手帳の色分けは4色ボールペンがおすすめ!海外の研究でわかった「赤・青・緑・黒」の使い分けで予定を見落とさない手帳術

4色ボールペンと手帳のイメージ
目次

はじめに 手帳に書き込むとき、色分けしていますか?

手帳を開いたとき、こんな経験はありませんか。

「あれ、今日って何か大事な予定あったっけ?」と思いながらページを眺めて、びっしり並んだ黒い文字の中から必死に探す。気づいたら、書いてあったはずの締め切りを見落としていた。

実は私自身、手帳を1色だけで書いていた頃は、これがしょっちゅうでした。書くことはきちんと書いている。なのに、大事なことほど他の予定に埋もれてしまうのです。

そんな私の手帳を変えてくれたのが、たった1本の「4色ボールペン」でした。赤・青・緑・黒の4色で予定を書き分けるようにしてから、ページを開いた瞬間に「今日やるべきこと」がパッと目に入るようになりました。

「色分けなんて、見た目がきれいになるだけでしょ?」と思う方もいるかもしれません。ところが海外の心理学や人間工学の研究をたどってみると、色分けには「見つけやすくなる」「覚えやすくなる」といった、ちゃんとした裏付けがあることがわかってきました。一方で「色を使いすぎると逆効果になる」という研究もあり、ここにこそ「なぜ4色がちょうどいいのか」のヒントが隠れていました。

この記事では、次のような内容をお届けします。

  • 手帳を色分けする効果を、海外の論文をもとに科学的にチェック
  • 1色だけで書いた場合と比べて、何がどう違うのか
  • 色の数はなぜ「4色」がちょうどいいのか
  • 筆者が実際に使っている「赤・青・緑・黒」の色分けルール
  • 日本ではあまり紹介されていない、色と心理の意外な研究
  • 色分けを長続きさせるコツとよくある失敗

少し長い記事ですが、読み終わるころには「明日から4色ボールペンで手帳を書いてみよう」と思っていただけるはずです。それでは始めていきましょう。

第1章 手帳を色分けする効果を科学的にチェック!手帳は色分けするべき?

結論から言うと、手帳は色分けしたほうがいい、と私は考えています。その理由を、3つの研究から見ていきます。

「目立つものは覚えやすい」フォン・レストルフ効果

1933年、ドイツの心理学者ヘドヴィヒ・フォン・レストルフは、記憶に関するある実験を行いました。似たような項目が並んだリストの中に、1つだけ種類の違うものを混ぜておくと、その「浮いている1つ」がほかよりもよく思い出される、ということを示したのです。

これは今では「フォン・レストルフ効果(孤立効果)」と呼ばれています。この「目立たせ方」は意味の違いだけでなく、大きさや形、そして色を変えることでも生まれるとされています。たとえば買い物リストのうち1つだけを明るい色で目立たせておくと、その項目がいちばん記憶に残りやすい、という具合です。

教科書の大事な言葉が太字になっていたり、広告が派手な色を使っていたりするのも、この効果を利用したものと言えます。

これを手帳に当てはめると、とてもシンプルです。黒い文字がずらっと並ぶ中に、赤で書いた予定が1つだけあれば、その予定は自然と目に入り、記憶にも残りやすくなる。色分けは「大事なものを浮かび上がらせる仕組み」なのです。

色は「注意」を引きつけ、記憶を助ける

マレーシア国際イスラム大学のズルキフリ氏とムスタファル氏は、2013年に「色は記憶力を高めるのか」というテーマで、これまでの研究をまとめた論文(レビュー論文)を発表しています。

この論文の大きなポイントは、色が記憶に影響する「通り道」として「注意」に注目していることです。人の脳は、目に入る情報をすべて同じように処理しているわけではありません。まず「注意を向けたもの」が優先して処理され、それが記憶として残りやすくなります。色はこの注意を引きつける力が強いため、結果として記憶の助けになる、という考え方です。

