シヴィエさん旅に…出たい…!
アマエビちゃん……いいねぇ!!
はじめに 季節も良くなった今、旅に出てみませんか?
あれほど厳しかった夏の暑さがようやく和らいで、朝晩の空気がひんやりと心地よく感じられるようになりました。
日中に外を歩いても汗だくになることが減り、「今日はもう少し先まで歩いてみようかな」と思える日が増えてきたのではないでしょうか。
空が高く見えて、風が軽くなって、木々が少しずつ色を変えはじめる。こんな季節は、旅に出るのにぴったりのタイミングです。
とはいえ、「旅行なんて、まとまった休みが取れないと無理」「遠くへ行くお金も時間もない」と感じている方も多いと思います。
でも、ここでお伝えしたいのは、旅は遠くへ行くことだけではないということです。
いつもと違う道を歩く。知らない駅で降りてみる。地図を片手に、昔の人が歩いた道をたどってみる。それだけでも、心と体には「旅」と同じような変化が起こることが、海外の研究から少しずつわかってきています。
この記事では、
- 旅が人の心や脳にどんな影響を与えるのか
- なぜ旅に出るとストレスが軽くなるのか
- 近場でも旅気分を味わうための具体的な方法
- 旅先をもっと楽しむためのポイント
- 旅に持っていきたいおすすめアイテム
について、海外の心理学や脳科学の研究も紹介しながら、できるだけわかりやすくお話ししていきます。
読み終わるころには、きっと「今週末、ちょっと出かけてみようかな」という気持ちになっているはずです。
旅が人に与える影響とは?心と脳に起こる5つの変化
「旅に出ると気持ちがリフレッシュする」というのは、多くの人が経験として知っていることです。
では、そのとき私たちの心や脳では、実際に何が起きているのでしょうか。ここでは、海外の研究を中心に、旅が人に与える代表的な5つの影響を紹介します。
1. 新しい場所を訪れるほど、人は幸せを感じやすくなる
2020年、科学誌『Nature Neuroscience』に興味深い研究が発表されました。アメリカのマイアミ大学やニューヨーク大学の研究チームが行ったもので、ニューヨークとマイアミに住む人たちのスマートフォンの位置情報を、数か月にわたって記録したのです。
研究チームが調べたのは、「その日にどれだけ多様な場所で過ごしたか」と「その日の気分」の関係でした。
結果はとてもシンプルなものでした。いつもと違う場所、いろいろな場所に足を運んだ日ほど、人はポジティブな気持ちになりやすいことがわかったのです。しかもその関係は一方通行ではなく、気分が良い日ほど、さらにいろいろな場所へ出かけやすくなるという、良い循環も見られました。
さらに脳の画像を調べたところ、記憶に関わる「海馬(かいば)」と、喜びや「ごほうび」の感覚に関わる「線条体(せんじょうたい)」というふたつの部分のつながりが強い人ほど、この効果がはっきり表れていたそうです。
もともとこの考え方は、動物の研究から生まれたものです。広くて変化のある環境で自由に動き回れるネズミは、単調なケージで育ったネズミよりも元気で、ストレスにも強いことが知られていました。それと同じことが、人間にも当てはまる可能性が示されたわけです。
ここで大切なのは、この研究が「遠くへ行くこと」ではなく、「いつもと違う場所に行くこと」に注目している点です。つまり、海外旅行でなくても、近所の知らない道を歩くだけでも、心にとっては意味のある「変化」になりうるということです。
2. 旅の幸せは「出発前」から始まっている
オランダのブレダ応用科学大学などの研究チームは、2010年に1,500人を超える大人を対象にした調査結果を発表しました。旅行に出かける人と出かけない人の幸福度を、旅の前後で比べたのです。
その結果、旅行に出かける人たちは、出かけない人たちに比べて旅に出る前の時点で、すでに幸福度が高かったことがわかりました。研究チームは、その理由を「旅を楽しみに待つ気持ち」、つまり期待感によるものだと考えています。
