はじめに 結んだ髪をほどいた瞬間、頭皮がずきずきした経験はありませんか?
朝、きれいに高めのポニーテールを結んで出かけた。夕方、家に帰ってゴムをはずした瞬間、頭の皮がじんわり、あるいはずきずきと痛み出した。
髪をほぐそうとして指を通すだけで「いたたた」と声が出てしまう。シャンプーのときにも、頭皮に触れるのがためらわれる。お団子にした日、ほどいたあとにこめかみまで重く痛い気がする。
こんな経験をしたことがある方は、実はとても多いのではないでしょうか。
そして同時に、こんな不安がよぎったはずです。
- 「これって私だけ?」
- 「頭皮がこんなに痛くなるなんて、何か悪い病気の前触れでは?」
- 「このまま続けたらハゲてしまうのでは?」
結論から先にお伝えすると、結んだ髪をほどいたときの頭皮の痛みは、海外の頭痛の専門家のあいだでも知られている「れっきとした現象」です。そして多くの場合は一時的なもので、慌てる必要はありません。
ただし、「痛みを我慢して同じ髪型を続けること」には、ちょっとした落とし穴もあります。この記事では、次のような疑問に、できるだけやさしい言葉で、じっくりお答えしていきます。
- 結んだ髪をほどくと、なぜ頭皮が痛くなるのか
- ポニーテールやお団子でとくに痛くなりやすいのはどんなときか
- この痛みはヤバいのか、放っておいて良いのか
- 痛くならないために、今日からできる対策は何か
海外の医療機関や皮膚科学会の情報、研究論文の内容もあわせてご紹介します。日本語の記事ではあまり見かけない視点も盛り込みましたので、ぜひ最後までおつきあいください。

第1章 髪を結んだあとの頭皮の痛みは「実在する現象」だった
「気のせい」ではありません
まず安心していただきたいのは、この痛みが気のせいでも大げさでもないということです。
英語圏では、この現象は「ポニーテール頭痛(ponytail headache)」というニックネームで呼ばれています。医学的な正式名称は「外部牽引性頭痛(がいぶけんいんせいずつう)」、または「外部圧迫性頭痛」です。
「牽引(けんいん)」とは、ぐいっと引っぱることです。髪を高い位置できつく結ぶと、頭皮が引っぱられ続けます。その状態で起こる頭の痛みのことを指します。
アメリカのミシガン大学の医療機関で頭痛の専門プログラムを率いる医師は、これを「本物の頭痛の一種」と説明しています。国際的な頭痛の分類のなかにも、外から頭に加わった圧迫や引っぱりが原因で起こる頭痛として、きちんと位置づけられています。
調査でも「結ぶと痛い」人は多かった
この現象は、研究でも確かめられています。
2004年に医学誌「Headache」に載った調査では、93人の女性のうち50人が、ポニーテールがきっかけで頭痛が起こると答えたと紹介されています。痛む場所は、ゴムで結んだあたりだけの人もいれば、おでこやこめかみ、首のほうまで広がる人もいたそうです。
つまり、髪を結ぶと頭が痛くなる人は、決して少数派ではありません。
別の専門医は、この痛みについて「とてもよくあるもの」とコメントしています。とくにステージで高い位置のポニーテールを長時間続けることの多いパフォーマーに多いとも言われています。ポップシンガーのアリアナ・グランデさんが、トレードマークの高いポニーテールのせいで「常に痛い」と語ったことが、2018年に話題になりました。
「ほどいたあと」にこそ痛みが強く出る人もいる
ここで気になるのが、「結んでいるあいだではなく、ほどいた瞬間のほうが痛い」という体験です。
実は、専門家のあいだでも、結んでいる最中の痛みと、ほどいた後の痛みはまとめて語られることが多く、どちらも同じ「頭皮の神経が敏感になっている状態」から来ていると考えられています。次の章で、その仕組みを順番に見ていきましょう。