手帳に置き換えると、「色がついている予定」は脳が優先的に拾ってくれる予定、ということになります。

色は「探す時間」を短くする

もう一つ、ぜひ知っておいていただきたいのが、アメリカの人間工学の専門誌「Human Factors」に1975年に載ったリチャード・クライスト氏の研究です。

クライスト氏は、1952年から1973年までに発表された42件の実験を集め、「色で区別すると、形や記号で区別するより探しものが速くなるのか」を数字で比べました。結果は「条件がそろえば、色はとても効果的。ただし、条件によっては逆に邪魔になることもある」というものでした。

この研究はその後も繰り返し引用され、色は「探す」作業を助ける手がかりとして特に強いと考えられるようになりました。後の研究者たちも、色分けは急ぎの作業を速くするというより、「探す」時間を短くするのに向いていると整理しています。

手帳を使う場面を思い浮かべてみてください。手帳を開くとき、私たちはたいてい「何かを探して」います。今日の大事な予定、今週の締め切り、来月の空いている日。色分けは、まさにこの「探す作業」を楽にしてくれるわけです。

第1章のまとめ

ここまでの内容をまとめると、手帳の色分けには次の3つの効果が期待できます。

  • 目立たせる効果 ほかと違う色の予定は目に入りやすく、覚えやすい
  • 注意を向ける効果 色は脳の「優先して処理する対象」になりやすい
  • 探しやすくする効果 目的の情報を見つけるまでの時間が短くなる

ただし、クライスト氏の研究にあった「条件によっては逆効果」という一言は、あとの章でとても大事になってきます。覚えておいてくださいね。

第2章 一色だけで書いた場合との比較は?

では、1色だけで書いた手帳と、色分けした手帳では具体的に何が違うのでしょうか。ここでは、実際の使い心地に近い形で比べてみます。

比較1 「全部が同じ重さ」に見えてしまう

1色だけで書いた手帳では、「絶対に遅れられない取引先との打ち合わせ」も「気が向いたら読みたい本」も、見た目上はまったく同じ重さで並びます。

先ほどのフォン・レストルフ効果の研究では、「似たものが並んだリストの中にある、違う1つ」はよく覚えられる一方で、「ばらばらなものが並んだリストの中にある1つ」は目立たない、という比較が行われていました。1色の手帳は、いわば「全部が同じ見た目」のリストです。大事なものも、そうでないものも、同じように埋もれてしまいます。

比較2 探すときの「手がかり」の数が違う

1色の手帳で「今週の仕事の予定だけ確認したい」と思ったら、1つずつ文字を読んで、仕事かどうかを判断しなければいけません。

色分けした手帳なら、「青だけ見ればいい」ので、読む前に目が勝手に絞り込んでくれます。記憶の研究には、「思い出すときの手がかり」がはっきりしているほど思い出しやすい、という考え方があります。フォン・レストルフ効果を「手がかりの効きやすさ」から説明した研究では、「色」という手がかりが1つの項目だけを指していれば思い出しやすく、全部の項目を指してしまうと効果が弱まる、と説明されています。

つまり色は、「読む前に探す範囲をせばめてくれるフィルター」の役目を果たしてくれるのです。

比較3 頭の中の「気がかり」を減らしやすい

これは色分けそのものの研究ではありませんが、手帳好きなら知っておきたい研究があります。アメリカ・フロリダ州立大学のマシカンポ氏とバウマイスター氏が2011年に発表した「Consider It Done!(もう済んだことにしよう)」という論文です。

この研究では、終わっていない目標は頭の中に残り続け、関係のない作業中にもふと浮かんできたり、別の作業の成績を下げたりすることが確かめられました。ところが、その目標について「具体的な計画」を立てさせると、こうした頭の中のもやもやが消えたのです。

手帳に予定を書くことは、まさにこの「具体的な計画を立てる」行為です。そして色分けは、計画を「種類ごとに整理された状態」にしてくれます。「赤の予定は全部把握できている」「青の仕事はここに全部ある」と一目で確認できると、「何か忘れている気がする」という不安が減り、目の前のことに集中しやすくなります。

1色の手帳にも良いところはある

公平のためにお伝えしておくと、1色だけで書く手帳にも良いところはあります。

  • ペンを持ち替えたり、色を切り替えたりする手間がない
  • 「どの色で書くか」を迷わないので、書くスピードが速い
  • 見た目がすっきりして落ち着く

実際、予定がほとんどない人や、手帳を日記として使っている人なら、1色で十分な場合もあります。

ただ、仕事とプライベートの予定が入り混じる人、やるべきことが多くて見落としが怖い人にとっては、色分けのメリットのほうがずっと大きいはずです。そして「色を切り替える手間」という1色派の最大の利点を、ほぼゼロにしてくれる道具こそが、4色ボールペンなのです。

第3章 なぜ「4色」がちょうどいいのか?