一方で、旅から帰ってきたあとの幸福度は、旅行に行った人も行かなかった人も、全体としてはほとんど差がありませんでした。ただし、とてもリラックスできた旅だった場合は、帰ってきてからもしばらく幸せな気分が続いていたそうです。
この研究から見えてくるのは、次のふたつのことです。
- 旅の楽しみは、計画を立てた瞬間から始まっている
- 年に一度の大旅行よりも、小さな旅を何回か予定に入れるほうが、幸せな時間が長く続くかもしれない
アメリカ・コーネル大学のトーマス・ギロビッチ教授らの研究でも、モノを買うのを待つときより、体験(旅行やコンサートなど)を待つときのほうが、人はワクワクした楽しい気持ちになりやすいことが報告されています。
手帳やカレンダーに「〇日に〇〇へ行く」と書き込むだけで、日々の気分は少し明るくなる。そう考えると、旅の計画を立てる時間そのものが、立派な旅の一部だと言えそうです。
3. 体の健康にも良い影響があるかもしれない
旅や休暇と体の健康との関係を調べた研究も、海外にはいくつかあります。
アメリカで行われた大規模な追跡調査では、心臓病のリスクが高い中年男性を9年間追いかけたところ、毎年きちんと休暇をとっていた人ほど、その期間に亡くなるリスクが低い傾向があったと報告されています(Gump & Matthews, 2000)。
また、アメリカのフラミンガムという町で長年続けられている有名な健康調査でも、休暇をとる頻度がとても少ない女性は、心臓のトラブルを起こすリスクが高い傾向が見られたという報告があります(Eaker ほか, 1992)。
もちろん、これらは「休暇をとる人ほど健康だった」という傾向を示したもので、「旅行をすれば必ず長生きできる」という意味ではありません。もともと健康で余裕のある人が休暇をとりやすい、という面もあるでしょう。
それでも、アメリカの観光学の研究者たちが過去の研究をまとめた論文(Chen & Petrick, 2013)では、旅行がストレスの軽減、気分の改善、人生への満足感などに良い影響を与えることが、さまざまな研究で繰り返し示されていると整理されています。
4. 異文化に触れると、発想が柔らかくなる
旅にはもうひとつ、少し意外な効果があります。それは「アイデアが浮かびやすくなる」ことです。
アメリカの社会心理学者ウィリアム・マドックスとアダム・ガリンスキーは、2009年の研究で、海外で暮らした経験がある人ほど、創造性を測るテストで良い成績をとる傾向があることを報告しました。ただ旅行に行ったことがあるだけでなく、現地の文化に深くなじんだ経験が大切だったといいます。
これは、自分の「当たり前」が通じない場所に身を置くことで、「物事にはいろいろなやり方がある」と頭が柔らかくなるからだと考えられています。
海外まで行かなくても、同じことは小さな旅でも起こりえます。方言が違う、お店の並び方が違う、お雑煮の味が違う。そんな「ちょっとした違い」に気づくたびに、私たちの頭の中では、凝り固まった考え方が少しずつほぐれていくのです。
5. 「新しいもの」は記憶に残りやすい
ドイツとイギリスの研究チームが2006年に発表した研究では、人の脳は「初めて見るもの」に出会うと、やる気や喜びに関わる部分が活発になり、記憶にも残りやすくなることが示されています(Bunzeck & Düzel, 2006)。
毎日同じ道を通って、同じ景色を見ていると、1週間前の通勤のことはほとんど思い出せません。でも、旅先で見た夕焼けや、初めて食べた料理の味は、何年たっても鮮明に覚えていることがあります。
旅は、人生の中に「思い出のしおり」を挟んでいくような行為なのかもしれません。
同じ1年でも、新しい体験が多かった年は、振り返ったときに「充実していた」と感じやすくなります。旅に出ることは、時間の感じ方そのものを豊かにしてくれるのです。
旅に出るとストレス発散になる!?その理由を心理学で解説
