「海苔を食べても、消化されずにそのまま出てくる」とか「海苔を消化できるのは、日本人だけ」なんて話を耳にしたことはありませんか?実はこれ、科学的に見ると半分本当で、半分は誤解なんです。今回は、この興味深い話の真実を、最新の科学的なデータに基づいてわかりやすく解説します。

海苔を消化できるのは日本人だけってよく聞くけど本当かな…?

それは酵素が大きく影響しているかも
海苔の消化を可能にする「特別な酵素」
海苔の主成分は、食物繊維の一種であるポルフィランです。このポルフィランは、ヒトの通常の消化酵素では分解するのが非常に難しいため、食べた海苔は消化されにくいとされています。
しかし、2010年に日本の研究チームが驚くべき発見をしました。彼らは、日本人の腸内に生息する特定の腸内細菌が、海苔の細胞壁を分解する特別な酵素を作り出していることを突き止めたのです。この酵素は、正確にはポルフィラナーゼと呼ばれるもので、海苔のポルフィランを効率よく分解し、人間が栄養として吸収できるようにします。
腸内細菌が酵素を作るメカニズム
では、なぜ日本人の腸内細菌だけが、このポルフィラナーゼを作れるようになったのでしょうか?
鍵となるのは、遺伝子の水平伝播という現象です。
海苔は、もともと海の中に生息する微生物(海藻の表面に付着する海洋性の細菌)が持っていた特定の遺伝子を、腸内細菌に与えることで、ポルフィラナーゼを生成する能力を獲得したと考えられています。
これは、あたかも「海苔を消化する遺伝子」というレシピが、海洋の細菌から日本人の腸内細菌へと受け継がれたようなものです。
なぜ「日本人だけ」と言われるのか?
この「ポルフィラナーゼを作る腸内細菌」は、世界中の人々の腸内細菌を調べた結果、高い確率で日本人から発見されました。これは、日本人が古くから日常的に海苔を食べてきた歴史と深く関係しています。
海苔を頻繁に食べることで、海藻に付着していた海洋性の細菌が腸内に入り込み、その遺伝子が日本人の腸内細菌に取り込まれやすくなった、というのが定説です。つまり、食文化が腸内細菌の進化に影響を与えた、非常に興味深い事例と言えます。
生海苔と焼き海苔で消化のしやすさは違う?
海苔は、大きく分けて「生海苔」と「焼き海苔」があります。この二つに消化のしやすさの違いはあるのでしょうか。
結論から言うと、消化のメカニズムに大きな違いはありません。どちらも主成分はポルフィランであり、これを分解するにはポルフィラナーゼが必要です。
ただし、物理的な観点では若干の違いがあります。焼き海苔は、乾燥させて熱を加えることで細胞が破壊され、生海苔に比べ繊維質が細かく砕かれています。そのため、物理的には消化器官を通りやすくなっていると言え、外国人でも生海苔に比べれば多少は消化することができるものと思われます。
また、生海苔はより多くの細菌を保持している可能性があるため、遺伝子の水平伝播の観点では生海苔の方が有利であるとも考えられますが、これもまだ研究段階の話です。
結論:海苔は誰でも消化できる?
この研究が示すのは、「海苔を消化できるのは日本人だけ」という考えが、正確ではないということです。日本人の多くがこの能力を持つ一方で、世界中に広まった日本食の影響で、海苔を日常的に食べるようになった他の国の人々にも、同様の能力を持つ細菌が広まっていく可能性は十分に考えられます。
また、そもそも海苔は、消化吸収されにくい食物繊維が豊富に含まれているからこそ、便通を良くする効果があるとも言えます。海苔を食べて消化されずにそのまま出てきても、それは必ずしも悪いことではない、ということですね。
今回の話は、私たちの食文化が、見えないところで体の機能にまで影響を与えていることを教えてくれます。もしかしたら、あなたの腸内にも、海苔を消化するスーパー細菌がいるかもしれませんね。

長い年月をかければ何でも消化できるようになるのかな!?

人間でも木とか食べられるようになればすごいよねぇ
コメント