色分けに効果があるなら、「10色くらい使えばもっと効果があるのでは?」と思うかもしれません。ところが、実はそうではないのです。

人が一度に扱える情報は「だいたい4つ」

「人が一度に覚えられるのは7つくらい」という話を聞いたことがある方も多いと思います。これはアメリカの心理学者ジョージ・ミラーが1956年に紹介した「マジカルナンバー7」と呼ばれる考え方です。

ところが2001年、ミズーリ大学のネルソン・コーワン氏がこの数字を見直す論文を発表しました。コーワン氏は幅広い実験データを集めて検討し、覚えるための工夫(語呂合わせや、頭の中で繰り返すことなど)が使えない状況では、人が一度に頭の中に置いておける情報のまとまりは平均して約4つだと結論づけたのです。

この「4つ」という数字には研究者の間でも異論があり、5つ前後や7つ近くだとする研究もあります。それでも、「思っているより少ない」という点は、多くの研究者が注目しているポイントです。

色が多すぎると「ルールを思い出す」だけで疲れる

これを手帳の色分けに当てはめて考えてみましょう。

8色、10色と色を増やすと、手帳を見るたびに「オレンジって何のルールだっけ?」「水色とピンクの違いは?」と、色のルールを思い出す作業が発生します。本来は予定を把握するための色分けが、「色の意味を覚えておく」という新しい負担を生んでしまうのです。

第1章で紹介したクライスト氏の研究でも、色は「条件によっては逆効果になる」と書かれていました。色が多すぎたり、ルールがあいまいだったりすると、色は手がかりではなく「ノイズ」になってしまいます。

一方で4色なら、ルールを頭に置いておくのはとても簡単です。「赤は緊急、青は仕事、緑は自分のため、黒は基本」。この程度なら、手帳を開くたびに考えなくても、自然と体が覚えてくれます。

4色ボールペンは「色分けを続けるための道具」

もう一つ、4色ボールペンをおすすめしたい理由が「続けやすさ」です。

色分けで挫折する一番の原因は、「ペンを何本も持ち歩くのが面倒」「書くたびにペンを探すのが面倒」ということではないでしょうか。4色ボールペンなら、1本持っていれば「カチッ」と色を切り替えるだけ。手帳と一緒にペンを1本さしておけば、それだけで色分けの準備は完了です。

ちなみに、この4色ボールペンの元祖とされるのは、フランスの筆記具メーカー、ビック(BIC)が1970年に売り出した「4 Colours」というペンです。1969年に創業者マルセル・ビックのアイデアをもとに作られ、1970年4月にフランスで「4色で3フラン」という宣伝文句とともに発売されました。インクの色は黒・青・赤・緑の4色でした。

その翌年にはアメリカにも輸出されてヒットし、学生や先生、事務員、看護師などに広く使われたそうです。看護師がシフトごとに色を変えてカルテを書くのに重宝した、という話もあるほどです。

黒・青・赤・緑という4色の組み合わせは、50年以上前から「実務で使える色の組み合わせ」として世界中で使われてきた、いわば定番中の定番なのです。

第4章 筆者の色分け方法をご紹介!赤・青・緑・黒の使い分けルール

お待たせしました。ここからは、私が実際に手帳で使っている色分けルールをご紹介します。

色意味書く内容の例
赤緊急・必ずする予定締め切り、支払い日、病院の予約、動かせない約束
青お仕事の予定会議、打ち合わせ、出張、仕事のタスク
緑自分のためになることセミナー、読書、勉強、運動、趣味の時間
黒基本情報日付、時間、場所、メモ、持ち物、そのほか全般