「旅に出るとスッキリする」という感覚には、ちゃんとした理由があります。ここでは、ストレス解消の仕組みを、なるべくやさしく説明していきます。
ストレスから回復するための4つの条件
ドイツの心理学者ザビーネ・ゾンネンターグらは、仕事などのストレスから人が回復するためには、次の4つの体験が大切だと提唱しています(Sonnentag & Fritz, 2007)。
- 心理的な距離をとる 仕事や悩みのことを考えない時間をつくる
- リラックスする 体と心の緊張をゆるめる
- 新しいことに挑戦する ほどよい難しさの「初めて」を楽しむ
- 自分で決める 何をするか、どう過ごすかを自分で選ぶ
これを見て、気づいた方もいるかもしれません。この4つは、旅に出ると自然にそろいやすいのです。
旅先では、いつもの職場や家事から物理的に離れられます。温泉につかったり、景色を眺めたりしてリラックスできます。知らない土地で道を探したり、初めての料理を注文したりするのは、ちょうどいい「小さな挑戦」です。そして何より、どこへ行って何を食べるかを、自分で自由に決められます。
旅がストレス解消になるのは、気分の問題だけではなく、回復に必要な条件が自然とそろう「仕組み」があるからなのです。
自然の中を歩くと、くよくよ考えるクセがやわらぐ
アメリカ・スタンフォード大学の研究チームは、2015年に、自然の多い場所を90分ほど歩いた人と、交通量の多い街中を歩いた人を比べる実験を行いました(Bratman ほか, 2015)。
すると、自然の中を歩いた人のほうが、同じ悩みをぐるぐると考え続けてしまう「反すう」が減り、そうした思考に関わる脳の部分の活動も落ち着いていたそうです。
旅先で山道や海辺、公園などを歩くことは、それだけで頭の中の「考えすぎ」をリセットする助けになってくれるかもしれません。
歩くとアイデアが湧いてくる
同じくスタンフォード大学の研究では、座っているときより歩いているときのほうが、ユニークなアイデアがたくさん浮かぶことが示されています(Oppezzo & Schwartz, 2014)。しかも、屋外でも室内のランニングマシンでも、歩くこと自体に効果があったそうです。
旅の途中で「そうだ、あれをやってみよう」と、ふと良いアイデアが浮かぶことがあります。それは偶然ではなく、歩くことで頭の働きが変わっているからなのかもしれません。
ただし、旅の効果は「長続きしない」ことも知っておこう
ここで、少しだけ現実的なお話もしておきます。
オランダの研究チームが過去の研究をまとめた分析によると、休暇中に良くなった心と体の状態は、仕事に戻ってから数週間ほどで元に戻ってしまうことが多いそうです(de Bloom ほか, 2009)。
がっかりする話に聞こえるかもしれませんが、見方を変えれば、これは大切なヒントになります。
旅の効果を長続きさせるコツは、「大きな旅をたまにする」よりも、「小さな旅をこまめにする」こと。
先ほど紹介した「旅の幸せは出発前から始まる」という研究とあわせて考えると、近場の小さな旅を、生活の中に定期的に組み込むのが、心の健康にとってはとても良い方法だと言えそうです。
旅のストレスをためないための注意点
一方で、旅そのものがストレスになってしまうこともあります。オランダの研究では、旅行中に感じたストレスが多いほど、帰ってきたあとの幸福度が下がる傾向も見られました。
旅を「ストレス解消の場」にするためには、次のようなことを意識してみてください。
- 予定を詰め込みすぎない(「行けたら行く」くらいの場所を残しておく)
- 移動に余裕をもたせる(乗り継ぎギリギリの計画は避ける)
- 「全部見なきゃ」と思わない(見逃したら、また来る理由になる)
- 疲れたら休む(カフェで1時間ぼんやりするのも立派な旅の過ごし方)
旅は「こなすもの」ではなく「味わうもの」。そう思えるだけで、旅の時間はぐっと豊かになります。
近場でも旅気分を味わう方法をご紹介!