第2章 なぜ髪をほどいたときに頭皮が痛くなるの?仕組みを平易に解説
髪の毛そのものは痛みを感じない
まず大前提として、髪の毛そのものには神経が通っていません。だから、美容院で髪を切っても痛くないのです。
アメリカの頭痛専門医は、髪の毛の外に出ている部分には痛みを感じる力がなく、痛みを感じるのは、髪が根元から生えている「頭皮」のほうだと説明しています。頭皮には、痛みや触られた感覚を脳に伝える細かな神経が、びっしりと走っています。
つまり、「髪が痛い」と感じるとき、本当に痛んでいるのは頭皮です。
結ぶと、毛根と頭皮が一日中引っぱられる
髪をゴムでまとめると、何千本もの髪の毛がぎゅっと一か所に束ねられます。すると、その重さと引っぱる力が、すべて頭皮に伝わります。
病院系の健康メディアでは、ヘアゴムは頭皮のすべての髪を同時に引っぱり、とくに生え際付近の神経の感覚を刺激し続けると説明されています。
ポニーテールを結んだ状態は、たとえるなら、頭のてっぺんから後ろに向かって、ずっと小さく手で髪をつかまれているようなものです。腕を何時間も同じ姿勢で引っぱられ続けたら、あとからじんじんしますよね。それと同じことが頭皮で起きていると考えると、イメージしやすいかもしれません。
痛みの正体は「アロディニア」という状態
専門家が、この痛みの仕組みを説明するときによく使う言葉があります。「アロディニア(異痛症)」です。
ちょっと難しそうな名前ですが、意味はシンプルです。ふだんなら痛くないはずの刺激を、痛いと感じてしまう状態のことです。
たとえば、日焼けをしたあとの肌は、シャワーの水が当たるだけでもヒリヒリしますよね。普通なら痛くない水の刺激を、肌が「痛い」と受け取っているわけです。これもアロディニアの身近な例です。
髪を引っぱられ続けた頭皮の神経は、いわば「日焼けした肌」のように敏感になります。その状態で髪をほどくと、髪が動く、頭皮に触れる、風が当たる、といったごく普通の刺激を、脳が「痛い」と受け取ってしまいます。だから、髪をほどいたとたんに「ずきずき」「ひりひり」と感じるのです。
専門医は、髪をブラッシングするときや、ひげをそるときの痛みも、同じアロディニアの仲間だと説明しています。
神経が「音量を上げてしまう」イメージ
別の専門医の表現を借りると、頭皮の神経が脳に送る信号が、敏感な人では「必要以上に大きく増幅されてしまう」のだそうです。
ラジオのボリュームが、勝手に上がっていくようなイメージです。ふだんなら小さな音で済むはずの「引っぱられている」という信号が、大音量で脳に届く。その結果、頭皮に痛みを感じるのです。
血流や筋肉のせいという説明もある
ほかにも、いくつかの説明があります。ただし、ここは専門家の見解にも幅があり、「これだけが原因」と断言できる段階ではありません。参考情報として読んでください。
- 血流の変化という説 きつく結んでいるあいだ、頭皮の血のめぐりが悪くなり、ほどいた瞬間に血流が一気に戻ることで、敏感になった頭皮がじんじんする、という説明があります。イギリスの美容誌では、毛髪の専門家(トリコロジスト)が、長時間結んだあとにほどくと、血行が急に変わって頭皮が過敏になり、「トリコディニア」と呼ばれる状態になることがある、と紹介しています。
- 筋肉のこわばりという説 頭皮の下には、薄い筋肉の膜があります。髪を強く引っぱると、この筋肉が緊張し、こりのようなこわばりを生む、という考え方です。これは、個人の施術経験からの意見として語られることも多く、研究でしっかり確かめられたものとは言えません。
このように、ほどいたあとのずきずきは、「引っぱられ続けて敏感になった頭皮の神経」が中心になって起こる反応で、そこに血流や筋肉の緊張が加わっている可能性がある、と考えるのが、いまのところ無理のない整理です。
痛みは「どのくらい続く」の?
