ブルーブラックとは?ただの「紺色」じゃない。書いた文字が黒へ育つ古典インクの正体と、今買えるおすすめ6選

ブルーブラックインクのイメージ

万年筆のインク売り場で、かならずと言っていいほど見かける「ブルーブラック」。

なんとなく「黒っぽい青色のことでしょ?」と思っている方が多いのではないでしょうか。じつは私もそうでした。

ところが調べてみると、ブルーブラックはもともと色の名前ではなく、インクの「仕組み」の名前だったのです。書いた瞬間は青く、時間がたつと黒く変わり、水にも光にも強くなる。そんな、少し魔法のようなインクが「本来のブルーブラック」でした。

この記事では、ブルーブラックの意外な歴史から、「古典ブルーブラック」と呼ばれる昔ながらのインクの仕組み、2026年9月時点で日本で買える古典ブルーブラック、そして「黒に近い青色は脳に良いのか?」という疑問まで、海外の文献もあわせて、できるだけやさしい言葉でまとめました。

長い記事ですが、読み終えるころには、手帳やノートに書く一文字が少しだけ特別に感じられるはずです。

目次

はじめに、ブルーブラックのインクで字を書いたことはありますか?

「濃い青」だと思っていませんか

学生時代に使っていた万年筆のカートリッジ、会社の書類に署名したペン、あるいは履歴書の注意書きにある「黒または青のペンで記入」の一文。ブルーブラックという言葉は、意外と身近なところに潜んでいます。

多くの人にとってブルーブラックは「黒と青の中間くらいの落ち着いた色」というイメージでしょう。もちろん、今のお店に並んでいるブルーブラックの多くは、実際にそういう色の「染料インク」です。それはそれで美しく、使いやすいインクです。

でも、ブルーブラックという名前の由来をさかのぼると、まったく違う姿が見えてきます。

書いた瞬間と、数日後で文字の色が変わる

昔ながらのブルーブラック、いわゆる「古典ブルーブラック」で字を書くと、次のような変化が起こります。

  • 書いた直後は、明るめの青色
  • 数十分から数日かけて、少しずつ暗く沈んだ色へ
  • 最終的には、青みの残る黒っぽい色(グレーがかった黒)に落ち着く

つまり、インクが紙の上で「育っていく」のです。

私が初めてこの変化を知ったとき、正直「え、インクって変わるものなの?」と驚きました。日記やスケジュールを書いたページを数日後に開くと、最初の青とは違う、落ち着いた色になっている。それを見ていると、書いた時間そのものがゆっくり積み重なっていくような、不思議な感覚になります。

この記事でわかること

  • ブルーブラックが「色」ではなく「仕組み」の名前である理由
  • 1000年以上続くインクの歴史と、なぜ今も根強い人気があるのか
  • 古典ブルーブラックの仕組みと、使うときの注意点
  • 2026年9月時点で日本で手に入る古典ブルーブラック
  • 「黒に近い青」が脳や集中力に良いという話は本当なのか

それでは、インクの歴史をたどる旅から始めましょう。

ブルーブラックの歴史と、なぜブルーブラックは人気なの?

始まりは「木にできるコブ」と「鉄」だった

ブルーブラックの祖先は、ヨーロッパで「アイアンガル・インク(Iron gall ink)」と呼ばれてきたインクです。日本語では「没食子(もっしょくし)インク」や「タンニン鉄インク」とも呼ばれます。

原料はとてもシンプルです。

  • 没食子(もっしょくし)……ナラやカシの木に虫が卵を産みつけてできるコブ。渋み成分のタンニンがたっぷり含まれています
  • 鉄の塩(硫酸鉄)……昔は「緑礬(りょくばん)」と呼ばれた鉱物由来の材料
  • アラビアガムなどのとろみ成分……インクを紙にのりやすくするため
  • 水やワインなどの液体

この材料を混ぜると、最初はうっすらとした色の液体ができます。それを紙に書いて空気にふれさせると、鉄が酸化して黒っぽい色に変わり、紙の繊維にしっかり定着する。これが没食子インクの基本的な仕組みです。