ここからは、遠くへ行かなくても、近場で「旅気分」を味わうための具体的な方法を紹介します。
イギリスの冒険家アラステア・ハンフリーズは、「マイクロアドベンチャー(小さな冒険)」という考え方を広めたことで知られています。仕事が終わった夕方から近くの丘に登って一晩過ごし、翌朝そのまま出勤する。そんな、短くて、近くて、お金もあまりかからない冒険でも、心は十分にワクワクする、というものです。
日本ではまだあまり知られていない考え方ですが、これは忙しい私たちにぴったりの旅のスタイルです。ここでは、その考え方を参考にしながら、近場で旅気分を味わうアイデアをいくつか紹介します。
移動手段を変えてみよう
いつもは車で通り過ぎている道も、移動手段を変えるだけで、まったく違う景色に見えてきます。
各駅停車の電車に乗ってみる
特急や快速なら一瞬で通り過ぎる駅にも、それぞれの町の暮らしがあります。各駅停車でのんびり揺られながら、「次の駅で降りてみようかな」と気分で決めるのも、旅らしい楽しみ方です。
路線バスに乗ってみる
路線バスは、地元の人の生活道路を走ります。観光地では見られない、商店街や住宅地、田んぼの広がる景色など、その土地の「素顔」に出会えるのが魅力です。終点まで乗ってみて、そこから歩いて帰ってくる、という遊び方もおすすめです。
自転車で走ってみる
自転車は、車より遅く、歩くより速い、ちょうどいいスピードの乗り物です。気になるお店を見つけたらすぐに止まれますし、風や匂い、季節の移り変わりを肌で感じられます。最近は、駅や観光地でレンタサイクルを借りられるところも増えています。
とにかく歩いてみる
先ほど紹介したように、歩くことには、気分を整えたり、アイデアを生み出したりする効果が期待できます。いつも車で行くスーパーまで歩いてみるだけでも、「こんなところに神社があったんだ」「この家の庭、きれいだな」といった小さな発見があるはずです。
船に乗ってみる
近くに港がある地域なら、フェリーや渡し船に乗ってみるのも素敵です。船の上から見る陸地は、いつもとまったく違う表情をしています。短い船旅でも、「海を渡った」という感覚は、思った以上に旅情をかき立ててくれます。
史実を辿ってみよう
自分の住んでいる町や、その近くの歴史を調べてみると、見慣れた景色がまるで違って見えてきます。
昔の街道を歩いてみる
日本各地には、江戸時代以前から使われてきた街道が残っています。旅人が歩いた道、参拝客が通った道、物資を運んだ道。道しるべの石や古い宿場町の名残を探しながら歩くと、まるで時代を超えて旅をしているような気分になれます。
城下町や古い町並みを散策する
お城の周りの町は、道がわざと曲がっていたり、行き止まりになっていたりすることがあります。これは、敵が攻めてきたときにまっすぐ進めないようにするための工夫だったと言われています。そうした「町の仕掛け」を知ってから歩くと、ただの散歩が謎解きのような楽しさに変わります。
地名の由来を調べてみる
「〇〇町」「〇〇谷」といった地名には、その土地の昔の姿が隠れていることがあります。図書館や自治体のホームページで地名の由来を調べてから歩いてみると、何気ない景色に物語が見えてきます。
歴史上の人物の足跡を追いかける
好きな歴史上の人物がいるなら、その人が訪れた場所や、ゆかりのある土地を巡ってみるのもおすすめです。「この景色を、あの人も見たのかもしれない」と思うだけで、旅はぐっと味わい深くなります。
地元の資料館や郷土館に立ち寄る
大きな博物館ではなく、地元の小さな資料館や郷土館には、その土地ならではの展示がたくさんあります。入館料が無料や数百円のところも多く、意外な発見があるかもしれません。
紙の地図を使ってみよう
スマートフォンの地図アプリはとても便利ですが、あえて紙の地図を使ってみると、旅の楽しさがひと味変わります。
カナダ・マギル大学の研究チームが2020年に発表した研究では、普段からカーナビや地図アプリなどのナビに頼る人ほど、自分で道を覚える力(空間的な記憶)が弱い傾向があり、数年後の追跡調査でも、ナビを多く使っていた人ほど、その力の低下が大きかったと報告されています(Dahmani & Bohbot, 2020)。
研究に参加した人数は多くないため、はっきりと結論が出たわけではありません。ただ、「ナビに任せきりにすると、自分で道を探す力を使う機会が減る」というのは、なんとなく実感できる方も多いのではないでしょうか。
紙の地図を使うと、こんな良いことがあります。
- 目的地だけでなく、周りの地形や道のつながりが一目でわかる
- 「この先に川があるな」「こっちに行けば高台に出そう」と、自分で考えながら歩ける
- 迷うこと自体が、ちょっとした冒険になる
- 帰ってきてから、歩いた道に線を引いて「旅の記録」として残せる
観光案内所や駅でもらえる手書き風の観光マップや、書店で買える地域の地図などを手に、スマホをしまって歩いてみてください。きっと、いつもより周りの景色がよく見えるはずです。
そのほかの「近場で旅気分」アイデア
- 知らない駅で降りてみる 路線図を見て、なんとなく名前が気になった駅で降りてみる
- 朝の散歩に出かける いつもより1時間早く起きて、朝の町を歩く。人の少ない早朝の町は、まるで別の場所のよう
- 地元の銭湯や日帰り温泉に行く 湯上がりに知らない町を歩くと、それだけで旅の気分
- 純喫茶やローカルなお店に入る チェーン店ではなく、その町にしかないお店を選ぶ
- 地元の人のように過ごしてみる 観光客ではなく「その町に住んでいる人」になったつもりで、スーパーで買い物をしたり、公園で休んだりする
- 近場のホテルに泊まってみる 家から近くても、ホテルに泊まるだけで日常から切り離された時間がつくれる
大切なのは、「いつもと違う」を意識的につくることです。距離ではなく、新しさ。それが、近場旅をもっと楽しくするコツです。
旅先で楽しむポイントをご紹介!