多くの場合、ゴムをはずしたり、結び方をゆるめたりして、頭皮への負担を取り除けば、痛みは時間とともに引いていきます。
専門家の説明では、圧迫や引っぱりをやめてから、おおむね1時間以内に治まることが多いとされています。この「1時間」は、あとで出てくる「受診の目安」にも関わるので、覚えておいてください。
第3章 ポニーテールやお団子にしてほどくとずきずきするのはなぜ?髪型ごとの違い
痛みの仕組みは共通ですが、髪型によって「痛くなりやすさ」は違います。ここでは代表的な髪型ごとに見てみましょう。
高い位置のポニーテール
重力に逆らう形で髪を持ち上げて結ぶため、頭のてっぺん付近の頭皮が、上向きに引っぱられやすい髪型です。髪の長さや量が多いほど、ぶら下がる重さも加わります。
毛髪の研究をまとめた医学レビューでは、女性は男性より髪が長く、髪の重さそのものが頭皮の痛みにつながる可能性があると述べられています。長い髪を高い位置でまとめるほど、頭皮にかかる負担が増える、と考えられます。
きつく結んだお団子・シニヨン
お団子は、髪を根元でぎゅっと固定したうえに、さらに塊としての重さが乗ります。ヘアピンやUピンで固定すると、頭皮の一部に強い力が集中しがちです。
また、同じ位置で長時間固定したままだと、同じ場所の毛根に負担が続きます。バレエやダンスなどで、きっちりしたお団子を長時間続ける方が痛みを訴えやすいのは、このためです。
ハーフアップ・ツインテール
左右に分けて結ぶツインテールや、半分だけ結ぶハーフアップは、一点に力が集中しにくい一方、こめかみ付近の頭皮が引っぱられやすくなります。ゴムの位置が低く、ゆったりしていれば負担は軽くなります。
三つ編み・編み込み・エクステ
きつく編み込んだ三つ編みやコーンロウ、エクステ(つけ毛)は、根元の毛根に長期間、持続的な引っぱりをかけ続けます。海外の皮膚科の資料では、編み込みは2〜3か月以内に外すこと、ウィーブやエクステも6〜8週間たったら一度外して休ませることが目安として紹介されています。
ヘアバンド・カチューシャ・帽子・ヘルメット
髪を結ぶ以外にも、頭を締めつけるものは痛みの引き金になります。専門家は、ヘアバンドやきつい三つ編み、ヘアゴムなど、外から頭に力がかかるものを原因としてあげています。ヘルメットやきつい帽子で似た痛みが出る人もいます。
「普段と違う髪型をしたとき」に痛くなりやすい理由
質問にもあった「普段と違う髪型をしたとき」についても触れておきます。
ふだんずっと髪をおろしている人が、急にきっちりしたポニーテールをすると、頭皮が慣れていない状態で強い引っぱりを受けることになります。慣れていない刺激に、神経がびっくりして過敏に反応するため、普段結ぶ人より痛みを感じやすいのです。
また、普段と違う分け目にすると、毛根にかかる向きが変わります。専門医のなかには、分け目を変えたり、ポニーテールの位置を変えたりするだけで痛みが軽くなる場合があると述べる人もいます。
第4章 痛くなりやすい人・なりにくい人のちがい
同じ髪型をしても、痛くなる人とならない人がいます。海外の専門医の解説をまとめると、次のような傾向があります。
睡眠不足やストレスがたまっているとき
頭皮の感覚は、体調に左右されます。専門医は、睡眠不足や強いストレスがあると、頭皮が敏感になりやすいと説明しています。寝不足は気分を落ち込ませ、痛みへの感じやすさも高めると言われています。
朝きれいに結べたからといって、夜までずっと快適とは限りません。疲れている日は、いつもより痛みが出やすい日だと考えて、ゆるめに結ぶのがおすすめです。
月経の周期による影響
女性の場合は、月経周期の時期によって、頭皮が敏感になる時期があるとされています。いつもは平気なのに、その時期だけ結ぶと痛むという場合は、体のリズムが関係しているのかもしれません。
片頭痛や緊張型頭痛がある人
ポニーテールの痛みは、もともと片頭痛や緊張型頭痛を持っている人に起こりやすいと専門医は述べています。また、片頭痛のある人がポニーテールで痛みを感じやすいという指摘や、髪を結んだことがきっかけで片頭痛が誘発されることがあるという解説もあります。
一方で、小児向けの頭痛センターの医師は、ポニーテールそのものが片頭痛を引き起こすわけではないと述べています。ポニーテールが引き起こすのは、頭の外側、つまり頭皮側で起こる緊張型に近い頭痛で、頭の内側で起こる片頭痛とは別ものだという考え方です。ただし片頭痛を持つ子どもや大人のほうが、ポニーテールの痛みを感じやすいことは確かだと説明しています。
痛みの感じ方が敏感になる病気がある人
線維筋痛症など、全身の痛みの感じ方が敏感になる病気のある人は、ポニーテールの痛みが出やすいという指摘もあります。この場合は、髪型を変えるだけでなく、背景にある病気の治療を優先することが大切だと専門医は話しています。
子どもにも起こります
子どもが「頭が痛い」と訴えたときに、髪を結んでいないか確かめてみてください。小児科領域でも、ポニーテールによる頭痛は子どもにもよくあるものとして取り上げられています。結び方をゆるくするか、髪をおろすだけで、あっさり解決することが多いようです。
第5章 この痛み、ヤバいの?放っておいて大丈夫?