それぞれの色について、ルールの細かいポイントと、そう決めた理由をお話しします。

赤は「緊急・必ずする予定」

赤は、「これだけは絶対に落とせない」という予定にだけ使います。

  • 提出物や申し込みの締め切り
  • 税金や公共料金などの支払い期限
  • 病院や役所の予約
  • 冠婚葬祭など、動かせない約束

ポイントは「赤は少なく」です。赤が1ページに1〜2個しかないからこそ、フォン・レストルフ効果が働いて、パッと目に飛び込んでくるのです。もしページが赤だらけになったら、それは「全部が緊急」になっているサイン。どれかを青や黒に格下げできないか、見直してみてください。

私のおすすめは、「これを忘れたら、誰かに迷惑がかかる、またはお金や信用を失う」という予定だけを赤にすることです。この基準があると、赤で書くかどうか迷わなくなります。

青は「お仕事の予定」

青は、仕事に関わる予定すべてに使います。

  • 会議や打ち合わせ
  • 出張や外出
  • 仕事上のタスクや連絡事項

仕事の予定を1色にまとめておくと、「今週はどれくらい仕事が詰まっているか」が、青の量を見るだけでわかるようになります。週のページを開いたとき、ある日だけ青がびっしり並んでいたら、「この日は忙しいから、ほかの予定は入れないでおこう」と判断できるわけです。

仕事の予定でも「絶対に遅れられない締め切り」は赤にします。つまり、赤は「種類」ではなく「重要度」を表す色、青・緑・黒は「種類」を表す色、という役割分担です。このルールにしておくと、色の意味がぶつかりません。

緑は「自分のためになること」

緑は、未来の自分への投資になる時間に使います。

  • セミナーや講座への参加
  • 読書の時間
  • 資格の勉強
  • 運動やストレッチ
  • ゆっくり休む時間

私がこの色分けでいちばん大事にしているのが、実はこの緑です。

仕事や緊急の用事は、放っておいても向こうからやってきます。でも「自分のためになること」は、自分から時間を確保しないと、いつまでたっても後回しになりがちです。

緑の予定を手帳に書き込むと、「自分のための時間」がちゃんと予定として存在するようになります。そして1週間をふり返ったとき、緑がどれくらいあったかを見れば、「今週は自分に投資できたかな」がひと目でわかります。緑がゼロの週が続いていたら、それは働きすぎのサインかもしれません。

黒は「基本情報」

黒は、そのほかすべての基本情報に使います。

  • 日付や時間
  • 場所や住所
  • 持ち物
  • ちょっとしたメモ
  • 家族や友人との予定など、赤・青・緑に当てはまらないもの

黒は「ベースの色」です。すべてを黒で書いてから、大事なところだけ色を変える、という考え方でもかまいません。黒がベースにあるからこそ、ほかの3色が浮かび上がって見えるのです。

迷ったときの判断ルール

実際に使っていると、「これは何色?」と迷う予定も出てきます。そんなときは、次の順番で判断しています。

  1. 忘れたら困る、動かせない予定か → 赤
  2. 仕事に関わる予定か → 青
  3. 自分の成長や心身のためになる予定か → 緑
  4. どれにも当てはまらない → 黒

上から順に当てはめて、最初に「はい」になった色で書きます。「仕事の研修」なら、動かせない予定ではないが仕事なので青。ただし「自分から申し込んだスキルアップのセミナー」なら緑、というように、少しくらい迷っても大丈夫です。大切なのは、完ぺきに分類することではなく、「自分の中でルールがぶれないこと」です。

終わった予定のチェックも色でできる

4色ボールペンは、予定が終わったあとのチェックにも使えます。私は、終わった予定には黒でチェックを入れ、延期になった予定には矢印を書いて、移した先の日付を書き添えるようにしています。

チェックを黒に統一しておくと、予定そのものの色(赤・青・緑)が変わらないので、あとでふり返ったときも「この週は仕事が多かった」「緑の時間が取れていた」などがわかりやすいままです。

第5章 論文や文献から見えた、色分けのちょっと意外な話

ここからは、日本の手帳術の記事ではあまり取り上げられていない、海外の研究をいくつかご紹介します。「へえ、そうなんだ」と思いながら読んでみてください。

意外な話1 赤は「細かい作業」、青は「アイデア出し」に向いている?

