レアアースとは?産出国・輸出入状況・日本の採取最新動向を徹底解説【2026年版】

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スマートフォン、電気自動車、風力発電。私たちの生活を支える最先端技術の裏側には、必ずと言っていいほど「レアアース」という特別な金属が使われています。しかし、このレアアースを巡って、今、世界では大きな変化が起きています。

本記事では、レアアースとは何か、という基礎知識から、現在の世界の採掘状況、輸出入の実態、そして日本が進める画期的な採掘プロジェクトまで、2026年最新の情報を分かりやすく解説します。

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レアアースとは何か?基礎知識をわかりやすく解説

レアアースの定義と17種類の元素

レアアース(希土類)とは、化学の周期表に登場する17種類の元素の総称です。具体的には、スカンジウム、イットリウム、そしてランタンからルテチウムまでのランタノイドと呼ばれる15元素を指します。

「レア」という名前から誤解されがちですが、実は地球上に大量に存在しています。問題は、工業製品に使えるほど高い濃度で集まっている場所が限られていることです。また、採掘した後に使える形に加工する技術が非常に高度で、特定の国に集中しているという点が大きな課題となっています。

レアアースとレアメタルの違い

「レアアース」と「レアメタル」という言葉は混同されがちですが、実は明確な違いがあります。

レアメタルは、存在量が少ない、あるいは技術的・経済的な理由で取り出すことが難しい金属のうち、工業需要があって安定供給が重要とされる34種類の金属を指します。そして、レアアースはこのレアメタルの一種、つまり34種類のうちの1グループということになります。

簡単に言えば、レアメタルという大きなカテゴリーの中に、レアアースという特別なグループが含まれているという関係です。

軽希土類と重希土類の違い

レアアースは、さらに「軽希土類」と「重希土類」の2つに分類されます。

軽希土類には、ネオジム、プラセオジム、セリウム、ランタンなどが含まれます。これらは比較的多く産出され、磁石や触媒、ガラス研磨材などに使われています。

一方、重希土類には、ジスプロシウム、テルビウム、イットリウムなどがあり、こちらは採掘量が少なく、より希少性が高いとされています。重希土類は、高性能磁石の耐熱性を向上させるなど、先端技術に欠かせない存在です。特に中国南部のイオン吸着型鉱床には、重希土類が約5割も含まれる非常に貴重な鉱床が存在しています。

レアアースは何に使われているのか?

永久磁石(ネオジム磁石)

レアアースの最も重要な用途の一つが永久磁石、特にネオジム磁石です。この磁石は、電気自動車のモーター、ハイブリッド車のモーター、風力発電のタービン、産業用ロボットなどに使われています。

ネオジム磁石は、従来の磁石と比べて圧倒的に強力で、しかも小型化できるため、現代の先端技術には欠かせない存在となっています。電気自動車が1台あたり約1kgのネオジムを必要とするなど、今後の脱炭素社会の実現に向けて需要は急速に拡大しています。

電子機器とディスプレイ

スマートフォン、パソコン、テレビなどに使われる液晶ディスプレイや有機ELディスプレイには、イットリウムやユウロピウムなどのレアアースが使われています。特に蛍光体として、画面を美しく明るく表示するために重要な役割を果たしています。

触媒と環境技術

自動車の排ガスを浄化する触媒には、セリウムやランタンが使われています。また、石油精製のFCC触媒(流動接触分解触媒)にもレアアースが使用され、石油製品の生産効率を高める役割を担っています。

その他の用途

レアアースは他にも様々な分野で活躍しています。ガラス研磨材、レンズの研磨、ニッケル水素電池、セラミックコンデンサー、LED照明、医療機器(MRI)など、私たちの生活を支える多くの製品に使われているのです。