ここが、いちばん気になるところだと思います。順番に整理しましょう。
ほとんどの場合は「ヤバくない」一時的な痛み
髪をほどいたときの頭皮の痛みは、多くの場合、一時的なものです。ゴムをはずして時間がたてば治まります。専門家も、この痛みの大半は、神経内科などの専門的な診察を必要としないと述べています。
大切なのは、「痛みの原因が取り除かれたら、ちゃんと引いていくかどうか」です。
こんな症状があるときは、病院へ相談を
アメリカの医療機関の頭痛専門医が示している「注意が必要なサイン」は、次のとおりです。
- 髪をほどいたり、結び方をゆるめたりして、1時間たっても痛みが引かない
- 光やにおいにとても敏感になる、吐き気や嘔吐をともなう
- ろれつが回らない、手足に力が入らない、しびれる、視界がおかしいなど、いつもと違う神経の症状が出る
- 「今までに経験したことのない、人生最悪の頭痛」と感じる
最後のように、突然の激しい頭痛や神経の症状をともなう場合は、緊急の事態の可能性があります。髪型のせいだと決めつけずに、すぐに医療機関を受診するか、救急に相談してください。
また、髪型を工夫しても痛みが続く、頻繁に繰り返す、日常生活に支障が出るという場合も、一度、頭痛外来や皮膚科で相談してみましょう。
続けると心配になる「牽引性脱毛症」
痛みそのものより、じつは注意したいのが、「引っぱられ続けること」による髪への影響です。
髪を強く引っぱる髪型を長く続けると、「牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)」という髪が抜ける状態になることがあります。アメリカ皮膚科学会(AAD)は、きつい髪型による毛根への継続的なストレスで起こる脱毛だと説明しています。
とくに、おでこの生え際や、こめかみのあたりは、変化が最初に出やすい場所です。
2016年に医学誌「アメリカ皮膚科学会雑誌」に載った、ジョンズ・ホプキンス大学のレビュー(研究のまとめ)では、きつく引っぱるポニーテール、編み込み、結び目、お団子と、牽引性脱毛症のあいだに「強い関連」があると結論づけています。同じ報告で、ゆるくて低い位置の髪型や、ふんわりしたまとめ髪は、リスクが低いとされています。また、アイロンやドライヤーの熱だけで牽引性脱毛症になるわけではないものの、熱で傷んだ髪は弱くなり、引っぱられたときに大きな脱毛につながりやすいとも述べられています。
大事なのは、早めに気づけば元に戻せる可能性が高いという点です。アメリカ医師会の皮膚科学雑誌の患者向けページでは、初期の牽引性脱毛症は瘢痕(はんこん、傷あとのような変化)を残さず、きつい髪型をやめれば髪が戻ることが多いと説明されています。逆に、長いあいだ続けてしまうと、毛根が傷あとのようになり、永久的な脱毛につながることがあります。同じページでは、牽引性脱毛症に対する承認された治療薬はないとも述べられており、だからこそ「予防と早期発見」が大切になります。
ですから、「ほどいたあとの痛み」を、頭皮からの小さなSOSとして受け止めるのがおすすめです。
「トリコディニア」という頭皮の痛みもある
「髪の毛が痛い」という感覚には、ポニーテールとは関係なく起こるものもあります。それが「トリコディニア」です。
医学レビューでは、トリコディニアを、頭皮の皮膚や髪に感じる痛みやひりひり感で、髪に触れるとさらに強まり、見た目には皮膚の病気がない状態と説明しています。抜け毛が増えているときに感じる人が多いとされ、症状としては、ひりひり、ちくちく、かゆい、焼けるような感じなどがあげられています。