1911年版のブリタニカ百科事典でも、タンニンを含む材料(アレッポ産などの没食子)と鉄の塩、そしてゴム質のとろみ成分がインクの基本材料だと紹介されています。空気にふれて酸化すると、水に溶けない青黒い成分が生まれるとも説明されています。

中世ヨーロッパの「標準インク」だった

海外の資料をひもとくと、没食子インクは驚くほど長い歴史を持っています。

アイアンガル・インクの歴史をまとめた資料によると、5世紀にカルタゴで活躍した学者マルティアヌス・カペッラの著作に、すでに没食子とゴムを混ぜた筆記用インクの記述があるそうです。そして中世の終わりごろには、没食子インクがヨーロッパの主役のインクになっていました。

アメリカ哲学協会(American Philosophical Society)のブログによると、4世紀ごろに書かれた聖書写本「シナイ写本(Codex Sinaiticus)」は、炭の黒インクではなく没食子インクで書かれた、現存する最も古い羊皮紙の写本のひとつだとされています。正しく作られた没食子インクは、青黒く、消えにくいインクだったのです。

さらに、レオナルド・ダ・ヴィンチの素描の多くや、音楽家バッハの自筆楽譜にもこの種のインクが使われていたことが知られています。中世から19世紀まで、図書館や公文書館に残る手書き資料の大部分は、没食子インクで書かれていると言っても大げさではありません。英語圏では「コモン・インク(ありふれたインク)」と呼ばれていたほどです。

「書いた瞬間は見えにくい」という弱点

ところが、没食子インクには困った点がありました。

酸化する前の液体は色がうすく、書いた直後は文字が見えにくいのです。これでは、今どこまで書いたのか、字がかすれていないかがわかりません。

そこで生まれた工夫が「書いた瞬間から色が見えるように、青い染料を足す」という方法でした。

1911年版ブリタニカによると、19世紀前半にイギリスのスティーブンス社が「スティーブンス・ライティング・フルード(Stephens’ Writing Fluid)」という名前で、最初期のブルーブラック・インクを売り出しました。硫酸鉄とタンニンの液に藍(インディゴ)などの色素を加え、書くと青く見えて、空気にふれると黒くなる。まさに私たちが知る「ブルーブラック」の誕生です。

同じころドイツでも、1855年にドレスデンの化学者クリスティアン・アウグスト・レオンハルディ教授が、没食子インクに植物由来の染料(茜の根からとれるアリザリン)を加えた「アリザリン・インク」を考案しています。書きやすく見やすい鉄インクを作ろうと、ヨーロッパ各地で改良が進んでいたことがわかります。

こうして「青(染料)」で書いて「黒(鉄)」で残る、という二段構えのインクができあがりました。ブルー(書いた直後)→ブラック(時間がたった後)。ブルーブラックという名前は、この変化そのものを表していたのです。

英国やドイツでは「公式のインク」だった

日本のブログではあまり紹介されていませんが、ブルーブラックが欧米で特別な地位にあったことを示すエピソードがあります。

イギリスには「レジストラーズ・インク(Registrar’s Ink)」という没食子系のブルーブラックがあります。英国のインクメーカー、ダイアミン社のレジストラーズ・インクは、英国で出生・死亡・婚姻の記録に使われてきた公式のインクとして販売されています。登記官や聖職者が公的な書類を書くときに、水や退色に強いことから長く使われてきたとも紹介されています。

アメリカの万年筆インクレビューサイト「Fountain Pen Pharmacist」に寄せられた解説では、このレジストラーズ・インクや、ドイツの「ウアクンデンティンテ(Urkundentinte=証書用インク)」が、かつてイギリスや旧西ドイツで、法的な効力を持つ手書き書類に使うべきインクとして定められていた、と紹介されています。

ちなみにイギリスでは2021年に婚姻の登録方法が変わり、手書きの登録簿ではなく、事前に印刷された書類に署名する形式へと移りました。ある牧師のブログでは、それまで婚姻登録簿に鉄インクのブルーブラックで記入していた思い出と、開封後はおよそ1年半以内に使い切る必要があったことがつづられています。