このように、レアアースは「産業のビタミン」や「ハイテク業界のビタミン剤」と呼ばれ、少量を添加するだけで製品の性能を飛躍的に向上させる特性を持っています。

世界のレアアース産出国と採掘状況

中国が圧倒的なシェアを持つ理由

2024年のデータによると、世界のレアアース鉱石生産量の約70%を中国が占めています。2023年には世界生産量が350千トンREOに達し、そのうち中国が約240千トンREOを生産しました。

中国がこれほど大きなシェアを持つ理由は、大きく2つあります。

第一に、中国には取り出しやすいレアアース鉱石が豊富に存在していることです。特に中国南部には、イオン吸着型という採掘しやすいタイプの鉱床があり、しかも重希土類を多く含んでいます。

第二に、レアアースの精製過程では有害な化学薬品を使用しますが、中国では環境規制が比較的緩やかだったため、低コストで生産できたという背景があります。ただし、近年は中国でも環境規制が厳しくなりつつあります。

精製技術における中国の独占

さらに深刻な問題は、採掘以上に精製・製錬における中国の圧倒的な優位性です。IEAのデータによると、2024年時点で世界のレアアース精製シェアの約91%を中国が占めています。

つまり、仮に他国で鉱石を採掘できたとしても、それを製品に使える形に加工するには中国の技術に頼らざるを得ない状況なのです。この構造が、レアアースのサプライチェーン問題を一層複雑にしています。

中国以外の主要産出国

中国の独占状態を打破するため、世界各国が新たな採掘地の開発を進めています。

アメリカでは、カリフォルニア州のマウンテンパス鉱山でMP Materials社が採掘を行っており、2023年には約43千トンREOを生産しました。国防総省が同社に約588億円を出資し、筆頭株主として支援を強化しています。

オーストラリアでは、ライナス社がマウントウェルド鉱山を運営しています。日本政府も同社に出資し、マレーシアの精製工場を通じて日本向けのレアアース供給契約を結んでいます。

ミャンマーは、重希土類の重要な供給源となっています。2023年には中国向けに約7.2万トンの酸化物を輸出しましたが、政情不安や鉱山事故などのリスクも抱えています。

その他、ベトナム、インド、ロシア、ブラジルなどでも採掘が行われていますが、規模はまだ限定的です。

レアアースの輸出入状況と地政学リスク

中国による輸出規制の動き

2025年、レアアースを巡る国際情勢は大きく変化しました。中国は4月に、軍用品への転用防止と国家安全保障を理由に、7種類のレアアースについて輸出管理を厳格化しました。

さらに10月には、中国産レアアースを0.1%以上含む製品について、外国企業であっても中国政府の許可を求めることや、レアアースの精製・リサイクル技術の輸出に許可を義務付ける規制を打ち出しました。この措置は米国との合意により1年間延期されましたが、中国がレアアースを戦略的な武器として使う姿勢を明確にしています。

日本の輸入依存状況

日本は現在、レアアース需要の60%以上を中国に依存しています。さらに深刻なのは、産業や軍事にとってより重要な中・重希土類については、90%以上が中国由来となっている点です。

2010年には尖閣諸島問題を契機に中国によるレアアース輸出制限が行われ、「レアアース・ショック」と呼ばれる事態が発生しました。この経験から、日本政府と企業は調達先の多様化を急速に進めています。

世界各国の対応策

G7諸国は「クリティカルミネラル行動計画」を策定し、加盟国間で重要鉱物のサプライチェーンを協調的に強化する方針を打ち出しました。具体的には、代替材料の研究開発、製品設計の見直し、リサイクル技術の国際協力などを進めています。

アメリカは国防総省が主導して、国内のレアアース企業への投資を拡大しています。欧州連合も、フランスのCaremag社の精製事業に資金を提供し、域内での供給体制構築を目指しています。

日本でのレアアース採取状況と最新動向

南鳥島レアアース泥の発見

日本にとって画期的な発見が、2013年に東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームによってなされました。小笠原諸島の南鳥島(日本最東端の島)周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、大量の「レアアース泥」が存在することが確認されたのです。