きつい髪型のあとだけ痛み、時間がたてば消えるなら、これまで説明してきた牽引の痛みの可能性が高いです。いっぽう、髪型に関係なく頭皮の痛みが続く、抜け毛が増えた、頭皮が赤い、フケやかさぶたが出ているといったことがあれば、皮膚科で相談しておくと安心です。
そのほかの頭皮のトラブルも
痛みの原因が髪型以外のこともあります。
- 毛穴の炎症(毛包炎)で、触ると痛いブツブツができる
- かびの一種(真菌)による頭皮の感染症。子どもで、痛みとともに円形の脱毛があるときは受診が必要
- 皮脂や整髪料の汚れがたまり、頭皮が炎症を起こす
髪型を変えても、シャンプーを見直しても治まらない場合は、自己判断で長引かせず、皮膚科に相談しましょう。
第6章 痛くならないための対策(今日からできる9つのこと)
ここからは、痛みを予防する具体的な対策です。
対策1 まずは「ゆるめに結ぶ」
いちばん効果的で、いちばん簡単なのがこれです。頭痛の専門医も「ゆるく結ぶことがいちばん手っ取り早い解決法」と述べています。
目安は、「結んだあとに、ゴムと頭皮のあいだに指が1〜2本入る程度のゆとり」を残すことです(これは筆者の目安で、研究で定められた数値ではありません)。鏡を見たときに、おでこの生え際やこめかみの皮膚が引っぱられて持ち上がっていないか、チェックしてみてください。
対策2 結ぶ位置と分け目を変える
毎日同じ位置で結ぶと、同じ場所の毛根にずっと負担がかかります。結ぶ位置を高めと低めで日替わりにしたり、分け目を変えたりして、引っぱる場所をずらしましょう。
対策3 1〜2時間に一度、はずして休ませる
結んでいる時間が長くなるほど、頭皮の神経は疲れていきます。アメリカの医療機関では、おおよそ1時間ごとに髪をおろして、神経を休ませることがすすめられています。ゴムを少しゆるめて結び直すだけでも違います。
対策4 ほどいたあとは頭皮をやさしくほぐす
髪をおろしたら、指のはらで頭皮をそっと動かすように、マッサージをしましょう。ごしごしこすらず、指の腹で頭皮ごとゆっくり動かすのがコツです。これも、髪を結んでいる最中でもできます。
ただし、痛みが強いときは無理をせず、触れないで休ませてください。
対策5 ヘアゴムやピンを見直す
細いゴムや金属パーツ付きのゴムは、一点に力が集中しがちです。幅広で柔らかいシュシュなどのほうが、力が分散しやすいと言われています。ヘアクリップやバレッタも、重すぎないものを選びましょう。
なお、この点は、専門医の研究で効果が証明されているというより、「負担を分散させる」という考え方にもとづく工夫です。
対策6 髪をしっかり乾かし、頭皮を清潔にする
濡れた髪は重く、傷みやすい状態です。ドライヤーで根元から乾かしてから結びましょう。また、汚れや整髪料が頭皮にたまると、炎症や不快感の原因になります。トリコロジストは、頭皮を清潔に保つことが、頭皮の不快感を減らすことにつながると述べています。
対策7 睡眠をしっかりとる
睡眠不足は、痛みを感じやすくします。専門医も、前の晩にしっかり眠ることで、頭皮の敏感さが下がると述べています。髪型対策のはずが睡眠対策になりますが、大切なポイントです。
対策8 寝るときは髪をきつく結ばない
寝ているあいだは、自分で痛みを調整できません。寝返りで髪が引っぱられたり、ゴムが頭皮に食い込んだりしないよう、夜は髪をおろすか、ごく緩やかに三つ編みにする程度にしておきましょう。ヘアカーラーを毎晩巻いて寝ることも、脱毛につながるため避けたほうがよいと、アメリカ皮膚科学会は注意しています。
対策9 痛み止めはあくまで「最後の手段」
