段ボールはいつどのように生まれた?歴史から世界シェアまで完全解説

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私たちの生活に欠かせない段ボール。ネット通販の荷物から引越しの梱包材まで、あらゆる場面で活躍している身近な存在です。しかし、段ボールがいつ、どのようにして生まれたのかをご存じでしょうか。実は段ボールには160年以上の長い歴史があり、その誕生の経緯は意外にもファッションアイテムと深い関わりがあったのです。

今回は段ボールの誕生から現在に至るまでの歴史、そして現在の世界における生産状況や市場規模について詳しく解説していきます。

シヴィエさん
シヴィエさん

段ボールって昔からあるイメージだけど、いつ頃から作られるようになったのかな?

アマエビちゃん
アマエビちゃん

今回は段ボールの歴史について解説していくよ!

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段ボールの誕生 – 1856年イギリス、シルクハットから始まった物語

段ボールが生まれた時代背景

段ボールが誕生したのは1856年のイギリスです。当時のイギリスは産業革命の真っ只中にあり、技術革新が次々と生まれていた時代でした。紳士たちはシルクハットを愛用していましたが、一つ大きな問題がありました。

シルクハットの課題を解決するために誕生

シルクハットは中が蒸れやすいという課題がありました。長時間かぶっていると汗がたまり、非常に不快な思いをすることが多かったのです。

この問題を解決するため、ロンドンの帽子職人であるE.C.ヒアリー(Edward Charles Healey)とE.E.アレン(Edward Ellis Allen)が、シルクハットの内側に通気とクッションを兼ね備えた素材として、紙を波形(コルゲート)に加工する技術を発明し、特許を取得しました。

段ボールの原理 – 波状構造のメカニズム

紙に段をつけたもの(紙を波々にして湿気を吸いやすくする)が開発されたのが段ボールの起源です。この波状構造により、通気性が格段に向上し、さらにクッション性も兼ね備えることができたのです。

現在の段ボールも基本的な原理は同じで、平らな紙(ライナー)と波状の紙(メディアム)が接着剤で貼合されて1つの構造体となっている構造になっています。

アメリカでの発展 – 梱包材としての新たな用途

1871年 – 包装材としての段ボール誕生

段ボールがシルクハットの汗取りから包装材へと用途を広げたのは、海を越えたアメリカでのことでした。1871年、A.L.ジョーンズが紙に段をつけただけの”繰りっ放し”の特許を取得し、わらやおがくずに替わる緩衝材として、石油ランプ等のガラス類の輸送に使用されました。

この時代のアメリカは西部開拓時代で、物資の輸送が非常に重要でした。従来の緩衝材であるわらやおがくずよりも軽量で効果的な段ボールは、革新的な包装材として注目されました。

1874年 – 片面段ボールの開発

1874年には、O.ロングが段が伸びてしまうのを防ぐために、段の片側にライナを貼り合わせた”片面段ボール”を開発して特許を取得し、びんや壺などの包装に使われ始めました。

この改良により、段ボールの強度が格段に向上し、より重い物品の包装にも対応できるようになりました。

1800年代終わり頃 – 現在の段ボール箱の原型完成

1800年代の終わり頃には現在の段ボール箱の原型がほぼ完成しました。この時期には両面段ボールも開発され、包装材としての段ボールの基本的な形が確立されました。

日本の段ボール産業の発展

1909年 – 日本の段ボール産業の始まり

日本に段ボールが本格的に導入されたのは明治時代の後期でした。1909年に井上貞治郎が綿繰り機をヒントに機械を自ら考案し、ボール紙に段をつけた「繰りっ放し」の製造に成功しました。そして、それに「段ボール」と命名し、わが国の段ボール産業が産声をあげました。

「段ボール」という名前の由来

段ボールの名は、原紙にボール紙(ボールは英語のboardに由来)を用いていたことと、断面の波型が階段状に見えることによります。つまり、「段」と「ボール」を組み合わせた日本独自の名称だったのです。

シヴィエさん
シヴィエさん

英語だと「cardboard」なんだね!