せっかく旅に出たなら、その時間をもっと楽しみたいですよね。ここでは、旅先での楽しみ方のアイデアを紹介します。
スタンプ集めで旅に「目的」をつくる
日本は、世界的に見てもスタンプ文化がとても豊かな国です。旅先のスタンプ集めは、旅に小さな目的を与えてくれます。
駅スタンプ
多くの駅に、その土地の名所や名物をデザインしたスタンプが置かれています。改札の近くや待合室にひっそりと置かれていることが多いので、探してみてください。
道の駅スタンプ
道の駅にも、それぞれオリジナルのスタンプがあります。地域ごとに「スタンプラリー」が開かれていることもあり、全部集めると記念品がもらえる場合もあります。
御朱印(ごしゅいん)
神社やお寺でいただける御朱印は、参拝の証として書いていただくものです。墨で書かれた文字や印は、ひとつとして同じものがなく、旅の思い出をより特別なものにしてくれます。いただく際は、まず参拝を済ませるなど、マナーを大切にしましょう。
観光スタンプやスタンプラリー
観光案内所や施設、商店街などで、期間限定のスタンプラリーが行われていることもあります。旅先に着いたら、まず観光案内所をのぞいてみるのがおすすめです。
スタンプを集めることは、先ほど紹介した「新しいことに挑戦する」「自分で決める」というストレス回復の条件にもつながります。「次はあのスタンプを押しに行こう」という楽しみは、次の旅への期待感にもなります。
ご当地キーホルダーやカードで思い出を形に残す
旅の思い出を「形」として持ち帰るのも、旅の大きな楽しみです。
ご当地キーホルダー
その土地の名物や名所、キャラクターをモチーフにしたキーホルダーは、手軽に集められるお土産の定番です。かばんや鍵につけておけば、ふとした瞬間に旅の記憶がよみがえります。
マンホールカード
全国の自治体が発行しているマンホールカードは、その町のマンホールのふたのデザインと、その由来が紹介されたカードです。配布場所に行かないともらえないため、集めること自体が旅の目的になります。
ダムカード
全国のダムで配布されているダムカードも、根強い人気があります。ダムの迫力ある景色とあわせて楽しめます。
ポストカードや切符
その土地の風景が描かれたポストカードや、記念の入場券なども、かさばらない旅の記念品としておすすめです。
コーネル大学のギロビッチ教授らの研究では、人はモノよりも体験にお金を使ったほうが、長く満足感を得やすいことが示されています(Van Boven & Gilovich, 2003)。キーホルダーやカードは「モノ」ですが、それは旅という「体験」を思い出すためのスイッチでもあります。だからこそ、旅のお土産は特別な価値を持つのかもしれません。
旅先でしか味わえないグルメを楽しむ
旅の楽しみといえば、やっぱり食べものです。
ご当地グルメ
その土地で昔から食べられてきた郷土料理や、地元で愛されているご当地グルメは、ぜひ味わいたいもの。同じ料理でも、地域によって味つけや具材が違うことに気づくと、食べることがもっと楽しくなります。
地元のスーパーや市場
観光地のお店もいいですが、地元のスーパーや朝市、直売所をのぞいてみるのもおすすめです。見たことのない野菜や調味料、その地域でしか売られていないお菓子やパンなど、思わぬ発見があります。
旬の味覚
秋は、食べものがいちばんおいしい季節のひとつです。新米、きのこ、さつまいも、栗、秋の魚など、その土地の旬の味覚を探してみてください。
地元の人に聞いてみる
「このあたりで、おいしいお店はありますか?」と、お店の人や宿の人に聞いてみるのもおすすめです。ガイドブックには載っていない、地元の人だけが知っている名店に出会えるかもしれません。
旅の記録をつける
旅先での出来事を、ノートや手帳に書き留めておくのもおすすめです。
- 訪れた場所と、そのとき感じたこと
- 食べたものの味