2009年、科学誌の最高峰の一つである「Science」に、カナダのブリティッシュコロンビア大学のラヴィ・メータ氏とルイ(ジュリエット)・ジュー氏による、色と頭の働きについての論文が載りました。

2人は、全部で600人近くが参加した6つの実験を通して、次のような結果を示しました。

  • 赤は、「失敗しないように気をつけよう」という慎重な気持ちを引き出しやすい
  • 青は、「新しいことに向かっていこう」という前向きな気持ちを引き出しやすい
  • その結果、赤は細かい注意が必要な作業で、青は創造的な作業で、成績を高めた
  • しかもこの影響は、本人が意識しないうちに起きていた

この研究を知ったとき、私は思わずうなずいてしまいました。赤で書く「締め切り」や「支払い期限」は、まさに「失敗しないように気をつける」べき予定です。赤は「うっかりミスを防ぐ色」として、ぴったりの役割を担っていたわけです。

研究者たちによると、こうした色のイメージは、日々の経験の積み重ねでできあがったものだそうです。たとえば赤は、テストの答案で間違いにつけられる色だったり、危険を知らせる色だったりします。反対に青は、空や海のように開放感や穏やかさと結びつきやすい色です。

意外な話2 でも、赤を使いすぎると「逃げ腰」になるかもしれない

一方で、赤には気をつけたい面もあります。

2007年、アメリカ・ロチェスター大学のアンドリュー・エリオット氏らは、「赤を見ると、テストなどの成績が下がる」という実験結果を発表しました。

エリオット氏らの説明はこうです。テストのように「うまくやらなければ」という場面では、赤は「失敗」や「危険」を思い起こさせるため、「失敗を避けたい」という気持ちを引き出してしまう。その結果、本来の力が出にくくなる、というのです。実験では、テストの前に赤をほんの少し見ただけでも成績が下がり、しかも本人はそのことに気づいていませんでした。

ただし、この研究には続きがあります。その後に行われた多くの研究をまとめ直したところ、「赤を見ると成績が下がる」という効果が本当に安定して起こるのかは疑わしい、という見方も出てきているのです。色と心理の研究は、まだはっきりした答えが出ていない部分も多い分野だと言えます。

それでも、手帳術の視点からは一つの教訓を引き出せます。それは「赤はここぞという時だけに使う」ということです。ページ中が赤だらけの手帳は、見るたびに「あれも失敗できない、これも失敗できない」と、なんとなく追い立てられるような気持ちになりがちです。第4章で「赤は少なく」とお伝えしたのは、目立たせるためだけでなく、手帳を開くたびに気持ちが重くならないようにするためでもあるのです。

意外な話3 「なんとなくマーカーを引く」だけでは効果が薄い

2013年、アメリカの心理学者ジョン・ダンロスキー氏らは、学生がよく使う10種類の勉強法の効果を、たくさんの研究をもとに評価した大規模なレポートを発表しました。

その結果、多くの学生が使っている「マーカーを引く」「下線を引く」「読み返す」といった方法は、「効果が低い」と評価されたのです。一方で、「自分でテストしてみる」「時間を空けてくり返す」方法は、高く評価されました。

「え、じゃあ色分けも意味がないの?」と思った方、ちょっと待ってください。ここで大切なのは、マーカーを引く方法が「なぜ」効果が低かったのか、です。

このレポートでは、どこが大事かを自分で考えて選ぶことが本来は記憶に役立つはずだ、と説明されています。ところが実際には、なんとなく色を塗るだけになりやすく、どこが大事かを考える作業が抜け落ちてしまう。それが効果の低さにつながっていると考えられているのです。

手帳の色分けに当てはめると、ここから学べることは明快です。

  • 「なんとなく気分で色を変える」のでは、あまり意味がない
  • 「この予定は緊急か?仕事か?自分のためか?」と考えて色を選ぶことに意味がある

第4章で紹介した「迷ったときの判断ルール」は、まさにこの「考えて選ぶ」ための仕組みです。書くたびに一瞬だけ予定の意味を考えることが、予定を頭に定着させる手助けになると私は考えています。