戦後復興と高度経済成長期の発展

戦後復興期から高度経済成長期にかけて、日本の段ボール産業は急速に発展しました。製造業の拡大、流通革命、そして消費社会の到来により、段ボールの需要は飛躍的に増加しました。

世界の段ボール市場 – 現在の状況

世界市場規模の推移

世界の段ボール市場規模は、2024年に2,081億米ドルと評価され、2033年には2,544億米ドルに達すると予想され、2025年から2033年までの成長率(CAGR)は2.03%となっています。

この成長は、Eコマースの急速な拡大、食品配送サービスの普及、環境配慮型包装材への需要増加などが主な要因となっています。

世界の主要生産国

中国 – 圧倒的な世界最大の生産国

2023年の世界の紙・板紙生産量では、世界最大の生産国である中国(同2.8%増)が圧倒的なシェアを占めています。中国は製造業の中心地として、膨大な量の段ボールを生産・消費しています。

その他のアジア諸国の台頭

インド(同16.7%増)、インドネシア(同3.6%増)の3カ国が前年比プラスとなっており、アジア地域全体で段ボール生産が活発化しています。

先進国の状況

一方、米国(同7.6%減)、日本(同7.0%減)を含めた7カ国がマイナスとなっており、成熟市場では生産量の減少傾向が見られます。

日本の段ボール産業の現状

生産量の推移と現在の状況

毎年上がり勾配を続けていた国内ダンボール生産量ですが、2022年の146億4800万㎡をピークに現在まで2年連続下がっています。

これは人口減少による国内消費の減少、製造業の海外移転、デジタル化による紙需要の減少などが影響しています。

地域別生産分布

全国を8つの地域に分けた統計によると、関東地区(群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川)が断トツで、全体の45%を占めています。次に多いのが近畿で、中部、九州、東北、中国、四国、北海道の順となっています。

この分布は人口密度と消費量に比例した結果と言え、大都市圏での需要が高いことを示しています。

段ボールの構造と種類

基本構造

段ボールは平らな紙(ライナー)と波状の紙(メディアム)が接着剤で貼合されて1つの構造体となっているものの呼称です。

種類による分類

ライナーやメディアムの数によって、片面段ボール、両面段ボール、複両面段ボールと分類されます。用途に応じて強度や厚みが調整されています。

段ボール産業の技術革新

環境対応技術の発展

現在の段ボール産業では、環境への配慮が重要なテーマとなっています。リサイクル技術の向上、再生紙の利用拡大、生分解性素材の研究開発などが活発に行われています。

デジタル化への対応

印刷技術の向上により、段ボールパッケージのデザイン性が大幅に向上しています。また、QRコードやNFCタグの組み込みなど、デジタル技術との融合も進んでいます。

近年の市場動向

コロナ禍の影響

新型コロナウイルスの影響により、巣ごもり需要やインターネット通販の急拡大が起こり、個人向け配送用段ボールの需要が大幅に増加しました。一方で、産業向けの需要は減少するなど、用途別に明暗が分かれました。

Eコマース市場の成長

インターネット通販の急速な成長により、個人向け配送用段ボールの需要が構造的に増加しています。これは段ボール業界にとって新たな成長機会となっています。

サステナビリティへの対応

環境意識の高まりにより、リサイクル可能で環境負荷の少ない段ボール製品への需要が増加しています。日本の段ボール業界は、この分野で世界をリードする技術開発を行っています。

段ボールの未来展望

新素材との融合

従来の紙素材に加え、バイオプラスチックや新しい天然繊維を活用した次世代段ボールの開発が進んでいます。

スマート包装の実現

IoT技術の発達により、温度管理機能や配送状況追跡機能を持った「スマート段ボール」の実用化が期待されています。

循環経済への貢献

段ボールは元来リサイクル性に優れた素材ですが、さらに効率的な循環システムの構築により、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。

まとめ – 160年の歴史を持つ段ボールの今後

段ボールは1856年のイギリスで、シルクハットの汗取りという意外な用途から誕生しました。その後アメリカで包装材として発展し、日本では1909年から本格的な産業が始まりました。

現在、世界の段ボール市場は中国を中心としたアジア地域が生産量をリードしており、市場規模は2024年に2,081億米ドルに達しています。日本は生産量こそピークを過ぎていますが、技術力と品質の高さで世界的な地位を維持しています。

Eコマースの拡大や環境意識の高まりなど、段ボール業界を取り巻く環境は大きく変化しています。160年以上にわたって人々の生活を支えてきた段ボールが、今後どのような進化を遂げ、新たな価値を創造していくのか、その動向に注目が集まっています。

段ボールの歴史を振り返ることで、身近な素材がいかに長い年月をかけて発展してきたかを理解できます。これからも私たちの生活に欠かせない段ボールの更なる進化に期待しましょう。


この記事では段ボールの誕生から現在に至るまでの歴史と世界の生産状況について詳しく解説しました。シルクハットから始まった段ボールの意外な歴史を知ることで、この身近な素材への理解が深まったのではないでしょうか。

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