この夏こそ悪習慣を断ち切る。科学的に「やめられない」を終わらせる方法

目次

「今年の夏こそやめよう」と思っているあなたへ

夜遅くまでスマホをいじってしまう。仕事帰りにコンビニでお菓子を買ってしまう。「もう寝なきゃ」と思いながらもベッドの中で動画を見続けてしまう。

心の中で「これはやめたほうがいい」とわかっているのに、なぜか毎日同じことを繰り返してしまう。そんな悪習慣、誰にでも一つや二つはあるのではないでしょうか。

実は、悪習慣がやめられないのは「意志が弱いから」ではありません。人間の脳は、繰り返した行動を自動的に処理する仕組みを持っていて、その仕組みが悪習慣を維持する側に働いてしまっているだけなのです。つまり、悪習慣を断ち切るには「気合い」や「根性」ではなく、脳と心の仕組みを理解した上での正しいアプローチが必要になります。

そして、悪習慣を断ち切るタイミングとして実は「夏」がとても理にかなっていることが、海外の行動科学の研究からもわかっています。この記事では、悪習慣の正体から、なぜ夏がベストなタイミングなのか、そして心理学・脳科学に基づいた具体的なやめ方まで、じっくりと解説していきます。

長期休暇に入る学生の方も、夏季休暇を控えた社会人の方も、この記事を読み終えたときには「今年の夏こそ変われる」という手がかりをつかめるはずです。

第1章 あなたの「それ」も悪習慣かもしれない

まずは悪習慣にはどんな種類があるのか、具体的に見ていきましょう。「悪習慣」と聞くと、暴飲暴食やギャンブル、喫煙といった大きなものを思い浮かべる方が多いと思いますが、実際にはもっと身近で、気づきにくいものがたくさんあります。

わかりやすい悪習慣

  • 就寝直前までスマートフォンを見てしまう
  • 過度な飲酒や間食
  • タバコ
  • ギャンブルや過度な買い物
  • 先延ばし(やるべきことを後回しにする)

これらは多くの人が「悪習慣」だと自覚しているものです。しかし、次に紹介するものは「これも悪習慣だったの」と驚かれる方が多いかもしれません。

実は悪習慣になっている身近な行動

起床直後にスマホを手に取る

目が覚めてすぐにベッドの中でSNSやニュースをチェックする行動です。一日の始まりから他人の情報や通知に脳を占領されてしまい、自分のペースで一日をスタートできなくなります。

「リベンジ夜更かし」

海外の研究者の間で「revenge bedtime procrastination」と呼ばれる現象です。日中に自分の時間が持てなかった人が、その代償として夜遅くまで眠るのを遅らせ、動画視聴やスマホ操作などで「自分の時間」を確保しようとする行動を指します。翌日の疲労や生産性の低下につながるとわかっていても、やめられない人が非常に多い悪習慣です。

「ドゥームスクロール」

不安や心配になるニュースやSNSの投稿を、気分が沈むとわかっていながら延々とスクロールし続けてしまう行動です。海外メディアでも2020年代に入ってから頻繁に取り上げられるようになった、比較的新しいタイプの悪習慣といえます。

慢性的な「愚痴」や「他人への批判」

会話の中で無意識に不満や愚痴を口にしてしまう習慣です。一時的にはストレスの解消になったように感じますが、繰り返すことで思考のパターンそのものがネガティブに固定されてしまうことがあります。

マルチタスクの癖

複数の作業を同時にこなそうとする習慣です。効率的に見えますが、実際には一つひとつの作業の質と集中力を下げてしまうという研究結果が積み重なっています。

「ながら食べ」「ながら作業」

テレビやスマホを見ながら食事をする、作業をしながら別のことを考える、といった「ながら行動」も、満腹感を感じにくくしたり、作業の質を落としたりする悪習慣の一つです。

こうして並べてみると、悪習慣というのは決して特別な人だけの問題ではなく、多くの人が日常的に抱えている「ありふれたもの」だとわかります。

第2章 まずは「自覚すること」から始めよう

悪習慣を断ち切るための最初のステップは、実は「やめる」ことそのものではありません。「これは悪習慣だ」と自分自身で認識することです。

行動を変えるための研究では、多くの場合「無自覚な行動」ほど修正が難しいとされています。反対に、行動を意識化するだけで、その行動の頻度が下がるという現象も報告されています。これは心理学でセルフモニタリング効果と呼ばれるもので、自分の行動を記録したり観察したりするだけで、行動そのものに変化が生まれるという考え方です。