何百年も前から「大切な記録はこのインクで」という文化があったこと。これがブルーブラックに漂う、どこか厳かで信頼感のある雰囲気の源なのかもしれません。

日本では公文書やカルテのインクとして

日本でも、ブルーブラックは「長く残すための実用インク」として使われてきました。

プラチナ万年筆の解説によると、ブルーブラックは日光や湿気で色あせしにくく、耐水性も高いため、もともと公文書などの長期保存用インクとして売られていたそうです。万年筆が仕事道具の中心だった昭和の時代、公文書や医療現場のカルテのように長期保存が求められる用途のために開発されたインクとして紹介されています。

また、昭和34年の『公文書の書式と文例』では、公文書の文字はインキを使って丁寧に書くよう求められていたとされ、油性ボールペンが公文書に使えるようになったのは1970年代だったと言われています。それまでの「きちんとした書類」を支えていたのが、万年筆とブルーブラックだったわけです。

履歴書などに今も「黒または青のインクで」と書かれていることがあるのは、こうした時代の名残だという見方もあります。

それでもブルーブラックが愛される理由

ボールペンもパソコンも当たり前になった今、なぜブルーブラックはこれほど根強い人気があるのでしょうか。理由を整理してみます。

1. 黒ほど強すぎず、青ほど軽すぎない
真っ黒な文字は力強い一方で、少し冷たく事務的に見えることがあります。明るい青は爽やかですが、改まった場面では軽く見えることも。ブルーブラックはその中間で、落ち着きと知的な印象を両立できる色です。

2. ビジネスでもプライベートでも使える
手紙、手帳、日記、署名、仕事のメモ。場面を選ばず「きちんとして見える」ので、1本目のインクとして選ばれやすい色です。

3. 万年筆らしい濃淡が出やすい
特に古典ブルーブラックは、線の太いところと細いところで色の濃さが変わりやすく、万年筆で書いた文字に独特の味わいが生まれます。

4. 「残る」という安心感
古典ブルーブラックは、乾いたあとは水に強く、長く読める状態を保ちやすいインクです。大切な記録を残したい人にとって、この安心感は大きな魅力です。

5. 色が変わる「時間の楽しさ」
書いた文字が青から黒へ変わっていく様子は、デジタルでは味わえない体験です。「インクが育つ」のを楽しみに、あえて古典インクを選ぶ人もたくさんいます。

そもそも古典ブルーブラックとは?

ブルーブラックは「色」ではなく「機能」の名前

ここで、この記事でいちばん大事なポイントをまとめておきます。

プラチナ万年筆は、ブルーブラックとは「青みがかった黒」や「黒みがかった青」といった色合いのことではない、と説明しています。書いた当初はブルーで、年月がたつと青い染料の部分が光で薄れ、紙に定着した鉄の黒い成分が残ることでブラックになる。つまり、長く保存できる機能そのものを指す名前だというのです。

ところが時代が進み、鉄を含まない染料だけで「ブルーブラック風の色」を作ったインクもたくさん登場しました。そこで、昔ながらの鉄を含むタイプを区別するために、日本の万年筆ファンの間で生まれた呼び名が「古典ブルーブラック」、あるいは「古典インク」です。

  • 古典ブルーブラック(古典インク)……鉄とタンニン系の成分を含み、時間とともに黒く変化して定着するインク
  • 現代的なブルーブラック(染料インク)……染料の組み合わせで紺色〜青黒い色を表現したインク

同じ「ブルーブラック」という名前でも、中身はまったく別物、ということも珍しくありません。

仕組みを、できるだけやさしく解説

古典ブルーブラックの中で起こっていることを、化学の言葉をなるべく使わずに説明してみます。

ステップ1 ボトルの中では「見えない黒」が溶けている
インクの中には、鉄の成分とタンニン系の成分が溶けています。この状態では、まだ黒い色はほとんど出ていません。インクを弱い酸性にしておくことで、ボトルの中で固まらないようにしています。

ステップ2 青い染料が「今書いた文字」を見せてくれる
そのままでは書いた字が見えにくいので、青い染料が加えられています。書いた直後に見えている青は、主にこの染料の色です。

