なぜ高性能チップの中身は金なの?スマホ・PCに隠された「都市鉱山」の正体

パソコンやスマートフォンを分解したことがある人なら、基板の一部が金色に光っているのを見たことがあるかもしれません。あれは単なる装飾ではありません。実際に、本物の金が使われています。

「え、そんな高そうな金属をわざわざ電子機器に使うの?」と驚く人も多いのですが、実はこれにはちゃんとした理由があります。今回は、高性能チップの中に金が使われている理由から、ノートパソコンやスマホに実際どれくらいの金が入っているのか、そして最近話題の「都市鉱山」の真実まで、海外の調査データも交えながらじっくり解説していきます。

読み終わったころには、身近な電子機器を見る目がちょっと変わるはずです。

目次

なぜ高性能チップは金を使っているの?

まず大前提として、パソコンやスマートフォンの心臓部であるCPUやメモリチップの内部には、非常に細い配線がぎっしり詰まっています。この配線を通って電気信号がやり取りされることで、私たちが普段使っている計算や通信が成立しています。

このとき配線の材料として求められる条件は、大きく3つあります。

1つ目は、電気を通しやすいこと。信号のやり取りが遅かったり不安定だったりすると、チップの性能そのものが落ちてしまいます。

2つ目は、錆びたり変質したりしないこと。チップの内部は非常に細い金属の線でつながっているため、わずかな腐食でも断線や接触不良の原因になります。

3つ目は、加工のしやすさです。人間の髪の毛よりもさらに細いワイヤーに引き延ばせる柔らかさと粘り強さが必要になります。

金は、この3つの条件をすべて満たす数少ない金属のひとつです。空気中の酸素や水分と反応しにくく、何十年経ってもほとんど変質しません。しかも非常に柔らかく伸びやすいため、極細のワイヤーに加工しやすいという特徴も持っています。実際、チップの半導体部分と外側の端子をつなぐ「ワイヤーボンディング」という工程では、直径が数十マイクロメートルという極細の金線がよく使われています。

つまり金は、単に「高級だから」使われているわけではなく、電子機器の信頼性を長期間支えるために欠かせない機能材料として選ばれているのです。

金以外じゃダメなの?他の金属だとどうなる?

ここで気になるのが、「銅や銀でも代用できないの?」という点です。実際、電子機器の中で使われている金属の量として一番多いのは銅です。銅は金よりもはるかに安く、電気もよく通すため、パソコンやスマホの配線の大部分には銅が使われています。

ただし銅には弱点があります。空気に触れると徐々に酸化して表面が変質してしまい、時間が経つと電気の通りが悪くなることがあります。屋外のケーブルなどであれば問題になりにくいのですが、チップ内部のように極めて微細な接点では、わずかな酸化でも致命的な不具合につながりかねません。

銀は金よりもさらに電気を通しやすい金属ですが、こちらも空気中の硫化物と反応して黒く変色しやすいという性質があります。見た目の変化だけでなく、変色した部分は電気の通りが悪くなるため、長期間の信頼性が求められる部品には不向きな面があります。

一方、金は化学的にとても安定していて、酸にもほとんど溶けず、酸化もしにくいという性質を持っています。多少コストがかかっても、「一度組み込んだら数年、数十年単位で壊れずに動き続けてほしい」という電子機器の要求に、金の安定性がぴったり合っているわけです。

そのため実際の製品では、配線全体を金に置き換えるのではなく、コストの高い金は本当に信頼性が必要な部分、例えばチップの接続端子やコネクター、基板の重要な接点などに限定して使い、それ以外の部分には銅を使うという「使い分け」が行われています。金と銅、それぞれの得意分野を組み合わせることで、コストと性能のバランスを取っているのです。

ノートパソコン1台には何グラムの金が使われてる?