たとえば、スマホの使用時間を記録するアプリを入れただけで、なんとなく使用時間が減ったという経験がある方も多いのではないでしょうか。それはまさにこのセルフモニタリング効果によるものです。

自覚を持つための具体的な方法としては、次のようなものがおすすめです。

  • 一日の終わりに「今日やってしまった悪習慣」を一つメモする
  • スマホのスクリーンタイムなど、行動が数字で見える機能を活用する
  • 悪習慣が出た瞬間の「気分」や「状況」もあわせて書いておく

特に最後の「状況」を記録することが重要です。悪習慣は多くの場合、特定の場面や感情と結びついて発生します。「疲れているとき」「一人で家にいるとき」「締め切り前」など、自分なりのパターンが見えてくると、次の章で紹介する対策が格段に効果を発揮しやすくなります。

第3章 悪習慣をやめるには「きっかけ」が大事。なぜこの夏がおすすめなのか

「いつかやめよう」と思っているうちは、なかなか行動は変わりません。行動科学の世界では、人が新しい行動を始めたり古い行動をやめたりするタイミングには、大きな偏りがあることが知られています。

「フレッシュスタート効果」という考え方

ペンシルベニア大学ウォートン校のキャサリン・ミルクマン教授らの研究チームは、2014年に発表した論文の中で、人は新しい週の始まり、新しい月の始まり、新学期、誕生日といった「時間の節目」の直後に、目標に向かった行動を取りやすくなることを明らかにしました。この現象は「フレッシュスタート効果」と呼ばれています。

この研究によると、人々は週の始まりには通常より約33パーセント、新学期の始まりには約47パーセント、運動などの目標行動を取りやすくなることが確認されています。ミルクマン教授は、こうした時間の節目が「過去の失敗を過去の自分のものとして心理的に区切り、今の自分を新しい自分として感じさせる」効果を持つと説明しています。つまり、節目のタイミングを利用すると、過去に何度も悪習慣をやめられなかった経験があっても、「あれは古い自分の話」として心理的な距離を置きやすくなるのです。

一年の中で、夏は「学期の節目」「長期休暇の始まり」「新しい季節の始まり」という複数の節目が重なる、数少ない時期です。夏休みに入る、衣替えをする、旅行に出かける、こうした変化の多い時期そのものが、悪習慣を断ち切るための強力な後押しになってくれます。

さらに、夏は生活のリズムが変わりやすい季節でもあります。学校が長期休みに入ったり、仕事のペースが変わったりすることで、悪習慣が発生していた「いつもの環境」そのものが変化します。悪習慣は特定の環境や状況と強く結びついているため、環境が変わるタイミングは、悪習慣を断ち切る絶好のチャンスといえるのです。

「今日から」ではなく「あの日から」と決める

フレッシュスタート効果を最大限に活用するためのポイントは、なんとなく「今日から頑張ろう」と思うのではなく、「夏至の日から」「夏休みに入る日から」「お盆が明けたら」など、自分にとって意味のある特定の日を明確に決めることです。日付そのものに特別な意味を持たせることで、脳が「ここからは新しいフェーズだ」と認識しやすくなります。

第4章 心理学・脳科学から見る、悪習慣をやめる具体的な方法

ここからは、なぜ悪習慣がやめにくいのか、そしてそれをどう断ち切ればいいのかを、脳科学や心理学の研究成果をもとに詳しく見ていきましょう。日本の記事ではあまり紹介されていない、海外の研究も交えて解説します。

悪習慣は脳の「省エネ機能」の結果である

アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の神経科学者アン・グレイビール氏の研究チームは、ラットを使った迷路実験を通じて、習慣が脳の中でどのように形成されるかを明らかにしました。

行動を学習し始めたばかりのころ、脳は「前頭前皮質」という、意思決定や計画を担う部分を活発に使って一つひとつの行動を判断しています。ところが、その行動を繰り返すうちに、判断を担う場所が「基底核」という、より原始的な脳の領域に移っていくことがわかりました。基底核が行動をひとまとまりの「パッケージ」として記憶してしまうと、その行動はほとんど脳を使わずに自動的に実行されるようになります。これが「習慣」の正体です。

この習慣の仕組みは、次の3つの要素で成り立っていると考えられています。

  1. きっかけ(cue) 行動を始めるトリガーとなる状況や感情
  2. 行動(routine) きっかけによって引き起こされる、自動化された一連の動作
  3. 報酬(reward) その行動によって得られる満足感やドーパミンの分泌