ステップ3 空気にふれると、鉄が「サビる」ように黒くなる
紙に書かれたインクが空気中の酸素にふれると、鉄の成分が変化して、タンニン系の成分と結びつき、水に溶けない黒っぽい粒になります。鉄がサビて色が変わるのと、少し似ています。

ステップ4 黒い粒が紙の繊維にしっかり入り込む
この黒い成分は紙の繊維の中に入り込んで定着します。だから、乾いたあとに水をこぼしても文字が読める状態で残りやすいのです。

ステップ5 長い時間をかけて、青が抜けて黒が残る
青い染料は光によって少しずつ薄れていきます。一方で鉄由来の黒い成分は残るので、全体として「青→青黒→黒っぽいグレー」へと変わっていきます。

つまり古典ブルーブラックは、「今」を見せる担当の青い染料と、「未来」に残す担当の鉄の成分がチームを組んだインクなのです。

古典ブルーブラックと染料ブルーブラックの違い

比べるポイント古典ブルーブラック染料のブルーブラック
主な成分鉄+タンニン系成分+青い染料染料のみ
書いた直後の色明るめの青が多い最初から完成した紺色
時間による変化青から黒っぽく変わるほとんど変わらない(光で薄れることはある)
水への強さ乾けば強い弱いものが多い
光への強さ比較的強い色あせしやすいものがある
万年筆への負担手入れが必要扱いやすい
向いている人記録を長く残したい人、色の変化を楽しみたい人気軽に楽しみたい人、いろいろな万年筆で使いたい人

古典ブルーブラックのメリット

水に強い
乾いて黒くなったあとの文字は、水にぬれても読める状態で残りやすいのが特徴です。手帳やノートにコーヒーをこぼしてしまっても、「全部にじんで読めない」という事態を避けやすくなります。

にじみや裏抜けが少ない
プラチナ万年筆の説明によると、ブルーブラックは書いた当初から滲みや紙の裏抜けが少ない性質があるとされています。薄い紙の手帳を使う人にとってはうれしいポイントです。

長期保存に向いている
何百年も前の古文書が今も読めるのは、このタイプのインクのおかげという面もあります。

書いた文字に深みが出る
濃淡が出やすく、時間とともに色が変わることで、同じページの中に「書いた日の違い」が色として残ります。

古典ブルーブラックの注意点とデメリット

魅力がたくさんある一方で、古典ブルーブラックには知っておきたい弱点もあります。ここは海外の資料で特に詳しく語られている部分です。

1. 昔の鉄インクは「紙を傷める」ことがあった
アメリカ哲学協会の解説によると、没食子インクは酸性がとても強く、pHが1〜3ほどになるものもありました。さらに鉄の成分が多すぎると紙や羊皮紙の劣化を早め、もろくしてしまうことがあります。バッハの自筆楽譜が危機にあると紹介されるのも、この「インク焼け(インク腐食)」と呼ばれる現象のためです。

ただし、これは主に中世〜19世紀の、鉄分がとても多い手作りインクの話です。現代の万年筆用古典インクは鉄分をかなり控えめにし、成分のバランスも調整されています。ドイツのペリカン社の歴史をまとめた海外サイトでも、現代の鉄インクはごく少量の鉄成分にとどめ、化学的なバランスをとるよう工夫されていると説明されています。

2. 万年筆の中で固まりやすい
空気にふれると固まる性質があるため、万年筆を長く放置すると、ペン先やインクの通り道の中で成分が固まり、書けなくなることがあります。

3. 金属パーツへの影響
酸性のインクなので、ペン先やペンの金属部品に影響が出る可能性があります。アメリカの文具店ブログ「The Gentleman Stationer」では、改良前のあるメーカーの鉄インクを使ったペン先に傷みが出た例が写真つきで紹介されていました。

4. 開封後は時間とともに性能が落ちる
ボトルを開けて空気にふれると、ボトルの中でも少しずつ酸化が進みます。英国の牧師のブログでは、登録簿用のインクは開封後およそ18か月以内に使い切る必要がある、とされていました。