意外な話4 「いつ・どこで・何をするか」まで書くと、実行率が上がる

ニューヨーク大学などで研究してきたピーター・ゴルヴィツァー氏は、「実行意図(if-thenプランニング)」という考え方を提唱しました。「もし〇〇の状況になったら、△△をする」と、いつ・どこで・どうやって行動するかをあらかじめ決めておく方法です。

ゴルヴィツァー氏とパスカル・シーラン氏が2006年に発表した研究では、94件の実験をまとめて分析し、この「いつ・どこで・どうやって」を決めておくことが、目標の達成に中くらい以上の効果を持つことが示されました。さらに、行動を始められないという悩みにも、途中で脱線してしまうという悩みにも、同じくらいの効果があったそうです。

これを知ってから、私は緑の予定を書くときに、「読書」とだけ書くのをやめました。「20時 お風呂のあと ソファで読書30分」のように、時間と場所をセットで書くようにしたのです。緑の予定は「自分から時間を作らないと後回しになるもの」なので、実行意図の考え方との相性がとてもいいと感じています。

意外な話5 色だけに頼らない工夫も大切

最後に、見落とされがちな大切な話を一つ。

ウェブサイトやアプリのデザインの世界では、「色だけで情報を伝えないようにしましょう」という考え方が広く知られています。色の見え方には個人差があり、色の区別がつきにくい人もいるからです。

手帳は基本的に自分だけが見るものですが、家族と予定を共有したり、年齢とともに色の見え方が変わったりすることもあります。そこで私は、特に大事な赤の予定には、色に加えて「★」や「!」などの記号もつけるようにしています。色と記号の二重の目印にしておけば、どんな状況でも見落としにくくなります。

第6章 4色ボールペンで色分けを長続きさせるコツ

ここまで読んで「やってみよう」と思った方のために、色分けを長く続けるためのコツと、よくある失敗をまとめておきます。

コツ1 ルールを手帳の最初のページに書いておく

色のルールを、手帳の最初のページや、しおりの裏などに書いておきましょう。最初の数週間は迷うことがあっても、ルールがすぐに確認できれば大丈夫です。1か月もすれば、ルールを見なくても自然と色を選べるようになります。

コツ2 ペンは手帳とセットで持ち歩く

4色ボールペンを、手帳のペンホルダーやゴムバンドにさしておきましょう。「手帳を開いたら、そこにペンがある」という状態を作っておくことが、色分けを続ける一番の近道です。

コツ3 完ぺきを目指さない

「間違えて青で書いちゃった」「急いでいて黒で書いてしまった」ということは、必ずあります。そんなときは、あとから色つきの丸で囲んだり、横に小さく印をつけたりすれば十分です。色分けは、手帳を「見やすく」するための道具であって、ルールを守ること自体が目的ではありません。

コツ4 週に一度、色のバランスを眺める

週末に1週間分のページを開いて、色のバランスを眺めてみてください。

  • 赤が多すぎないか(何でも緊急扱いになっていないか)
  • 青ばかりになっていないか(働きすぎていないか)
  • 緑がちゃんとあるか(自分のための時間が取れているか)

色のバランスは、そのまま自分の生活のバランスを映し出してくれます。文字を読まなくても、色を眺めるだけで1週間をふり返れるのは、色分けならではのうれしいおまけです。

よくある失敗と対策

失敗1 色を増やしすぎる
4色ボールペンに加えて、マーカーやカラーペンもどんどん増やしてしまうパターンです。第3章でお話ししたとおり、色が増えるほどルールを覚えておく負担が大きくなります。まずは4色だけで1か月続けてみて、それでも足りないと感じたら、そこで初めて色を足すかどうか考えましょう。

失敗2 赤が多すぎる
「全部大事だから」と赤を使いすぎると、赤の特別感がなくなってしまいます。赤は1日に1〜2個まで、など自分なりの上限を決めておくのもおすすめです。

失敗3 色の意味が途中で変わる
「最初は緑を趣味にしていたけど、途中から家族の予定にも使い始めた」というように、色の意味が途中で変わると、あとでふり返ったときに混乱します。ルールを変えるなら、月の初めや手帳の切り替えのタイミングなど、区切りのいいところで変えましょう。