- 出会った人との会話
- 見つけた面白い看板や景色
- スタンプやチケット、レシートを貼る
旅の記録を書くことは、旅の時間をもう一度味わうことでもあります。そして、帰ってきてからそのノートを読み返すたびに、旅の効果をちょっとずつ「おかわり」することができるのです。
先ほど、「旅の効果は数週間で元に戻りやすい」というお話をしました。旅の記録は、その効果を少しでも長持ちさせるための、心強い味方になってくれます。
五感をひらいて旅をする
最後に、旅先での楽しみ方として大切なのが、五感をひらくことです。
- 目 景色の色、建物の形、空の広さ
- 耳 方言、鳥の声、波の音、お祭りの太鼓
- 鼻 潮の香り、金木犀の香り、お店から漂う出汁の匂い
- 舌 その土地の味
- 肌 風の冷たさ、温泉の温かさ、石畳の感触
特に匂いは、記憶と強く結びついていると言われています。旅先でかいだ匂いを、何年もたってからふと思い出すことがあるのは、そのためかもしれません。
スマホで写真を撮るのも素敵ですが、ときどきはカメラをしまって、目の前の景色を「体で覚える」ことも大切にしてみてください。
旅で持ち歩きたいおすすめアイテム!
ここでは、近場の小さな旅から、少し遠くへの旅まで、持っていくと便利なアイテムを紹介します。
旅の記録用ノート(トラベラーズノートなど)
旅の思い出を書き留めるためのノートは、ぜひ1冊持っていきたいアイテムです。
なかでもおすすめなのが、トラベラーズノートです。名前のとおり「旅」をテーマにつくられたノートで、革のカバーに好きなリフィル(中身のノート)を入れて使います。スタンプを押したり、チケットを貼ったり、旅の記録を自由に書き込めるのが魅力です。使い込むほどに革の色や風合いが変わっていくので、旅を重ねるごとに「自分だけの1冊」に育っていきます。
もちろん、ふだん使っている手帳や、小さなポケットサイズのノートでも十分です。大切なのは、旅の途中で「書きたい」と思ったときに、すぐ書けることです。
スタンプ帳・御朱印帳
駅スタンプや観光スタンプを集めるなら、専用のスタンプ帳があると便利です。御朱印をいただくなら、御朱印帳も忘れずに。旅先の神社やお寺でオリジナルの御朱印帳が売られていることもあるので、それを旅のお土産にするのも素敵です。
紙の地図・ガイドブック
スマホがあれば道に迷うことはありませんが、紙の地図があると旅の楽しみ方が広がります。全体の位置関係がつかみやすく、電池切れの心配もありません。旅から帰ったあとも、歩いた道に印をつけて記念に残せます。
歩きやすい靴
旅の満足度を大きく左右するのが、靴です。たくさん歩く旅では、履き慣れたスニーカーやウォーキングシューズを選びましょう。新しい靴をおろすなら、旅の前に何度か履いて足になじませておくと安心です。
羽織りもの
秋は、昼と夜の気温差が大きい季節です。日中は暖かくても、朝晩や山の上、海辺では思った以上に冷えることがあります。薄手のカーディガンやウインドブレーカーなど、さっと羽織れるものを1枚持っておくと安心です。
モバイルバッテリー
紙の地図をおすすめしましたが、写真を撮ったり、乗り換えを調べたりと、旅先でもスマホは活躍します。充電切れに備えて、モバイルバッテリーは持っておきましょう。
小さめのバッグ(サコッシュ・ショルダーバッグ)
旅先では、財布やスマホ、ノートなどをすぐに取り出せる小さめのバッグがあると便利です。両手が空くショルダーバッグやサコッシュなら、写真を撮ったり、スタンプを押したりするのもスムーズです。
折りたたみのエコバッグ
旅先で思わずお土産を買いすぎてしまったときや、地元のスーパーで買い物をするときに役立ちます。小さくたためるものを1枚入れておきましょう。
小銭入れ
地方の小さなお店や、無人販売所、御朱印、駅スタンプの近くの自動販売機など、現金、特に小銭が必要になる場面は意外と多いものです。キャッシュレス決済が使えない場所もあるので、小銭を少し用意しておくと安心です。