5. 長い年月の間に茶色っぽくなることも
古い手紙の文字が茶色く見えることがありますが、これも鉄インクが長い年月をかけて変化した姿の一つです。

古典ブルーブラックと上手に付き合うコツ

怖がりすぎる必要はありませんが、次のポイントを押さえておくと安心です。

  • インクメーカーが推奨する万年筆で使う(例えばプラチナの古典インクならプラチナの万年筆)
  • ほかのインクと混ぜない。インクを変えるときは、ペンをしっかり水洗いしてから
  • 長期間使わないときは、インクを抜いて洗っておく
  • 毎日〜数日に一度は書く。よく使うペンに入れておくのがいちばんの予防策
  • 高価なヴィンテージ万年筆や思い入れのあるペンには、まず入れない
  • ボトルは開けたら早めに使い切る。フタはしっかり閉める

海外では、鉄インクを使ったペンの掃除として「水→薄めたお酢やクエン酸→水」の順に洗う方法が紹介されることもありますが、ペンの素材によっては傷める可能性もあります。まずは水洗いを基本にし、心配な場合はメーカーや販売店に相談するのが安全です。

今でも昔ながらの古典ブルーブラックは売ってる?日本で買える古典ブルーブラックをご紹介

大手メーカーが次々と撤退した

結論から言うと、古典ブルーブラックは今でも買えます。ただし、選択肢はかなり少なくなっています。

海外の資料を見ると、ここ十数年で多くの有名メーカーが鉄インクから手を引いたことがわかります。

  • ドイツのラミー(LAMY)のブルーブラックは、2012年ごろに鉄を含まない処方へ変更されたとされています
  • モンブランの旧ブルーブラックは2010〜2012年ごろに終了し、後継の「ミッドナイトブルー」も鉄を含む時期があったものの、2013〜2014年ごろに鉄を含まない処方に変わったと、海外の愛好家の間で記録されています

プラチナ万年筆も、大手メーカーではブルーブラックの取り扱いを終えたところが多いと説明しています。そのうえで、同社は国内で唯一、ブルーブラックを伝統的な製法で作り続けていると述べています。

手間がかかり、ペンの手入れも必要な古典インクは、「誰にでもおすすめしやすい商品」ではなくなってしまったのでしょう。だからこそ、今も作り続けているメーカーの製品は貴重です。

ここからは、2026年9月時点で日本国内の文具店や通販で手に入りやすい古典ブルーブラック(鉄を含むインク)を紹介します。価格や在庫は変わりやすいので、購入時に販売店でご確認ください。

① プラチナ万年筆 ブルーブラック(ボトル・カートリッジ)

日本で古典ブルーブラックを試すなら、まずはこれという定番です。

プラチナ万年筆の解説によると、同社のブルーブラックは伝統的な製法で作られていて、書き始めは鮮やかな青、時間の経過とともに黒く変化し、耐水性と長期保存性を持つインクです。昭和の時代から公文書やカルテ用として使われてきた歴史もあり、メーカー自身がブランドを代表するインクのひとつと位置づけています。

使ってみた人のレビューでは、書き始めは少し暗めの青で、ブルーブラックという名前の割に青みが強いこと、鉄インク特有のにおいが控えめなこと、インクの流れはやや控えめなことなどが語られています。

おすすめポイント

  • 国内メーカー品なので、文具店で見つけやすい
  • ボトルだけでなくカートリッジもあり、手軽に試せる
  • 手ごろな価格の「プレピー」などプラチナの万年筆と組み合わせれば、入門にもぴったり

こんな人に
古典ブルーブラックを初めて使う人、手帳や日記に長く残る文字を書きたい人

② プラチナ万年筆 クラシックインク(全6色)

「古典インクの仕組みで、ほかの色も楽しみたい」という人向けのシリーズです。2017年に発売されました。

カシスブラック、フォレストブラック、シトラスブラック、カーキブラック、セピアブラック、ラベンダーブラックの6色があり、それぞれ書き始めは鮮やかな色で、時間とともに黒っぽく変化していきます。メーカーの説明では、「時間の経過とともに筆跡が黒く変化する」という特徴に注目して、色の変化を楽しむためのインクとして開発されたそうです。

厳密には「ブルーブラック」ではありませんが、古典ブルーブラックと同じ仕組みを持つ兄弟のようなインクです。書いている最中から色の変化がわかりやすく、特にカシスブラックが人気だという声もあります。