よくある質問

Q. 4色ボールペンは、どんなものを選べばいいですか?

A. まずは、手に持ったときに太すぎないか、色の切り替えがスムーズかを確認するのがおすすめです。手帳に書く場合は、文字が小さくなりがちなので、0.5mm以下の細めの芯を選ぶと書きやすくなります。インクが切れたときに芯だけ交換できるタイプを選ぶと、長く使えて経済的です。

Q. 4色のうち、ほかの色に変えてもいいですか?

A. もちろん大丈夫です。4色ボールペンの中には、黒・青・赤・緑以外の色の芯に入れ替えられるものもあります。大切なのは、色の数を4つ前後に抑えることと、それぞれの色の意味をはっきり決めておくことです。

Q. デジタルのカレンダーでも色分けは効果がありますか?

A. この記事で紹介した「目立つものは覚えやすい」「色は探す時間を短くする」といった研究は、紙かデジタルかに関係なく当てはまる考え方です。デジタルのカレンダーでも、カテゴリの色を4つ前後に絞ると見やすくなります。

Q. 家族の予定は何色にすればいいですか?

A. 私は、家族の予定は基本的に黒で書き、動かせない行事(学校行事や通院など)だけを赤にしています。家族の予定が多い方は、青を「仕事」、緑を「家族」とするなど、自分の生活に合わせてルールを組みかえてみてください。

まとめ 4色ボールペン1本で、手帳は「見る」だけでわかるものになる

最後に、この記事の内容をふり返ってみましょう。

手帳を色分けする効果は、研究でも裏付けられている
フォン・レストルフ効果が示すように、ほかと違う色の情報は目に入りやすく、記憶にも残りやすくなります。さらに、色は探しものの時間を短くする手がかりとして、昔から研究されてきました。

1色の手帳は「全部が同じ重さ」に見えてしまう
大事な予定もそうでない予定も同じ見た目で並ぶため、大事なものほど埋もれがちです。色分けは、読む前に目で予定を絞り込める「フィルター」の役目を果たしてくれます。

色は「4色」がちょうどいい
人が一度に頭に置いておける情報は、思っているより少ないと考えられています。色を増やしすぎると、ルールを思い出すこと自体が負担になってしまいます。4色ボールペンなら、ルールも道具もシンプルなまま、色分けを続けられます。

赤・青・緑・黒のルールで、予定の意味がひと目でわかる
赤は緊急、青は仕事、緑は自分のため、黒は基本情報。赤は「重要度」、ほかの3色は「種類」を表すと決めておくと、迷わずに使い分けられます。

色は「考えて選ぶ」から意味がある
なんとなく色を塗るだけでは効果が薄いという研究もあります。「この予定は何色か」と一瞬考えることが、予定を頭に定着させる手助けになります。そして、赤は少なめに、緑にはいつ・どこでまで書き添えると、手帳はもっと頼れる相棒になってくれます。

手帳は、書くためだけの道具ではなく、「見返して、行動するための道具」です。4色ボールペン1本で色分けを始めれば、手帳を開いた瞬間に、今日やるべきことも、自分のための時間も、パッと目に飛び込んでくるようになります。

ペンケースの中に眠っている4色ボールペンがあれば、ぜひ明日の予定から色分けを始めてみてください。1週間後、色とりどりになった手帳のページを眺めたとき、きっと自分の毎日が少しだけ見通しよく感じられるはずです。


参考文献・参照元

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  • Museum of Design in Plastics(MoDiP)「BIC 4 colour pen, part 1」(2022年)
  • Core77「An Industrial Design Classic: The Bic 4 Color Pen from 1970」
  • Laws of UX「Von Restorff Effect」
4色ボールペンと手帳のイメージ

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この記事を書いた人

手帳が続かない・考えすぎて動けない、そんな時期を何度も経験してきました。
手帳歴20年以上、GTD・振り返り・小さな習慣を実践しながら、少しずつ自分なりの整理術を見つけてきた人間です。
「頑張りすぎない改善」をテーマに、手帳・習慣化・心理・オカルト・日常の気になることを丁寧に発信しています。

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