頭痛が出ることが多い人向けに、「前もって市販の痛み止めを飲んでおく」という方法を紹介する医療機関もあります。ただし、痛み止めを飲みすぎると、かえって頭痛を起こしやすくなることも知られています。専門医は、使用する頻度を週に2〜3回程度までにとどめるよう呼びかけています。
薬を使う場合は、薬剤師か医師に相談して、自分に合った使い方を確認してください。小さなお子さんの場合は、必ず医師に相談してからにしましょう。
第7章 それでも結びたい日のための「頭皮にやさしい髪型」の考え方
仕事や学校、イベントの都合で、どうしても髪をまとめなければならない日もありますよね。そんなときの工夫を紹介します。
低めのゆるいポニーテール
首の後ろあたりで、ふんわり結ぶ低めポニーテールは、頭皮への負担が小さい髪型です。前に述べたジョンズ・ホプキンス大学のレビューでも、ゆるく低い位置の髪型はリスクが低いとされています。
ゴムで結ばず、クリップでゆるくまとめる
大きめのクリップで、髪を巻き込むようにして、ふんわり留める方法です。ゴムのように根元をぎゅっとしめつけないので、頭皮が引っぱられにくくなります。
ハーフアップを「ゆるめ」にする
こめかみ付近を強く引っぱらないよう、顔まわりの髪はあえて少しゆとりを残します。
熱や薬剤のダメージを減らす
縮毛矯正やブリーチ、ヘアアイロンを頻繁に使っていると、髪が弱くなって、引っぱられたときのダメージが大きくなります。髪型の見直しとあわせて、髪を傷めないケアも心がけましょう。
髪が長い、量が多い人は「重さ」を意識する
髪が長くて重いと、頭皮にかかる負担も大きくなります。必要なら、毛先を少し整えて、髪の重さを減らすのも一つの手です。
宗教的・職業的に、髪を覆う必要がある人へ
海外では、ヒジャブ(スカーフ)をつける女性や、制服・職業上の理由できつくまとめる髪型を続ける人にも、牽引性脱毛症が起こりうるとして、皮膚科学の分野で研究が進められています。アメリカ皮膚科学会も、こうした生活習慣や文化的背景をふまえて、無理のない予防策を考える必要があると紹介しています。やむを得ない場合は、生え際に力がかかりすぎないよう、きつさを調整したり、時折ゆるめたりしましょう。
第8章 よくある疑問Q&A
- 髪を結んだあとのずきずきは、何日か続くことはありますか?
-
痛みの強さには個人差があります。ふつうは、結ぶのをやめれば数時間で引くことが多いです。ただし、毎日のようにきつく結び続けて、頭皮がずっと敏感な状態になっていると、痛みが長引くことがあります。数日たっても治まらないときは、皮膚科や頭痛外来に相談してください。
- 痛いのを我慢して結び続けたら、ハゲますか?
-
痛みがあるからといって、必ず脱毛するわけではありません。ただし、頭皮が引っぱられ続けることは、牽引性脱毛症のリスクになります。とくに、生え際が薄くなってきた、小さな赤いブツブツができた、そこだけ髪が細くなったなどの変化に気づいたら、すぐに髪型を見直しましょう。早い段階なら、元に戻る可能性が高いと言われています。
- シャンプーで頭皮が痛いのは、結んだこととは関係ありますか?
-
髪を結んだ日の夜に、とくにシャンプーで痛みを感じる場合は、頭皮が敏感になっている可能性があります。その日は、ぬるめのお湯で、爪を立てずに指の腹でやさしく洗いましょう。
- 髪を切ったほうが痛みはなくなりますか?
-
髪の重さが痛みに関係している場合は、軽くすることで楽になることもあります。ただし、必ず効果があると断言できるものではありません。
- 男性でも、髪を結ぶと痛くなりますか?