こんな人に
色の変化そのものを楽しみたい人、季節や用途でインクの色を変えたい人

③ ペリカン 4001 ブルーブラック(ドイツ)

ドイツの老舗ペリカンの定番インク「4001」シリーズのブルーブラックです。

ペリカン社の英語サイトでは、4001ブルーブラックには鉄成分(アイアンガル)が含まれており、ロイヤルブルーやブリリアントブラックなど同じシリーズのほかの色よりも耐久性が高い一方、特別な成分を加えることで吸入式やカートリッジ式の万年筆で安心して使えるようにしていると説明されています。時間とともに青からグレーへと色が変わるものの、文字は読める状態で残るとのことです。

また、ペリカンの歴史をまとめた海外ブログによれば、ペリカンは1892年ごろから鉄インクを使い始めたとされ、4001の最初の処方も、書くと青く乾くと黒くなる鉄インクだったそうです。アメリカでは長らく販売されていませんでしたが、2023年に北米での販売が再開されたと報じられています。

日本では「ペリカンのブルーブラックは染料インクに変わったのでは?」と話題になったこともありますが、ロットごとに成分を調べている国内の愛好家のnote記事では、その後も古典インクとしての性質が確認されてきたことが報告されています。

おすすめポイント

  • プラチナより黒みが強く、落ち着いたグレー寄りの色合い
  • 鉄分は控えめで、古典インクの中では扱いやすい部類とされる

こんな人に
ヨーロッパらしい渋いブルーブラックが好きな人、ペリカンの万年筆を使っている人

④ ローラー&クライナー サリックス/スカビオサ(ドイツ)

ドイツのインクメーカー、ローラー&クライナー(Rohrer & Klingner)が作る鉄インクです。

  • サリックス(Salix)……ブルーブラック系の古典インク
  • スカビオサ(Scabiosa)……紫がかったグレー系の古典インク

海外でも「今買える代表的な鉄インク」として必ず名前が挙がる定番で、日本でも万年筆専門店や通販で取り扱いがあります。

こんな人に
プラチナとは違う海外らしい色味を試したい人、つけペンやガラスペンでも楽しみたい人

⑤ ダイアミン レジストラーズインク(イギリス)

先ほど歴史の章で紹介した、英国の「公式記録用インク」の流れをくむ古典ブルーブラックです。

アメリカの万年筆専門店JetPensの説明によると、書いた直後は明るい青で、乾くにつれて鉄成分が酸化し、濃い青みがかったグレーブラックに変わるとのこと。英国の販売店の説明では、平均より酸性が強いため、大切なペンには使わず、こまめに洗うよう注意書きがあります。

日本国内でも一部の万年筆専門店や通販で扱いがあります。歴史的な背景を知ったうえで使うと、書くたびに少し背筋が伸びるインクです。

こんな人に
インクの歴史や物語ごと楽しみたい人、つけペンやガラスペンで「本格的な鉄インク」を味わいたい人

⑥ KWZ アイアンガルインク(ポーランド)

ポーランドの小さなインク工房KWZが作る、色数豊富な鉄インクのシリーズです。ブルーブラック系のほかにも、グリーンやターコイズなどさまざまな色の古典インクがあり、海外の愛好家の間では「鉄インクの色の選択肢を一気に広げたブランド」として知られています。

日本では万年筆専門店や一部の通販で扱われています。流通量が多くないため、見つけたときが買いどきかもしれません。

こんな人に
古典インクにハマって、もっといろいろな色を試したくなった人

あなたに合う古典ブルーブラックの選び方

  • まずは手軽に試したい → プラチナ ブルーブラック(カートリッジ)
  • 国産万年筆で安心して使いたい → プラチナ ブルーブラック(ボトル)
  • 色の変化を思いきり楽しみたい → プラチナ クラシックインク
  • ヨーロッパらしい渋い色がいい → ペリカン 4001 ブルーブラック
  • 歴史や物語ごと味わいたい → ダイアミン レジストラーズインク
  • いろいろな色で古典インクを集めたい → ローラー&クライナー、KWZ

どのインクを選ぶ場合も、先ほど紹介した「メーカー推奨のペンで使う」「こまめに書いて、こまめに洗う」という基本はセットで覚えておいてください。

黒に近い青色って脳科学的に良いの?