具体的な数字を見てみましょう。

海外の貴金属関連企業の調査によると、一般的なデスクトップパソコンのマザーボードには、およそ0.1グラムから0.2グラム程度の金が含まれているとされています。さらに、高い信頼性が求められるサーバー用のマザーボードになると、1グラム近くの金が使われているケースもあると報告されています。これは、サーバー機器がより多くの接点や、より高い耐久性を必要とすることの表れといえるでしょう。

ノートパソコンについては、デスクトップよりも基板が小型化されている分、含まれる金の量はやや少なめになる傾向がありますが、CPUやメモリ、コネクター部分にはやはり金メッキが施されています。

「たった0.1グラム程度なら大した量ではないのでは」と思うかもしれませんが、これが世界中で毎年何億台も作られるパソコンの数を考えると、決して無視できる量ではなくなってきます。

スマートフォンだと何グラム?

スマートフォンの場合、パソコンよりもさらに小型な基板になるため、含まれる金の量もぐっと少なくなります。海外の調査機関やAPMEXなどの貴金属関連メディアの報告によると、一般的なスマートフォン1台に含まれる金の量は、およそ0.007グラムから0.034グラム程度とされています。

これはグラム単位で見ると本当にごくわずかな量で、現在の金価格で換算しても1台あたり数十円から数百円程度の価値にしかなりません。金は主にスマートフォンの基板(マザーボード)や、SIMカードの接点部分、内部の細かいコネクターなどに使われています。

しかし、ここで重要なのは「1台あたりの量」ではなく「全体の量」です。世界では毎年10億台を超えるスマートフォンが生産されているとされ、これを積み上げると、スマートフォンの製造だけで年間およそ7トン前後の金が使われているという推計もあります。1台あたりはコイン1枚にもならないほどの量でも、世界中の台数をかけ合わせると、立派な資源として扱われるレベルになるわけです。

都市鉱山って本当にあるの?

「都市鉱山」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、街の中で使われずに眠っている電子機器や、廃棄された家電製品を、金や銀などの金属が眠る「鉱山」として見立てる考え方です。

これは決して大げさな比喩ではありません。世界経済フォーラム(World Economic Forum)が紹介しているデータによると、廃棄されたスマートフォン1トンに含まれる金の量は、天然の金鉱石1トンに含まれる金の量の、およそ100倍にもなるとされています。天然の金鉱石は、1トンあたりわずか数グラム程度しか金を含んでいないことが多いのに対し、廃棄されたスマートフォンをまとめて処理すると、それよりもずっと高い濃度で金を回収できるということです。

国連環境計画(UNEP)の関連データを紹介する国連開発計画(UNDP)のブログでも、世界に存在する金のうち、すでに7パーセントほどが使われなくなった電子機器の中に眠っている可能性があると指摘されています。また、別の研究では、世界の電子廃棄物全体に含まれる金の量は6800トン、銀は6万トンにものぼり、これは世界の既知の金・銀の埋蔵量のそれぞれ16パーセント、22パーセントに相当するという推計も示されています。

日本でも、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて行われた「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」は、この都市鉱山の考え方を国全体で実践した好例として海外でも紹介されました。国内で不要になった携帯電話やパソコンなどの小型電子機器を全国から集め、そこから抽出した金・銀・銅で、実際に大会のメダルが製作されたのです。

つまり都市鉱山は決して都市伝説ではなく、国際機関のデータや実際の国家プロジェクトによって裏付けられた、現実の資源戦略なのです。ただし現状では、世界で発生する電子廃棄物のうち、正式にリサイクルされているのは2割前後にとどまっているとも報告されており、まだ多くの「金の山」が活用されずに眠っているのが実情です。

金はやっぱり高い!その理由も解説

ここまで見てきたように、金はチップにとって欠かせない材料ですが、そもそも金はなぜこんなに高価なのでしょうか。

一番の理由は、圧倒的な希少性です。金は地球上にほとんど存在せず、しかも新たに掘り出すには膨大なコストと時間がかかります。世界の金鉱山会社協議会(World Gold Council)などのデータをもとにした報道によれば、世界の金の年間鉱山生産量はおよそ3000トン前後で、この生産量は近年ほとんど増えていないとされています。需要が伸び続けているのに、供給がなかなか増えないという状態が続いているわけです。