悪習慣がなかなかやめられないのは、この「きっかけ、行動、報酬」のループが脳の中に深く刻み込まれてしまっているからです。しかも研究では、このループを完全に脳から消し去ることはできず、上書きすることしかできないともいわれています。つまり「意志の力でループそのものを消す」のではなく、「きっかけと報酬はそのままに、行動の部分だけを別のものに置き換える」というアプローチが、脳の仕組みから見ても最も現実的な戦略になるのです。

たとえば、「仕事の休憩中に(きっかけ)タバコを吸う(行動)ことで気分をリセットする(報酬)」という悪習慣がある場合、休憩自体をなくすのではなく、休憩中に軽くストレッチをする、深呼吸をするなど、同じ「気分のリセット」という報酬が得られる別の行動に置き換えることが効果的だということです。

「21日でやめられる」は誤解だった

「習慣を変えるには21日かかる」という話を聞いたことがある方は多いと思いますが、これは実は科学的な根拠のない、広く知られた誤解です。この「21日説」は、1960年代にアメリカの形成外科医マクスウェル・マルツ氏が、手術を受けた患者が新しい見た目に慣れるまでの期間を観察した経験に基づくもので、行動習慣そのものを対象にした研究ではありませんでした。

実際の習慣研究では、まったく違う結果が出ています。ロンドン大学(UCL)のフィリッパ・ラリー博士らの研究チームが2009年に発表した研究では、96人の参加者に新しい行動(食事の後に果物を一つ食べる、毎日15分走るなど)を12週間続けてもらい、その行動が「意識しなくても自然にできる」状態、つまり自動化されるまでの日数を調べました。

その結果、平均で66日かかることがわかりました。しかも、その範囲は最短で18日、最長で254日と非常に個人差が大きいことも明らかになっています。この研究が示しているのは、「習慣を変えるには思っているよりも時間がかかる」という現実です。多くの人が21日や1か月といった短い期間で結果が出ないことに落胆し、挑戦をやめてしまいますが、それは失敗ではなく、むしろ自然な過程だということを知っておくだけでも、続ける力が変わってきます。

夏という約2か月から3か月ほどの季節は、この66日という平均期間とちょうど近い長さです。夏の始まりに悪習慣を断ち切る決意をすれば、夏の終わりごろには新しい行動がある程度自動化されている可能性が高いということになります。

「もし〜なら、〜する」と決めておくだけで効果が大きく変わる

ニューヨーク大学の心理学者ペーター・ゴルヴィツァー氏が提唱した「実行意図(if-thenプランニング)」という手法も、悪習慣を断ち切るうえで非常に有効です。

これは、「もし状況Xが起きたら、行動Yをする」という形で、具体的な状況と行動をあらかじめセットにして決めておく方法です。ゴルヴィツァー氏らが行った複数の研究をまとめた分析では、こうした「もし〜なら」の計画を立てた人は、目標を達成する確率が、計画を立てなかった人に比べて中程度から大きな差で上回ることが確認されています。過去に行われた実証研究をまとめたある分析では、実行意図を用いた人の目標達成率が、用いなかった人のおよそ3倍に達したという結果も報告されています。

具体的には、次のような形で活用します。

  • 「もし夜9時にスマホを触りたくなったら、代わりに本を1ページ読む」
  • 「もし仕事のストレスでコンビニに寄りたくなったら、先に水を一杯飲む」
  • 「もし寝る前にベッドでスマホを見たくなったら、スマホを別の部屋に置いてから寝室に入る」

「なんとなく頑張る」のではなく、あらかじめ状況と行動をセットで決めておくことで、悪習慣のきっかけが訪れた瞬間に、頭で考える前に新しい行動が自動的に選ばれやすくなります。これは先ほど紹介した「基底核による自動化」の仕組みを逆手に取った、非常に理にかなった方法だといえます。

まとめると

  • 悪習慣は「きっかけ、行動、報酬」のループとして脳に刻まれている
  • ループを消すことはできないが、行動の部分だけを置き換えることはできる
  • 自動化されるまでには平均66日かかり、個人差も大きい
  • 「もし〜なら〜する」とあらかじめ決めておくことで、成功率が大きく上がる