「青は集中力を高める」「青いインクで書くと記憶に残る」。こんな話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。では、黒に近い青色であるブルーブラックは、脳にとって良い色なのでしょうか。

ここは誤解が生まれやすい部分なので、正直にお伝えします。

結論 「ブルーブラックだから頭が良くなる」という確かな証拠はない

2026年9月時点で私が調べた範囲では、「ブルーブラックのインクで書くと記憶力や集中力が上がる」ことを直接示した信頼できる研究は見つかりませんでした。

ただし、「青い色と心の働き」や「手で書くことと脳」については、興味深い研究がいくつかあります。順番に見ていきましょう。

青は創造性を高める? 科学誌『Science』に載った研究

2009年、カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究者メータ(Ravi Mehta)とジュー(Rui Zhu)が、科学誌『Science』に「青か赤か?」という論文を発表しました。

この研究では、赤い色は「失敗を避けよう」という気持ちを、青い色は「前に進もう」という気持ちを引き起こしやすいと考え、実験を行いました。その結果、赤は細かい作業(校正や記憶など)の成績を、青はアイデアを出す作業の成績を高めたと報告されています。

この論文は大きな話題になり、「青い部屋はアイデア出しに向いている」といった形で、今でもよく紹介されています。

ところが、追試ではうまく再現されなかった

ここからが、日本語の記事ではあまり語られない部分です。

2014年、アメリカのアパラチア州立大学の心理学者スティール(Kenneth M. Steele)が、メータとジューの実験のひとつを、同じ課題・同じ指示・同じ色で、元の研究の3倍以上の参加者を集めてやり直しました。結果は、元の論文のような色の効果は見られない、というものでした。スティールは、この色の効果が本当に存在するのか疑問が残ると結論づけています。

さらに、色と心理の研究を幅広くまとめた2015年のレビュー論文(Elliot, Frontiers in Psychology)でも、色の心理学の研究には、実験者が条件を知っていた、色の見え方を正確にコントロールしていなかった、参加者の人数が少なかった、といった方法上の課題が多いと指摘されています。

つまり、「青は創造性を高める」という話は、まだ確定した事実とは言えないのです。そして、そもそもこれらの研究は「画面の背景色」などを扱ったもので、「インクの色」を調べたものではありません。

それでも言えること① 読みやすさと目へのやさしさ

脳科学とまではいきませんが、実用的な面でブルーブラックの良さを考えることはできます。

白い紙に書く場合、文字は背景とのコントラスト(明るさの差)がしっかりあるほど読みやすくなります。ブルーブラックは黒に近い暗さを持っているので、明るい青や水色よりも読みやすく、それでいて真っ黒ほど強い印象になりません。

「長く読んでも疲れにくい気がする」「手帳のページがうるさく見えない」と感じる人が多いのは、このバランスの良さによるところが大きいのではないかと思います。これは科学的に証明された話というより、多くの書き手の実感に近いものとして受け取ってください。

それでも言えること② 大切なのは「色」より「手で書くこと」

インクの色よりも研究が進んでいるのが、「手で書くこと」そのものの効果です。

2024年、ノルウェー科学技術大学のファン・デル・ヴェール(Van der Weel)とファン・デル・メール(Van der Meer)は、学術誌『Frontiers in Psychology』に、手書きとキーボード入力の脳の働きを比べた研究を発表しました。脳波を細かく測定した結果、手書きのときのほうが、脳のさまざまな領域の結びつきがより広く見られたと報告しています。研究者は、文字の形を一つひとつ丁寧に作り、感覚を多く使うことが違いにつながっていると説明しています。

ただし、この研究についても、2025年にフランスの研究者ピネ(Pinet)とロンカン(Longcamp)が同じ学術誌に論評を寄せ、「手書きと入力の違いだけを比べていて、それぞれの条件での脳のつながりを別々に示していない」「書く速さや正確さの違いが結果に影響した可能性がある」などの注意点を挙げています。

