。イギリスの競争当局が2026年5月に出した最終報告で、Shutterstockの報道写真部門の売却が条件になりました。Getty Imagesはその条件をのまず、2026年7月7日に合併契約の終了を通知しています。

まとめ

ここまでの内容を、あらためて振り返ります。

最初の章では、生成AIの広がりで、「欲しい写真」が文章だけで手に入る時代になったことと、そのせいでストックフォトの先行きに不安が出ていることを確認しました。

次の章では、各社の決算でAI前後を比べました。Shutterstockは、AIが広まった2023年に、小口のお客さまの経路が弱くなり、AI向けのデータ販売で穴を埋めました。2025年の終わりから2026年にかけては、写真などの売上が前年より1割以上のペースで減っています。Getty Imagesは、一般的な写真が横ばいから減少で、広告会社向けと年ぎめ契約の数が大きく落ち込む一方、報道写真は伸びています。日本のPIXTAも、素材販売の売上が3年で約25%減りました。Adobe Stockでは、AI画像が約半分まで増えています。

そして海外の視点として、AIの学習が違法かどうかはまだ決まっていないこと、AIだけで作った画像は著作権で守られにくいこと、消費者はAIよりも「だまされること」を嫌っていること、AI向けのデータ販売はいつまで続くか分からないことを紹介しました。

これらを合わせると、ストックフォトは「消える」のではなく、「二極化する」可能性が高いと考えられます。どこにでもある無難な写真は、AIに置き換わりやすくなります。一方、実在する、独自である、信頼できるという写真と動画の価値は、むしろ高まるかもしれません。

もしあなたが写真を撮る側なら、「AIには作れない理由」を探してみてください。あなたの住む街、あなたの仕事の現場、あなたが立ち会った出来事は、世界に1つだけの素材です。そして使う側なら、AIと実写、それぞれの得意なところを知って、読者にとって誠実な選び方をしていきましょう。

AIが写真を代わりに作れる時代になって、かえって「そこにいた人が撮った1枚」の重みが、はっきり見えてきたのではないでしょうか。


参考文献・参照元

アクセス日はすべて2026年10月28日です。

企業の決算・公式発表

海外の調査・解説・裁判


ご注意

この記事は、公開されている決算資料、報道、調査、裁判に関する解説などをもとに、筆者が情報を整理して作成した、一般的な情報提供を目的としたものです。投資、法律、税務、その他の専門的な助言ではありません。掲載した数字や内容の正確性、完全性、最新性を保証するものではなく、決算の訂正、法律や各サービスの規約の変更などにより、内容が実際と異なる場合があります。

とくに、「筆者の見立て」「筆者の計算」と記した部分は、筆者個人の解釈や試算であり、将来の結果を予測・保証するものではありません。投資や契約、素材の販売・利用に関する判断は、必ずご自身で一次情報や公式サイトをご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。

この記事の内容を利用して生じたいかなる損害や不利益についても、当ブログおよび筆者は責任を負いません。

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この記事を書いた人

手帳が続かない・考えすぎて動けない、そんな時期を何度も経験してきました。
手帳歴20年以上、GTD・振り返り・小さな習慣を実践しながら、少しずつ自分なりの整理術を見つけてきた人間です。
「頑張りすぎない改善」をテーマに、手帳・習慣化・心理・オカルト・日常の気になることを丁寧に発信しています。

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