この海底には、世界の年間需要の数百年分に相当する膨大な量のレアアースが眠っていると推定されています。しかも、一部地域では陸上鉱床を超える世界最高クラスの濃度(品位)を持つことも判明しました。

さらに2016年には、同じ海域でコバルトやニッケルなどを含む「マンガンノジュール」の密集域も発見されました。2024年6月の調査では、1万平方キロメートル以上という広大なエリアにマンガンノジュールが連続的に分布していることが確認されています。

2026年1月からの試験掘削

そして2026年1月、いよいよ南鳥島周辺海域で本格的な試験掘削が開始されました。探査船「ちきゅう」を使用し、水深約5,500メートルから6,000メートルの超深海からレアアース泥を引き上げる世界初の試みです。

この試験では、1日あたり数十トン規模でレアアース泥を回収する技術の検証が行われています。成功すれば、2027年には1日最大350トン規模での回収システムの試験へとスケールアップし、2028年度以降に商業化へ移行する計画となっています。

技術的な課題と解決への取り組み

超深海からのレアアース採掘には、いくつもの技術的なハードルがあります。

第一に、5,500メートルという超深海の高圧環境に耐える堅牢な採掘機器の開発が必要です。第二に、研磨性の高い海底泥を海面まで送り上げる技術の確立が求められます。第三に、機器の耐久性と安全性の確保も大きな課題です。

政府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では、2014年以降継続的に探査活動を行い、これらの技術課題の解決に取り組んでいます。内閣府は「海洋開発等重点戦略」の中で、レアアースの国産化によりサプライチェーンの強靱化を図ることを明記しています。

環境への配慮

海底資源の開発にあたっては、海洋環境への影響を最小限に抑えることが国際的に求められています。日本のプロジェクトでは、環境影響調査を並行して実施し、持続可能な資源開発を目指しています。

深海生態系への影響評価、採掘後の海底環境の回復状況のモニタリングなど、環境面での透明性と責任ある姿勢が、国際的な信頼を得る上で重要な要素となっています。

経済安全保障上の意義

南鳥島レアアース開発は、日本の経済安全保障にとって極めて重要なプロジェクトです。成功すれば、中国への依存度を大幅に低減し、安定的な国内供給源を確保することができます。

ただし、一部では中国による妨害の懸念も指摘されています。2025年6月には、中国海軍の空母「遼寧」が南鳥島の排他的経済水域内に入る事案が発生し、レアアース探査活動をけん制する意図があったのではないかとの見方もあります。

レアアースはリサイクルできるのか?

都市鉱山という考え方

新たな鉱山を開発するだけでなく、すでに製品の中に使われているレアアースを回収して再利用する「都市鉱山」の活用も重要な取り組みです。

日本国内には、使用済みの携帯電話、パソコン、エアコン、電気自動車などに含まれるレアアースが大量に蓄積されています。物質・材料研究機構の推計によると、日本の都市鉱山の埋蔵量は世界トップレベルの規模に達しているとされています。

リサイクル技術の現状

日本では、2010年の中国によるレアアース輸出規制をきっかけに、リサイクルへの取り組みが本格化しました。

日本原子力研究開発機構とアサカ理研が開発した「エマルションフロー法」は、光学ガラス廃材や低品位レアアース原料から、純度99.999%(ファイブナイン)という極めて高純度でレアアースを分離・精製することに成功しています。この技術は、従来法と比べてコストを5分の1以下に抑え、処理速度を10倍以上に向上させることができます。

DOWAホールディングスは、使用済み家電製品に含まれるレアアース磁石のリサイクル技術を開発しました。乾式処理と湿式処理を組み合わせた独自の工程により、事前の脱磁処理が不要で、レアアース磁石を含むモーターのローターをそのまま処理できるという画期的な技術です。