マイボトル(水筒)
たくさん歩く旅では、こまめな水分補給が大切です。秋は涼しくて喉の渇きに気づきにくいので、意識して飲むようにしましょう。マイボトルがあれば、旅先のカフェでお茶を入れてもらえることもあります。
絆創膏や常備薬
靴ずれ用の絆創膏や、ふだん飲んでいる薬などは、小さなポーチにまとめて持っておくと安心です。
アイテム一覧
| アイテム | あると便利な理由 |
|---|---|
| 旅の記録用ノート | 思い出を書き留めて、旅の効果を長持ちさせる |
| スタンプ帳・御朱印帳 | 旅に「目的」と「楽しみ」をつくる |
| 紙の地図・ガイドブック | 全体の位置関係がわかり、自分で考えて歩ける |
| 歩きやすい靴 | 旅の満足度を左右する大切な相棒 |
| 羽織りもの | 秋の朝晩の冷え込みに対応できる |
| モバイルバッテリー | 写真や調べものでスマホの充電切れを防ぐ |
| 小さめのバッグ | 両手が空いて身軽に動ける |
| 折りたたみエコバッグ | お土産や買い物が増えても安心 |
| 小銭入れ | 現金のみのお店やスタンプ巡りで役立つ |
| マイボトル | こまめな水分補給に |
| 絆創膏・常備薬 | ちょっとしたトラブルに備える |
荷物は「少なすぎず、多すぎず」が理想です。身軽なほうが、気になる道にふらりと入っていけます。
まとめ さあ、旅に出よう!小さな一歩が心を軽くする
ここまで、旅が人に与える影響や、近場でも旅を楽しむ方法について紹介してきました。最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。
旅が人に与える影響
- いつもと違う場所に足を運んだ日ほど、人はポジティブな気持ちになりやすい
- 旅の幸せは「出発前の期待感」から始まっている
- 休暇をとることは、体の健康とも関わっている可能性がある
- 異文化や新しいものに触れると、発想が柔らかくなり、記憶にも残りやすい
旅がストレス発散になる理由
- 旅には「心理的な距離」「リラックス」「新しい挑戦」「自分で決める」という、ストレスから回復するための条件が自然にそろっている
- 自然の中を歩くと、くよくよ考えるクセがやわらぐ
- 旅の効果は長続きしにくいからこそ、小さな旅をこまめにするのがおすすめ
近場でも旅気分を味わう方法
- 移動手段を変えてみる(各駅停車、路線バス、自転車、徒歩、船)
- 史実を辿ってみる(街道、城下町、地名の由来、歴史上の人物の足跡)
- 紙の地図を使って、自分で考えながら歩いてみる
旅先で楽しむポイント
- スタンプ集めで旅に目的をつくる
- キーホルダーやカードで思い出を形に残す
- その土地でしか味わえないグルメを楽しむ
- 旅の記録をつけて、思い出を何度も味わう
旅というと、どうしても「遠くへ行くこと」「お金と時間をかけること」を想像してしまいがちです。
でも、海外の研究が教えてくれるのは、大切なのは距離ではなく「新しさ」だということでした。
知らない道を一本曲がってみる。いつもと違う駅で降りてみる。紙の地図を広げて、昔の人が歩いた道をたどってみる。そんな小さな一歩でも、私たちの心と脳は、ちゃんと「旅をした」と感じてくれるのです。
そして、旅の楽しみは、計画を立てた瞬間から始まります。
まずは手帳やカレンダーを開いて、今週末か来週末のどこかに「小さな旅」の予定を書き込んでみませんか。行き先は、まだ決まっていなくても大丈夫です。「どこへ行こうかな」と考えるその時間こそが、もう旅の始まりなのですから。
外を歩くのが気持ちいい、この季節。
さあ、旅に出よう。
参考文献・参照元
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