第5章 実際に悪習慣を断ち切った人たちの体験談

ここでは、実際に悪習慣を断ち切ることに成功した人たちの体験を、複数のケースをもとに紹介します。

ケース1 30代・会社員の男性

深夜のスマホ習慣に悩んでいたこの男性は、毎晩ベッドに入ってから1時間以上SNSを見続けてしまい、寝不足が続いていました。そこで、夏休みの初日を「新しいスタートの日」と決め、寝室にスマホを持ち込まないというルールを作りました。代わりに、スマホを触りたくなったら音楽を聴きながらストレッチをするという「もし〜なら」の計画を立てたところ、最初の2週間は落ち着かなさを感じたものの、1か月ほど経った頃から自然とスマホなしで眠れるようになったと話しています。

ケース2 20代・大学生の女性

夜更かしをして日中にひどく疲れてしまう「リベンジ夜更かし」に悩んでいたこの女性は、まず1週間、自分がいつ、どんな気分の時に夜更かしをしてしまうのかを記録することから始めました。すると、日中に自分の時間が取れなかった日ほど夜更かしをしてしまう傾向があることに気づいたそうです。そこで、日中にあえて15分だけ「何もしない自分の時間」を作るようにしたところ、夜に無理に夜更かしをして自分の時間を確保する必要がなくなり、夜更かしの頻度が大きく減ったといいます。

ケース3 40代・自営業の女性

ストレスからくる間食が止められなかったこの女性は、間食のきっかけが「仕事の合間の息抜き」であることに気づき、間食そのものをやめるのではなく、息抜きの方法をお茶を飲むことに置き換えました。最初はお菓子への欲求が強く出た日もあったそうですが、3か月ほど続けるうちに、お茶を飲むことそのものが新しい「息抜きの習慣」として定着したと振り返っています。

これらの体験談に共通しているのは、いずれも「悪習慣そのものを力でやめよう」とするのではなく、悪習慣が満たしていた本当の目的(気分のリセット、自分の時間の確保、息抜き)に気づき、その目的を別の行動で満たすようにしたという点です。これはまさに、脳科学の研究が示している「行動を置き換える」というアプローチそのものだといえます。

第6章 まとめ。悪習慣は思い切ってやめることが大事

この記事では、悪習慣の種類、自覚することの重要性、夏というタイミングの意味、そして心理学・脳科学に基づいた具体的な方法までを紹介してきました。最後に、実際に行動に移すためのポイントを整理します。

1 まずは自分の悪習慣に名前をつける

「なんとなく良くない気がする」で終わらせず、「これは悪習慣だ」とはっきり言葉にすることが第一歩です。

2 悪習慣の「きっかけ」と「報酬」を書き出す

いつ、どんな気分の時にその悪習慣が出るのか、そしてその行動によってどんな満足感を得ているのかを紙に書き出してみましょう。

3 夏の中で「意味のある日」を決める

夏休みの初日、旅行から帰った日、お盆明けなど、自分にとって節目になる日を一つ選び、「この日から新しい自分になる」と決めます。

4 「もし〜なら、〜する」を最低一つ用意する

悪習慣のきっかけが訪れたときに、頭で考えなくても実行できる代わりの行動をあらかじめ決めておきます。

5 「66日」という期間を心の中に置いておく

3週間で結果が出なくても、それは失敗ではありません。平均66日、人によってはそれ以上かかることを知っておくだけで、途中で投げ出さずに続けやすくなります。

悪習慣は、生まれつきの性格や意志の弱さの問題ではなく、脳が繰り返しの中で作り上げてきた「省エネの仕組み」です。だからこそ、力だけで立ち向かうのではなく、仕組みを理解したうえで、正しいタイミングと正しい方法で向き合うことが何より大切です。

そして、その「正しいタイミング」として、夏という季節は科学的にも理にかなった絶好の機会です。今年の夏こそ、思い切って悪習慣を断ち切る一歩を踏み出してみませんか。


参考文献

  • Dai, H., Milkman, K. L., & Riis, J. (2014). The Fresh Start Effect: Temporal Landmarks Motivate Aspirational Behavior. Management Science, 60(10), 2563-2582.
  • Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998-1009.
  • Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist, 54(7), 493-503.
  • Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-analysis of Effects and Processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69-119.
  • MIT News (2003). Basal ganglia are brain’s Dr. Jekyll and Mr. Hyde. Ann Graybiel’s research on habit formation, McGovern Institute for Brain Research, MIT.

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

手帳が続かない・考えすぎて動けない、そんな時期を何度も経験してきました。
手帳歴20年以上、GTD・振り返り・小さな習慣を実践しながら、少しずつ自分なりの整理術を見つけてきた人間です。
「頑張りすぎない改善」をテーマに、手帳・習慣化・心理・オカルト・日常の気になることを丁寧に発信しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次