-
もちろんあります。髪の長い男性や、男性のおだんごヘア(マンバン)などでも、同じ仕組みで頭皮が痛くなることがあります。
まとめ 頭皮の痛みは「ゆるめて」というサインです
ここまでの内容を、ぎゅっとまとめておきます。
- 結んだ髪をほどいたときの頭皮の痛みは、「外部牽引性頭痛」、いわゆる「ポニーテール頭痛」として知られている現象で、気のせいではありません。
- 髪の毛そのものは痛みを感じません。痛むのは、髪が引っぱられ続けて敏感になった頭皮の神経です。ふだん痛くない刺激を痛く感じてしまう「アロディニア」が、ほどいたあとのずきずきの正体と考えられています。
- 高い位置のポニーテール、きついお団子、編み込み、エクステなど、頭皮を強く引っぱる髪型ほど、痛みやすくなります。
- 睡眠不足、ストレス、月経周期、片頭痛や緊張型頭痛を持っていることなどが、痛みやすさに関わります。
- 多くは、髪をほどけば1時間ほどで引いていく一時的な痛みです。ただし、1時間たっても治まらない、吐き気や強い光への過敏、しびれやろれつの異常をともなうときは、すぐに受診しましょう。
- 引っぱる髪型を長く続けると、牽引性脱毛症のリスクがあります。早期なら元に戻る可能性が高く、気づいた時点で髪型を見直すことが、いちばんの予防になります。
- 対策の基本は、ゆるく結ぶ、位置や分け目を変える、定期的に休ませる、睡眠を確保する、の4つです。
おしゃれは、毎日を楽しくしてくれる大切なものです。だからこそ、頭皮に我慢をさせてまで続けるのは、もったいないと思います。
髪をほどいた瞬間のずきずきは、あなたの頭皮が「今日はちょっと頑張りすぎたよ」と、そっと教えてくれているのかもしれません。今日から、ほんの少しだけ結ぶ力をゆるめて、頭皮にも休む時間をあげてみませんか。
参考文献・参照元
- Michigan Medicine, Why Your Tight Ponytail Causes a Painful Headache(ミシガン大学医療機関の解説記事)
https://michiganmedicine.org/health-lab/why-your-tight-ponytail-causes-painful-headache - Medical News Today, Headache from ponytail
https://www.medicalnewstoday.com/articles/headache-from-ponytail - AdventHealth(AHC Health E-News), Is your ponytail giving you a headache?
https://www.ahchealthenews.com/?p=109313 - AdventHealth(AHC Health E-News), Why your ponytail may be giving you a headache
https://www.ahchealthenews.com/?p=84260 - Metro Parent, The Ponytail Headache: A Very Real Pain for Kids
https://metroparent.com/parenting/health/ponytail-headaches-real-pain-kids - Sunday Riley(美容メディア), 外部牽引性頭痛と2004年の調査(Headache誌)の紹介記事
https://edit.sundayriley.com/?p=6160 - Marie Claire UK, Why Does My Hair Hurt? A Trichologist Explains
https://www.marieclaire.co.uk/beauty/hair/why-does-my-hair-hurt - Acibadem International, Why does my hair hurt? Here is what the evidence says
https://acibademinternational.com/health-library/why-does-my-hair-hurt-here-is-what-the-evidence-says/ - American Academy of Dermatology(アメリカ皮膚科学会), Hairstyles that pull can lead to hair loss
https://www.aad.org/public/diseases/hair-loss/causes/hairstyles - Johns Hopkins University, Hairstyling practices popular among African-American women increase risk of hair loss(2016年)
https://hub.jhu.edu/2016/05/05/risky-hairstyles-traction-alopecia - Practical Dermatology, Tight Ponytails, Braids Linked to Traction Alopecia(Journal of the American Academy of Dermatology掲載のレビューの紹介)
https://practicaldermatology.com/news/tight-ponytails-braids-linked-to-traction-alopecia/2458588/ - Dermatology Times, Helping Patients with Traction Alopecia: Basics, Treatment, and Prevention(2022年12月)
https://dermatologytimes.com/view/helping-patients-with-traction-alopecia-basics-treatment-and-prevention - JAMA Dermatology Patient Page, Traction Alopecia
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2804567 - Trichodynia An Update on Definition, Etiopathogenesis, Diagnosis, and Treatment(医学レビュー論文)
https://brieflands.com/articles/jssc-122659 - IntechOpen, Trichodynia (Scalp Dysesthesia)
https://www.intechopen.com/chapters/54350
ご注意
この記事は、一般的な情報の提供を目的としたものであり、医師による診断や治療に代わるものではありません。頭痛や頭皮の痛みの原因は人によって異なります。症状が続く場合や強い痛みがある場合、気になる症状がある場合は、必ず医療機関で相談してください。この記事の情報をもとに行った行動によって生じたいかなる結果についても、当ブログおよび筆者は責任を負いかねます。また、記事の内容は執筆時点(2026年10月)の情報にもとづいており、今後の研究や医療の進歩によって変わる可能性があります。

