仕事が忙しい現代社会では「マルチタスク」という言葉をよく耳にします。複数の作業を同時にこなす能力は、効率性や生産性の象徴として捉えられることが多く、「私はマルチタスクが得意です」と履歴書に書く人もいるでしょう。
しかし、科学的な研究は私たちの常識を覆す結果を示しています。果たして人間の脳は本当にマルチタスクができるのでしょうか?最新の脳科学研究を基に、この疑問に迫ってみたいと思います。

アレもコレも…いろいろしなきゃいけないことがいっぱいだよ

マルチタスクができればいいんだけどねぇ…
マルチタスクの正体:実は「高速切り替え」だった
まず驚くべき事実からお話しします。フランス国立衛生医学研究所のシャロンとケクランによる研究では、「人間の脳が同時に推進できるタスクは2つが限界である」ことが科学誌『Science』で報告されています。
さらに衝撃的なのは、スタンフォード大学の神経科学者であるオフィールらの発見です。私たちが「2つのタスクを同時に行っている」とき、実際には、脳が猛スピードで複数のタスクを連続的に切り替えているだけなのです。
つまり、私たちが「マルチタスク」だと思っている行為は、実際には「タスクスイッチング」といって、脳が高速で対象タスクを切り替えて処理をしているだけなのです。本当の意味での同時処理ではありません。

脳科学が明かすマルチタスクの仕組み
では、脳内では何が起こっているのでしょうか?研究によると、シングルタスクとマルチタスクでは脳の働き方が大きく異なります。
シングルタスクでは、前頭葉にある左右の内側前頭皮質が共同で働き、マルチタスクでは、判断力や理性などを司る前頭前野によって複数のタスクが調整され、左右の内側前頭皮質が分割して働くことが確認されています。
この脳の分割作業こそが、マルチタスクによる弊害の原因となります。この高速スイッチングが脳へダメージを与えることになります。
マルチタスクの代償:パフォーマンス低下の科学的根拠
研究結果は、マルチタスクの効果について厳しい現実を突きつけています。ハーバード大学医学部によると、マルチタスクを実行すると、人間の脳のパフォーマンスが大幅に低下することがわかったという2022年の研究報告があります。
この結果は決して意外なものではありません。脳科学の見地に立つと、「人間は本質的にマルチタスクができない」と言えるほど、脳はマルチタスクが苦手なのです。
体験談:私のマルチタスク失敗談
私自身も、かつてはマルチタスクの信奉者でした。会議中にメールをチェックし、電話をしながら資料を作成し、音楽を聴きながら執筆作業をする。これらを効率的だと信じて疑いませんでした。
しかし、ある日重要なプレゼンテーションの準備をしていた時のことです。同時に他の案件のメールチェックをしながら作業していたところ、プレゼン資料に別案件の数字を誤って記載してしまいました。幸い本番前に気づきましたが、一歩間違えばクライアントの信頼を失うところでした。
この経験が転機となり、意識的にシングルタスクに切り替えるようになりました。すると驚くことに、作業時間は短縮され、ミスは激減し、何より集中力が格段に向上したのです。
「女性はマルチタスクが得意」は本当?
よく「女性はマルチタスクが得意」という話を聞きますが、これも科学的には根拠がありません。実際には男女の脳に性差はなく、女性が家事や育児を両立することから、そのような固定概念が広まったと言われています。
男女問わず、人間の脳の構造上「マルチタスク」は不可能であることが科学的に明らかになっています。
現代社会でのマルチタスクとの向き合い方
とはいえ、現代社会では完全にマルチタスクを避けることは困難です。現代社会では、マルチタスクを避けることは困難でしょう。
しかし、その弊害を理解した上で、可能な限りシングルタスクを心がけることが重要です。私は以下のような工夫をしています:
タスクの優先順位付け:複数の仕事があっても、重要度と緊急度を整理し、一つずつ完了させるようにしています。
集中時間の確保:メールチェックや電話対応の時間を決めて、執筆や企画などの創作活動中は完全に遮断しています。
通知機能の活用:スマートフォンの通知を最小限に抑え、集中を妨げる要素を排除しています。
まとめ:効率性の真の意味を見直そう
科学的な研究は明確に示しています。一度に1つのタスクのみを実行することが、最高のパフォーマンスを達成するための方法なのです。
マルチタスクは効率的に見えて実は非効率的であり、脳に負担をかける行為です。真の効率性とは、一つのことに集中し、高い品質で完了させることにあります。
「マルチタスクができる人=優秀」という固定観念を捨て、シングルタスクの力を信じてみませんか?きっと仕事の質と満足度が向上するはずです。私自身の体験がそれを物語っています。
現代社会では情報が溢れ、常に複数のことを同時に処理することを求められがちです。しかし、科学的事実を踏まえ、本当に大切なことに集中する時間を意識的に作ることこそが、真の生産性向上への道なのかもしれません。

まずは優先順位をつけて…一つのことに集中!

忙しいときほど、じっくり丁寧に対応することも大事だよ
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