さらに近年は、各国の中央銀行が金の保有量を大きく増やしていることも、価格を押し上げる要因になっています。海外メディアの報道によると、2023年から2025年にかけて、世界の中央銀行は3年連続で年間1000トンを超える金を購入したとされ、これは記録が残る1950年代以降で最も高い水準だといわれています。中央銀行がこれほど金を買い続けている理由としては、特定の国の通貨や政策に依存しすぎない、安定した資産を保有しておきたいという狙いが指摘されています。

加えて、世界的な物価上昇(インフレ)への警戒感や、地政学的な緊張、通貨の先行き不安なども、「何かあったときに価値が失われにくい資産」として金に資金が向かう要因になっています。実際、2026年に入ってから金の価格は歴史的な高値を更新し続けており、大手金融機関のあいだでも、今後さらに価格が上昇するという見通しを示すところが多くなっています。

つまり金の値段は、単に「見た目が美しいから」高いわけではなく、限られた供給量と、世界中からの根強い需要という、経済の基本的な力学によって支えられているのです。

他に金が使われているものって身近にあるの?

金が使われているのは、実はパソコンやスマホだけではありません。私たちの生活のあちこちに、意外な形で金が使われています。

まず身近なのが歯科医療です。金は人体になじみやすく、金属アレルギーを起こしにくいという特徴があるため、かぶせ物や詰め物などの歯科材料として古くから使われてきました。耐久性が高く、噛む力にもしっかり耐えられることから、今でも選ばれる材料の一つになっています。

宇宙開発の分野でも金は大活躍しています。人工衛星や探査機、宇宙飛行士のヘルメットのバイザーなどには、極めて薄い金の膜がコーティングされていることがあります。金は太陽からの熱や有害な放射線を効率よく反射する性質を持っており、宇宙という過酷な環境で機器や人体を守るために利用されているのです。真空という特殊な環境でも変質しにくいという安定性も、宇宙用途にぴったりの特徴といえます。

さらに近年注目されているのが、医療分野での新しい活用法です。金の粒子をナノメートル単位まで極小化した「金ナノ粒子」を使い、がん治療に役立てる研究が世界中で進められています。学術誌に掲載された研究では、金ナノ粒子に特定の光を当てることで局所的に熱を発生させ、周囲の正常な細胞を傷つけずにがん細胞だけを狙って攻撃する「光熱療法」という治療法の研究が報告されています。金は体内で悪影響を起こしにくい性質を持つため、こうした先端医療の分野でも重要な材料として期待されているのです。

このように、金は装飾品としての価値だけでなく、電子機器、医療、宇宙開発といった最先端の分野を支える、非常に実用的な機能性材料でもあるのです。

まとめ 金の需要と供給量のバランス、身近なものにも金は使われていました

今回の内容を振り返ってみましょう。

高性能チップに金が使われているのは、電気を通しやすく、錆びにくく、極細のワイヤーに加工しやすいという、他の金属にはない優れた性質を持っているからでした。ノートパソコンには0.1グラム前後、スマートフォンには0.01グラムから0.03グラム程度と、1台あたりの量はごくわずかですが、世界中で作られる台数を合わせると、決して小さくない資源量になります。

そして、廃棄された電子機器の中には、天然の金鉱石よりもはるかに濃い濃度で金が含まれているという「都市鉱山」の存在は、国際機関のデータによって裏付けられた確かな事実でした。世界的な金価格の上昇も、限られた供給量と根強い需要という、経済の基本的な仕組みに支えられているものです。

普段何気なく使っているパソコンやスマホの中に、実は貴重な金属資源が詰め込まれている。そう考えると、古い電子機器をただ捨ててしまうのではなく、リサイクルに出すという選択の意味も、少し違って見えてくるのではないでしょうか。

身近なものにも金は使われていました。次に古いスマホやパソコンを整理するときは、ぜひ「都市鉱山」のことを思い出してみてください。

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この記事を書いた人

手帳が続かない・考えすぎて動けない、そんな時期を何度も経験してきました。
手帳歴20年以上、GTD・振り返り・小さな習慣を実践しながら、少しずつ自分なりの整理術を見つけてきた人間です。
「頑張りすぎない改善」をテーマに、手帳・習慣化・心理・オカルト・日常の気になることを丁寧に発信しています。

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