ここから言えるのは、「手で書くことが脳に何らかの違いを生むことは示されつつあるが、それがどれほど学習に役立つかは、まだ研究の途中」ということです。

それでも言えること③ 「色が変わるインク」は振り返りのきっかけになる

最後に、これは科学的な結論ではなく、手帳や習慣づくりを大切にしている私の考えとして書かせてください。

古典ブルーブラックで書いた手帳は、ページごとに色の変化が少しずつ違います。今日書いたページはまだ青く、先週のページは落ち着いた青黒、先月のページは黒に近い。色の違いが、そのまま時間の経過を教えてくれるのです。

「この日はまだ青いな」「この予定はもう黒くなったな」と眺めることが、自然と振り返りのきっかけになります。書いたことを見返す習慣がつきやすくなるなら、それは色の脳科学というより、「行動のきっかけ」としてのインクの力と言えるかもしれません。

脳に良い魔法のインクは存在しません。でも、書くことが楽しくなるインクは存在します。そして、楽しいから続く。続くから身につく。ブルーブラックの本当の力は、そこにあるのではないかと思っています。

まとめ ブルーブラックは「時間を書き残す」インク

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。最後に、この記事の内容を振り返ります。

ブルーブラックは、もともと「色」ではなく「仕組み」の名前でした。書いた瞬間は青い染料で文字が見え、時間がたつと鉄の成分が黒く定着して、水や光に強い記録になる。そんな「青から黒へ」の変化こそが、ブルーブラックという名前の本当の意味です。

その歴史は古く、中世ヨーロッパの写本やダ・ヴィンチの素描、バッハの楽譜を支えた没食子インクにさかのぼります。19世紀にイギリスやドイツで青い色素を加える工夫が生まれ、現在のブルーブラックが完成しました。英国では出生・婚姻などの公式記録に、日本では公文書やカルテに使われ、「大切な記録を残すインク」として信頼されてきました。

一方で、鉄を含む古典ブルーブラックは、万年筆の手入れが欠かせないデリケートなインクでもあります。そのため多くの大手メーカーが撤退し、今では選択肢が限られています。それでも、プラチナのブルーブラックやクラシックインク、ペリカン4001ブルーブラック、ローラー&クライナー、ダイアミン、KWZなど、日本でも手に入る古典インクは残っています。

そして、「黒に近い青は脳に良い」という話には、確かな科学的根拠はまだありません。青と創造性の研究は追試で再現されず、手書きと脳の研究も議論の途中です。けれど、読みやすく落ち着いた色で、手で書くことが楽しくなる。その「楽しさ」が、書く習慣や振り返りを後押ししてくれることは、きっと多くの人が実感できるはずです。

今日書いた文字が、数日後にはすこし深い色になっている。そんなふうに、自分の時間がインクの色として積み重なっていくのが、古典ブルーブラックのいちばんの魅力です。

次に手帳やノートを開くときは、ぜひブルーブラックのインクで一行書いてみてください。数日後にそのページを開いたとき、きっと書いた日のことを少しだけ思い出すはずです。


参考文献・参照元

海外の文献・資料

国内の資料


ご注意

この記事は、2026年9月時点で筆者が調べた情報をもとに作成しています。インクの成分や処方、商品の仕様、販売状況、価格などは、メーカーの判断により予告なく変更される場合があります。特に古典インク(鉄を含むインク)は、同じ商品名のまま処方が変わった例が過去にもあります。

購入や使用の際は、必ず各メーカーや販売店の最新情報をご確認ください。また、古典インクは万年筆の状態や使い方によって、ペン先の傷みやインク詰まりなどのトラブルが起こる可能性があります。本記事の情報を参考にしたことによって生じた万年筆の故障、書類の劣化、その他いかなる損害についても、当ブログおよび筆者は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

ブルーブラックインクのイメージ

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この記事を書いた人

手帳が続かない・考えすぎて動けない、そんな時期を何度も経験してきました。
手帳歴20年以上、GTD・振り返り・小さな習慣を実践しながら、少しずつ自分なりの整理術を見つけてきた人間です。
「頑張りすぎない改善」をテーマに、手帳・習慣化・心理・オカルト・日常の気になることを丁寧に発信しています。

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