リサイクルの課題

技術的には高度なリサイクルが可能になってきていますが、現状ではリサイクルされているレアアースの量は輸入量の数パーセント程度にとどまっています。

その主な理由は、レアアースを含む製品が比較的長期間使用されるため回収までに時間がかかること、回収・分別・精製のコストが高く経済性が合わないケースが多いこと、回収システムの整備が不十分なことなどが挙げられます。

今後、リサイクル技術のさらなる進化とコスト低減、そして効率的な回収システムの構築が課題となっています。

レアアースが無くなると困ること

電気自動車の生産への影響

もしレアアースの供給が途絶えた場合、最も深刻な影響を受けるのが電気自動車の生産です。EVのモーターに使われるネオジム磁石がなければ、高効率で小型のモーターを作ることができなくなります。

世界的に脱炭素化が進む中、2030年以降、多くの国でガソリン車の販売が段階的に禁止される予定です。レアアースの供給不足は、この移行を大きく遅らせる可能性があります。

再生可能エネルギーの普及への影響

風力発電のタービンにもネオジム磁石が使われています。特に洋上風力発電では、メンテナンスの頻度を減らすため、耐久性の高いレアアース磁石が不可欠です。レアアースの不足は、再生可能エネルギーの導入計画にも大きな影響を及ぼします。

電子機器産業への影響

スマートフォン、パソコン、テレビなどの電子機器産業も、レアアース不足の影響を免れません。ディスプレイの蛍光体、小型化された振動モーター、センサー類など、多くの部品にレアアースが使われているためです。

産業競争力の低下

日本の基幹産業である自動車、電機、電子部品などの産業は、高性能なレアアース磁石や材料に依存しています。安定的な供給が途絶えれば、製品の性能低下やコスト上昇を招き、国際競争力が大きく損なわれる可能性があります。

レアアース問題への対策と今後の展望

調達先の多様化

日本政府と企業は、中国への依存度を下げるため、調達先の多様化を積極的に進めています。オーストラリアのライナス社、フランスのCaremag社への投資、ベトナムでの鉱山開発プロジェクトなど、複数の選択肢を確保する動きが加速しています。

脱レアアース・レアアースフリー技術

レアアースを使わない、あるいは使用量を大幅に削減する技術開発も急ピッチで進んでいます。

EVモーターでは、永久磁石を使用しない巻線界磁モーターや誘導モーターの開発が進められています。また、鉄窒化物や高性能フェライトなど、レアアースを使用しない磁石の研究も活発です。

大同特殊鋼が開発したSmFeN(サマリウム・鉄・窒素)磁石は、ネオジム磁石よりも優れた耐熱性と耐酸化性を持ち、小型で高効率なモーターやセンサーへの応用が期待されています。

信越化学工業は、ジスプロシウムの使用量を半減する「粒界拡散法」を実用化し、コスト低減と供給リスク緩和を実現しています。

国家備蓄と戦略的対応

日本政府は、レアアースの国家備蓄を行い、供給途絶時のリスクに備えています。また、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じて、海外のレアアース企業への出資や融資を行い、日本向けの安定供給を確保する取り組みを強化しています。

国際協力の推進

G7を中心とした国際的な枠組みの中で、重要鉱物のサプライチェーン強化に向けた協力が進められています。技術開発での連携、情報共有、共同備蓄など、多国間での協調的な対応が重要性を増しています。

まとめ

レアアースは、現代社会を支える不可欠な資源でありながら、その供給が特定の国に大きく依存しているという構造的な問題を抱えています。

しかし、日本の南鳥島での資源開発プロジェクト、先進的なリサイクル技術、脱レアアース技術の開発など、この課題を克服するための取り組みが着実に進んでいます。2026年1月から始まった試験掘削の成否は、日本のエネルギー・資源戦略にとって極めて重要な転換点となるでしょう。

レアアースを巡る状況は、単なる資源問題ではなく、経済安全保障、環境問題、国際関係が複雑に絡み合った21世紀の重要課題です。技術革新と国際協力を通じて、持続可能で安定的なレアアース供給体制を構築していくことが、今後ますます重要になっていくと考えられます。

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